もふもふ好きのお姫様

王よりも、王妃よりも

　私はじっとフリソスの黄金の瞳を見つめました。
　何を見ているのかまったく分からない、遠くを見つめる瞳をしているフリソス。彼女は誰に思いを馳せているのでしょうか。

『初めは、父が外に出ると言っておったのじゃ。けれど、父は身体が大層弱くてな。結局、母が行くこととなった。あの時ばかりは、両親が初めて喧嘩をしておったから、よく覚えておる。聞いていた時は何を話しているのか分からなくとも、今となれば、完璧に意味を理解してしまった。妾たちを守るために、両親は必死だったよ。』

　フリソスとアスィミの両親は、王座よりも、玉座よりも、王の冠よりも、王の杖よりも、地位よりも、財よりも、名誉よりも、富よりも、２人という大事な娘のことを優先させたのでしょう。

『いい両親ね。私の両親は、国を優先させる気がするわ。』

『いいや、そんなことはないはずじゃ。其方は、見たところたくさんの人に愛されておるようじゃからな。』

『それとこれとは話が別。我が国はそこまで強くないから、国を優先せざるを得ないのよ。魔王という絶対的な王者でなければ、そうするしかないの。神のご加護があろうとも、人間の国の王は、所詮ちっぽけな人間だから。』

　私は一瞬だけ苦笑した後、パチンと手を叩きました。

『さあ、そろそろ戻りましょう。みんなが心配するわ。』

『………そうじゃな。』

　この日のこの会話以来、私は月に1回フリソスの元にアスィミを連れてくる、もしくはフリソスをアスィミの元に連れていくこととなりました。

　本当に、飛んだ貧乏くじとしか言いようがありません。

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