もふもふ好きのお姫様

桐生桜月姫

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発情期

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「発情期っていうのはね、動物で言う繁殖期のことなんだよ。つまり、………分かった?」

「………一応は分かりましたわ。つまり、婚前交渉はやばいからっていう理由で、ケイは逃げたのですわね?」

「ざっくり言えばね。」

 私はちょっとだけ拍子抜けしてしまいましたが、じわじわと身に危機感を覚え始めました。
 私は王女です。婚前交渉など不名誉なことが起きて仕舞えば、国の信頼や見栄えに関わることになってしまいます。ケイはおそらく、誰よりも王女であろうとする私の姿を尊重しようとしてくれたのでしょう。
 だからこそ、私は自分が苦しくなってきてしまいます。私はケイに、何か特別なことをしてあげられていたでしょうか、何か喜ばしいことをしてあげられたでしょうか、何かいいことをしてあげられたでしょうか。彼に、ステキだと、守りたいと思わせるようなことをした記憶が、私には全くありません。
 ある記憶といえば、私がケイを拾って、彼の通訳係をになって、そして、ずっとずっと愛猫として撫でまくっていた記憶ぐらいです。撫でて、撫でて、撫でて撫でて撫でて撫でて撫でて撫でて!撫でまくっていた記憶しか、本当にないのです。一緒に出かけたり、お勉強したりもしましたが、本当に、私はケイを撫でてばかりだったのです。

「………そういえばさー、シャル。」

「?」

 今思い出したことを漠然と話すかのように目の上に手を置いたアインスお兄様は、ふわっと私の方に視線を寄越しながら、話しかけてきます。

「ケイはさぁ、シャルに撫でてもらうのとか、愛猫って言われるのが、嬉しくて仕方がなかったらしいよ。」

「!?」

 ぶわっと真っ赤に染まったであろうほっぺたを手で覆った私は、魔人族国家バシレウス王国に着くまで、ずっと顔を隠し続けていました。

********************

読んでいただきありがとうございます😊😊😊

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