もふもふ好きのお姫様

安心

「あ、あの、シャルロッテ殿下！」

私は、普段よりも大きな声で、必死になって話しかけようとしているメイソン様の声に、努めて穏やかな表情になるように気をつけながらゆっくりと振り返りました。
ずっと自分を責めながら歩いていたからか、私はメイソン様を置いてけぼりにして先々進んでしまっていることに振り返るまで、気がついていませんでした。10メートル近く離れてしまっていることに驚愕しながら、私はそんな感情はおくびも出さずに、メイソン様に話しかけました。

「どうかなさいましたか？」

穏やかな、宥めるような口調で話し掛けるとメイソン様は口をパクパクしながら何を話すか悩んでいるような雰囲気を醸し出したあと、ゆっくりと言葉を選ぶように口を開きました。

「シャルロッテ殿下、も、申し訳ございません。私は、私はアルノルト殿下のように殺気に強い訳ではありません。ですから、どうしても貴方様の殺気に怯えてしまうのです。シャルロッテ殿下が必死に気持ちを、殺気を抑え込もうとしていることは重々承知しておりますし、私に対してお怒りになっていないことはわかっているのですが……。あ゛～、その、殿下、私口下手で、うまく説明できませんが、つまり、その、私は殿下を嫌だとか、関わりたくないだとかは、一切思っておりませんから、安心なさってください！！」

私は先程よりもびっくりして、目を見開いて固まってしまいましたが、彼の言葉に安心してうっすらと涙の膜が張ってしまいました。

「ありがとう。」

口下手は彼だけではないようです。

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