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10 愛のお返事

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 うずくまって決して顔を見せようとしないミルフィーユを上から抱きしめたルイボスは、ずっと見知らぬミルフィーユに優しい声で語りかけ、はちみつ色の髪の少女ミルフィーユを抱きしめ続けたのだ。

「ひっく、ひっく、ごめ、ごめん、なさい。お、およう、ふく」

 30分間泣き続けたミルフィーユが次に顔を上げたミルフィーユが見たのは、涙と鼻水でぐずぐずになった少年のお洋服だった。

「いいよ、大丈夫。ねえ、その代わりに君のお顔を見せてくれるかな?」
「………みーちゃん見せちゃだめなの。ーーーだから、特別だよ?秘密にできる?」
「あぁ、できるさ。僕は王子さまだからね」

 そう言ってもらって安心して顔を上げたミルフィーユの濡れた瞳を見たルイボスは、息を飲んだ。彼が見たのは、陽光に照らされてきらきらと輝く、自分と同じはずなのにもっと綺麗なものに見える、王家の象徴、アメジストの瞳だった。

「綺麗………、」

 その言葉を受けてびっくりしたミルフィーユもまた、意志の強い自分と同じアメジストの瞳に感動していた。そして、くしゃっとした年齢相応の笑みに、ミルフィーユはそれから王妃と侯爵夫人が2人のことを探しに来るまで、ずっと彼の笑みに見惚れていた。

▫︎◇▫︎

「みーちゃん、小さい頃からずっとずっと好きです!僕と結婚して妃になってください!!」
「はい!」

 懐かしい想いに浸っていたミルフィーユは、ルイボスが何を言ったかも聞かずに、彼の言った通り大きな声でお返事をしてしまった。

*******************

読んでいただきありがとうございます😊😊😊

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