66 / 92
番外編
女狐はできるメイドさま 9
しおりを挟む
「遅くなって申し訳ございません。奥様。」
「気にしなくていいわ。もう少しでお見合いの相手が来るから、服を………。整えなくても良さそうね。少しそこに座っていなさい。」
カロリーナが深々と頭を下げると、メアリーは朗らかに微笑んだ。
早足で公爵夫人の部屋の隣にあるサロンに到着したにも関わらず、汗1つかいていないカロリーナは言われるがまま美しい洗練された所作で席についた。
だが、心の中は不安で仕方がなかった。恋などという感情をカロリーナは知らない。男はお金を手に入れるための道具。貢がせるための道具。可愛く笑って、搾り取れるだけ搾り取る、貢がせるための道具。
そう、カロリーナにとって男は道具なのだ。
コンコン!
だから、カロリーナは恋をしない。
だって男は道具だから。
笑え、ただただ笑っておけ。
………………そうすれば、救われる。
助けて、くれる。
「入って来てください。ギル、そして、………………ーーーーラウル・トリバー。」
「!!」
「ふふっ、どう?びっくりした?」
ピクリと方を揺らして『ラウル』という名前に反応したカロリーナに、メアリーは艶やかに、かつ、悪戯っぽく微笑んだ。悪戯成功!という看板を掲げそうなほどだ。
そう、メアリーはこの男のことを知っていたのだ。
カロリーナの………ーーー淡い初恋の男を。
焦茶の髪を綺麗に撫で付け、侍従服を着こなした男は恭しく頭を下げた。血のように赤い瞳がすぅっと細められ、次の瞬間見開かれた。
「ーーカロン?」
「らう、る………………。」
カロリーナは微笑みを浮かべることすら忘れて、男の顔を静かに見つめた。
*******************
読んでいただきありがとうございます😊😊😊
「気にしなくていいわ。もう少しでお見合いの相手が来るから、服を………。整えなくても良さそうね。少しそこに座っていなさい。」
カロリーナが深々と頭を下げると、メアリーは朗らかに微笑んだ。
早足で公爵夫人の部屋の隣にあるサロンに到着したにも関わらず、汗1つかいていないカロリーナは言われるがまま美しい洗練された所作で席についた。
だが、心の中は不安で仕方がなかった。恋などという感情をカロリーナは知らない。男はお金を手に入れるための道具。貢がせるための道具。可愛く笑って、搾り取れるだけ搾り取る、貢がせるための道具。
そう、カロリーナにとって男は道具なのだ。
コンコン!
だから、カロリーナは恋をしない。
だって男は道具だから。
笑え、ただただ笑っておけ。
………………そうすれば、救われる。
助けて、くれる。
「入って来てください。ギル、そして、………………ーーーーラウル・トリバー。」
「!!」
「ふふっ、どう?びっくりした?」
ピクリと方を揺らして『ラウル』という名前に反応したカロリーナに、メアリーは艶やかに、かつ、悪戯っぽく微笑んだ。悪戯成功!という看板を掲げそうなほどだ。
そう、メアリーはこの男のことを知っていたのだ。
カロリーナの………ーーー淡い初恋の男を。
焦茶の髪を綺麗に撫で付け、侍従服を着こなした男は恭しく頭を下げた。血のように赤い瞳がすぅっと細められ、次の瞬間見開かれた。
「ーーカロン?」
「らう、る………………。」
カロリーナは微笑みを浮かべることすら忘れて、男の顔を静かに見つめた。
*******************
読んでいただきありがとうございます😊😊😊
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
788
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる