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番外編

女狐はできるメイドさま 1

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 ドサリ………。

 とある可愛らしい容姿を持ったメイド服姿の少女が、血を吐いて倒れた男を冷たく見下ろした。
 空色のほんのりと闇を孕んだ瞳には、侮蔑の色が浮かんでいる。

「うちの奥様を傷つけようとするなんて、なんて馬鹿なのかしら。あなた死にたいの?あ、もう死んでたわね!!」

 きゃははっ!と楽しそうに笑いながら、メイド服の少女ことカロリーナは、ご機嫌に身体を揺らした。メアリーに拾われた彼女は、優秀なメイドとして自由気ままに行動していた。なんなら、ギルバートにメアリーに害さえ与えなければなんでもしていいというお墨付きまでもらっている。それどころか、メアリーの敵を全部排除しろと命じられている。

「メイドってやっぱり私の転職ねっ!!」

 ごろりと転がっている不届き者の男をハイヒールで勢いよく蹴飛ばすと、カロリーナは男に飲ませた毒入りのティーカップの片付けを始めた。この男は昼間にメアリーの手首を掴もうとしたのだ。隣国の人間ででメアリーのことを知らないとはいえ、即刻女をお茶に誘おうと手を伸ばす男は、この世にいらないのだ。

「ふんふふ~ん♪」
「ご機嫌なのはいいが、アリーには気づかれるなよ」
「ちっ、………言われなくても分かってるわよ。というか、五月蝿い男は嫌われるわよ?」
「!?」

 見物にやってきた見た目麗しい男に、メアリーはイライラしながら苛立ちを隠さずに言った。剣を持ってきているところから、死んでなおズタズタにする気らしい。

「あ、アリーはそんなこと………ないよ。」
「ふふっ、女はいつ心を入れ替えるか分からないのよ?」

 妻にべったりな主人の夫たるギルバートに、カロリーナはわざと意地悪なことを言い続ける。
 せいぜい狼狽して、日々メアリーが受けている恥ずかしさの倍くらい苦しめばいいのだ。
 カロリーナは静かにほくそ笑んだ。

*******************

読んでいただきありがとうございます😊😊😊

カロリーナのその後は長めの構成です。
毎日16時に更新します。

リコ様のリクエストです。

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