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139 置いてけぼりな心菜

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 国語、数学、理科、社会、英語に美術を終えた心菜は、ぐっと大きく背伸びをした。凝り固まった背中からぽきぽきという音が鳴って、少しだけ背筋がスッキリする。

(たった数日。されど数日ね。もうどの教科も、ついていくので精一杯。気がつけばえげつないほどに進んでる)

 毎週3日間もある面倒くさい塾に、家庭での必要最低限度の勉強でさえも最近は根を上げてしまう心菜は、もう勉強なんてしたくないという心地で、ショートホームルームが始まるのを待つ。これさえ終われば、あとは部活にない日故に、自由に帰ることができる。
 優奈は今日デートなのか、仕切りに前髪を確認していて、心菜は大きくため息をついた。

(今日も置いてけぼりですかーだ)

 不貞腐れても仕方がないと分かっていながらも、不貞腐れずにはいられなくて、心菜はぷくうぅーっと頬を膨らませる。不服だという感情表現に、後ろに目がついていない優奈は当然気が付かなくて、結局気がついてくれたのは隣の彼だけだった。

「ぷっ、あははは!!お前親友を同じ小学のやつにとられたからって、そんな不服そうな表情するなよ」
「ふんっ、不服そうになんてしてないわ」

 どうせお見通しなのをいいことに、心菜はぷいっと横を向いてみる。彼の行動はどこか変化的なために、色々と予想しづらくて、時々楽しくなって、今のような悪戯を仕掛ける(大体の場合は心菜の敗北になる)。

「なあ、これから空いてる?」
「? ………空いているけれど、なに?」
「ん?秘密」
(ほら、やっぱり不思議。私には、彼の目的がわからないもの)

 ここまで悟らせない人間は珍しくて、ちょっとだけ楽しくなった心菜は、彼をまっすぐと見つめてみる。

「ねえ、教えて?何して欲しいの?」
「………中庭。中庭に来い。お前の欲しいと願っているものをくれてやる」
「私の、欲しいもの………?」

 心菜は首を傾げた後に小さく吐息をこぼした。

「いいよ。付き合ってあげる」

 放課後の予定がないのをいいことに、心菜はこくんと1つ頷いた。幸い今日は珍しく小説も漫画も更新がないし、塾もない。暇を持て余しているところだった。

「ーーーだけど、私をちゃーんと満足させてよね」

 心菜は悪戯っぽく妖艶に微笑んで、ショートホームルームが終わってすぐにカバンを持って、彼よりも先に中庭へと向かった。彼が何をしたいのかはわからない。けれど、心菜はワクワクと胸が高鳴るのを感じていた。

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読んでいただきありがとうございます😊😊😊

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