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138 心菜は復帰する

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 心菜が学校に復帰できたのは文化祭初日から1週間後で、残念ながら文化祭が全て終了した後だった。学校に戻って1番に荒れた机の中を片付けた心菜は、文化祭の余韻故かわちゃわちゃしている教室の中を1人ぽつんと取り残された心地で見つめる。こういう時、限られた人間以外と一定の距離を保っている人間というのは、あまり気を使ってもらえない。気を遣ってもらうことこそ気を使うからちょうどいいのだが、やっぱり行事後にそうだと少しだけ寂しい。まあ、それもこれも自業自得だとため息をついて、心菜はやっとのことでお片付けを終えた机に着席した。

「それにしても、今年も吹奏楽部の演奏すごかったよね!!」
「うんうん!流行りの曲ばっかで、めっちゃ楽しかった!!」
「………………、」

 ついていけない話。楽し気な声。心菜はぎゅっと泣き出したくなるのを我慢してぷいっと窓の外を見つめた。窓際の席の特権を満喫しながら、心菜は心を押し殺す。

「ーーーおはよう、久遠」
「おはよう、立花。どうかしたの?変な顔してるよ?」

 ちょっとむすっとしているような、それでいて心配するかのようなごちゃ混ぜの表情で立花は心菜のことを見つめていた。綺麗な顔が台無しだと思いながら、心菜はこつんと机に突っ伏すようにして立花を上目遣いに見つめた。

「………なんでもない」
「そっか。じゃあ、ノート貸して。今までの欠席分の授業ノート写しときたいから」
「ん」

 渡されたノートを繁々と見つめながら、心菜はじっと彼の文字を見つめた。

「立花って案外几帳面な字を書くよね。なんか模範的じゃないけど、しっかりとした楷書体」
「そうか?俺はお前の方が几帳面な字を書く気がするが………」
「私はそう書かないと気が済まないだけ。だって字が汚かったら、正直に言って読めないじゃん」
「それはそうだな」

 ノートは大事なお勉強道具だ。見直しの必要がある物を、ぐしゃぐしゃに扱うなんてことができない心菜は、全ての教科のノートを几帳面にとっていた。

「はぁー、」

 カリカリとシャープペンシルを走らせて彼のノートを写していると、不意に心菜は大きなため息をついてしまった。

(………吹奏楽部の演奏、聴きたかったな)

 文化祭で唯一やり残してしまったことに心囚われながら、心菜は彼からの視線にも気が付かずにノート写しを再開するのだった。

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読んでいただきありがとうございます😊😊😊

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