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102 小説への文句

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 まさかのびっくり、ヤンデレ死亡エンドだったのだから、心菜の読書時間中の奇行は当然の反応だろう。
 心菜は最後まで読んだ瞬間に、ガクッと勢いよく額を机にぶつけかけた。ぶつけたら痛いと思って、ぶつける寸でで落ちていく頭を根性で止めたというのが正解なのだが。

「ご乱心か?久遠」

 こそっと話しかけてきた立花を横目で睨んだ心菜は、地を這うように低い声を出す。
 彼の手にもライトノベルが握られていた。朝読書、いつも思っているのだが必要な時間なのだろうか。

「………この小説、クズだ」
「は?」

 呆けた声を上げた立花に、心菜は音を立てないように最新の注意を払いながらどんどん机を殴る。それくらいしないと、正直に言って朝からやってられない。クズな小説に当たった時には、ストレス発散のためにものにあたるに限る。

「………ハッピーエンドかと思いきや、ものすっごいバッドエンドだったっていう、最低最悪な話」
「うわー、それ最悪だな」
「でしょう?物語はハッピーエンドだからこそいいのに………!!」
「現実逃避にはな」

 呆れ顔でもうんうんと頷いてくれる立花に気分を良くした心菜は、ご機嫌な様子で頷いた後に首を傾げる。

「そうそう。現実逃避にはちょうどいいの。というか、現実逃避以外に、本って読むものなの?」
「………謎だな」
「だよね~」

 2人はうんうんと頷き合うと、にこっと笑った。

「久遠ってやっぱり、根っからの本好きなんだな。本のことについて語る時、いつも目が爛々と輝いてる」
「そう?………自覚はないんだけど………………」

 うーんと顎に手を当てた心菜は、自分の今までを振り返ってみる。けれど、やっぱり自分が本を読んでいる時に目を輝かせているという記憶は存在していなかった。立花の記憶違いだと思いたい心菜は、この話題には今後一切触れないことを決意する。なんだかんだ言って、この手の話題というのは墓穴になるものが多い。よって、掘らないに限るのだ。掘ったら最後、ろくなことは起こらない。

「………あと、考え込む時に人差し指を顎に当てて右斜め横を向く」

 立花のもう1つの言葉は、思考の渦に漂っている心菜には届かなかったが、届いたとしてもこれまたよく分からないという表情をしていただろう。心菜は意識的に考える際のポーズなど取っていないのだから。

********************

読んでいただきありがとうございます😊😊😊

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