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98 優奈の決定

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 幼い仕草でなおも優奈に抱きつき続ける心菜は、困ったように笑っている優奈に、涙に濡れた目を向ける。

「それだけ?」

 にこっと笑った優奈の問いかけは、いつも的確だ。
 心菜のごちゃごちゃになってしまっている心の糸くずを解きほぐして、解決へと導いてくれる。頼りっぱなしは良くないと分かっていても、心菜はいつも頼ってしまう。泣きついてしまう。優奈にだけは、甘えてしまう。

「………頭ぽんぽんされたりね、手を握られたら、ふにゃっ!!ってなっちゃうの。左胸がね、ずきずきするの」
「うんうん、それで?」
「………分かんない。それ以上は、分かんないの。でもね、びっくりしちゃうの。だからね、えっとね………、」

 要領の得ない会話。
 けれど、優奈は優しく聞き手に回ってくれる。

(ゆーなちゃんはとっても優しい。だから、ちゃんとを話さなくちゃ。ちゃんと、………ちゃんと、)

 焦れば焦るほど、正しいと思える答えが出なくなっていく。心菜は困ったように眉を下げて、優奈に助けを求める視線を向けてしまう。

▫︎◇▫︎

 優奈の幼馴染心菜は、存外恋というものに鈍くて、異性への好きという感情を封印してしまっていた。可愛い彼女だからこそ起こった、色々な問題は、実質のところ彼女の心に深い闇を灯してしまっていたらしい。
 だからこそ、優奈は自分の言葉を心菜に紡ぐ。彼女には、自分の言葉が最適だと知っているから。

「“好き”って言うのはね、理解しないと分からないこともあるんだよ。まずは、真っ直ぐに相手のことを見てみよっか、ここな」

 優奈がよしよしと頭を撫でてるのに合わせて安心し切ったかのようにへにゃっと笑った心菜は、抱きつくのをやめて優奈の万年暖かい手を取る。本当に、心菜は猫のように気まぐれだ。

「うわっ!!ここなの手冷たい!!」
「へへへっ、ゆーなちゃんの手あったかい」

 子供のように幼い表情の心菜。
 そんな心菜を見た優奈は、そっとため息をついてしまう。

(可愛いここなのためにも、ここは一肌脱ぐしかなさそうだ)

 最近ひっそりと連絡を取り合っているへの告白を考えながら、優奈は心の中で呟く。
 ここに、優奈による心菜のための、恋愛大作戦が準備決行されることが決定された。

*******************

読んでいただきありがとうございます😊😊😊

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