小さな別れは、淡く儚い恋を呼ぶ

桐生桜月姫

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96 優奈は良い子

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 過ごしやすいぬるま湯のようなほっとする距離感、心菜はそんなどっちつかずの距離感で彼に向けて宣言する。

「………私はあなたの思いなんて一切関係ない。そしてしらない。だから、私は大事な幼馴染の恋を応援するから、覚悟しといて」
「ーーーお好きにどうぞ。俺は最後まで逃げ切るから」
「………………」

 挑発的に笑った立花に、心菜は妖艶な笑みを返した。大人びた表情は、周囲の人間をドギマギさせた。だが、そんなことを露ほども気にしない心菜のそのままの表情をして、毒を吐く。

「………はあー、やっぱりあなた、性格最悪ね。でも、そんなところも嫌いじゃない。それじゃ」

 優奈の元へと足を進めた心菜は、穏やかに笑って手を差し出した。

「帰ろう、ゆーなちゃん。私、今日はもう疲れちゃった」
「そうだね。帰ろっか。私も聞きたいこといっぱいあるし」
(………嫌な予感しかしない)

 肩をすくめあった2人は、周囲の人間にも目もくれず、鞄を手に持って帰宅準備に取り掛かる。

「私たちは疲れたから帰るねー。それじゃあまた休み明けにー!!」
「さようなら。みなさんしっかりと休息してくださいね。お互いいい連休を」

 元気にぶんぶん手を振って教室を出る優奈と、透き通った小さな声で話して頭を下げてから教室を出る優奈の対称性に、教室内のクラスメイトは苦笑する。

「じゃあなー!」
「そっちこそしっかりと休めよー!!」
「またなー!!」

 あちこちから聞こえる挨拶を背に、心菜と優奈は下駄箱へと向かう。フラフラする足取りに気づいてゆっくりと歩いてくれる優奈の好意に甘えながら、心菜は1歩1歩転ばないように慎重に歩く。

「………立花、碌でなしだよ」

 心菜が唐突に、下級生が下校したことによって静まり返っている廊下で呟くと、優奈が息を呑んだ。心菜は愚痴を言うことはあれども、個人を貶したりすると言うことを今までにしなかったからである。

「知ってる。私の気持ち知っててあんな行動してるんだから、それ以外の評価のしようはないよ」
「そっか………。でも、諦めないんだよね?」
「うん、そのつもり」
「そっか………」

 ぐっと泣きそうな顔で笑ってしまった心菜に、優奈は苦笑する。

「どうして分かってくれないのかな。ゆーなちゃんは類を見ないくらいにお人好しで、とってもとっても良い子なのに」

*******************

読んでいただきありがとうございます😊😊😊

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