小さな別れは、淡く儚い恋を呼ぶ

桐生桜月姫

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88 涙を拭うは………

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「………よけーなおせわよ、ばか立花」
「馬鹿とはなんだ、馬鹿とは。………まあでもそうか、余計なお世話か………。だが、お前は気心の知れていない他の奴に、自分の泣くところを見られたくないんだろ?なら、大人しく俺の胸に隠れときな」

 心菜の前に座り直した彼は、体操ズボンのポケットに入れていたタオルハンカチで心菜の顔をぐしゃぐしゃと拭く。心菜はぐしゃぐしゃに拭かれている顔をぐっと顰めて立花を軽く睨む。

「………どへた」
「拭いてもらっといてその言い草とは、お前は本当に酷いな」

 心菜はベーっと舌を出して、その後、真っ赤に腫れてしまった少しだけ潤んだ瞳を立花に向けて、目をやさしく細めた。
 そして、くるくると心菜のポニーテイルの尻尾の部分を弄んでいる立花の手をペシっと叩き落とした心菜は、彼のタオルハンカチで思いっきり涙を拭いてからそのままタオルハンカチを取り上げ、そのまま笑顔で立ち上がった。

「ほら、行こう、立花。みんなが君のことをお待ちかねだよ」
「………はあー、本当にお前は唯我独尊で我が儘な奴だ」
「ふふふっ、」

 涙に濡れた瞳を輝かせた心菜は、少しだけ苦しそうでいて、それでも必死に浮かべた満面の笑みで立花のことを引っ張り、クラスメイトの元へと足をすすめた。

▫︎◇▫︎

「おっ、久遠と立花、のお戻りだー!!」
「………お前ら何言ってんだ?久遠に失礼だろうが」

 クラスメイトのおふざけマンの言葉に、立花が呆れたように返した。

「そうですね、立花の迷惑にまります」

 心菜も頷きながら立花の隣に立った。
 いつものメンバーや小学校の頃から同じ子以外には、基本的に敬語を使ってしまう心菜は、敬語で殊更丁寧に返答した。小学校でとある生徒と揉め、そして良くやっかみに遭う心菜は、使う言葉や行う行動を必要最低限にし、周囲との接触をあまり図らないようにしていたのだ。

「で?立花は久遠に告って、それにびっくりされて、その挙句泣かれたのか?」
「はあ?んなわけねーだろ。お前は馬鹿なのか?あぁー、馬鹿だったな」
「ちぇっ、ちげーのか。つまんねーの」

 おふざけマンが膨れっ面でプンスカしていて、それを立花が呆れ顔で眺めているのを横目に、心菜は真っ赤な顔で俯いて、むうぅーっと頬を膨らませた。

*******************

読んでいただきありがとうございます😊😊😊

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