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85 グループ別リレー
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ぼそっとした言葉に、心菜はこてんと首を傾げた。だが、果音は何も返してくれない。それどころか、そんな心菜を横目に、果音は分かりやすく話をすり替えた。
「さあ、走ろう!!優勝のために」
「………あぁ、胃が痛い」
心菜は下を向きながらお腹に一瞬だけ手を当てて、そして果音と並んで腰に肘を当てる。
ーーーピピーーっ、ピっ、
トラックを突っ切り、本部席の前にやってくる頃には、心菜の表情から迷いが消え去っていた。そして、不敵な笑みを浮かべていた。
「さあ、いっちょ走りますか」
第1走者が出発し、大声の応援が運動場内にこだまする。心菜はそんなステージの上ではちまきの巻かれた額の上にある前髪を直しながら、自分の番に向けてトラックに入る。
練習に成果を発揮するだなんて言えるほどの練習は積めなかった。けれど、心菜の心の中には走り切るという思いしか残っていなかった。
向こうから、3位を2位にまで上げてきた果音が息を荒げて必死の形相で走ってくる。心菜は彼女に向けてふんわりと笑って、そしてととっと勢いをつけてリードを始める。絶対に後ろは振り向かない。果音を信じて、心菜はできる限り早く足を前に、そして遠くに踏み出す。右手を後ろに出したままで走るのは苦手だが、練習不足のリレーのバトンパスでは大事なことだ。
「ここちゃん!!はい!!」
「はい!!」
バトンを受け取った心菜は、思いっきり飛び出して、同じぐらいにバトンを受け取った上位3人で鍔迫り合いを行う。皆が直線ラインを全速力で走り、そして曲線に入るまでに差をつけようと躍起になる。それは心菜も同様で、抜かれないためにもつれそうになってしまう運動不足の足を叱咤して走っていた。
曲線ライン、ギリギリのところで心菜は1番に入り込んだ。後ろから追いかけられると言う恐怖と闘いながら、心菜は次の走者に渡すまでは抜かせないと体力を失い尽くした身体を動かし続ける。
(最下位ぐらいだったら、頑張らなくてもよかったんだけどな………)
半分を走ったくらいで喉にひりつく痛みを感じ始めた心菜は、心にもないことを考えて、それでも必死になって走った。
だが次の瞬間、後ろの走者に靴を踏まれて、ぐらっと心菜の身体が一瞬前に傾いた。周囲から悲鳴のような声が聞こえて、心菜はぎゅっと目を瞑った。
*******************
読んでいただきありがとうございます😊😊😊
ぼそっとした言葉に、心菜はこてんと首を傾げた。だが、果音は何も返してくれない。それどころか、そんな心菜を横目に、果音は分かりやすく話をすり替えた。
「さあ、走ろう!!優勝のために」
「………あぁ、胃が痛い」
心菜は下を向きながらお腹に一瞬だけ手を当てて、そして果音と並んで腰に肘を当てる。
ーーーピピーーっ、ピっ、
トラックを突っ切り、本部席の前にやってくる頃には、心菜の表情から迷いが消え去っていた。そして、不敵な笑みを浮かべていた。
「さあ、いっちょ走りますか」
第1走者が出発し、大声の応援が運動場内にこだまする。心菜はそんなステージの上ではちまきの巻かれた額の上にある前髪を直しながら、自分の番に向けてトラックに入る。
練習に成果を発揮するだなんて言えるほどの練習は積めなかった。けれど、心菜の心の中には走り切るという思いしか残っていなかった。
向こうから、3位を2位にまで上げてきた果音が息を荒げて必死の形相で走ってくる。心菜は彼女に向けてふんわりと笑って、そしてととっと勢いをつけてリードを始める。絶対に後ろは振り向かない。果音を信じて、心菜はできる限り早く足を前に、そして遠くに踏み出す。右手を後ろに出したままで走るのは苦手だが、練習不足のリレーのバトンパスでは大事なことだ。
「ここちゃん!!はい!!」
「はい!!」
バトンを受け取った心菜は、思いっきり飛び出して、同じぐらいにバトンを受け取った上位3人で鍔迫り合いを行う。皆が直線ラインを全速力で走り、そして曲線に入るまでに差をつけようと躍起になる。それは心菜も同様で、抜かれないためにもつれそうになってしまう運動不足の足を叱咤して走っていた。
曲線ライン、ギリギリのところで心菜は1番に入り込んだ。後ろから追いかけられると言う恐怖と闘いながら、心菜は次の走者に渡すまでは抜かせないと体力を失い尽くした身体を動かし続ける。
(最下位ぐらいだったら、頑張らなくてもよかったんだけどな………)
半分を走ったくらいで喉にひりつく痛みを感じ始めた心菜は、心にもないことを考えて、それでも必死になって走った。
だが次の瞬間、後ろの走者に靴を踏まれて、ぐらっと心菜の身体が一瞬前に傾いた。周囲から悲鳴のような声が聞こえて、心菜はぎゅっと目を瞑った。
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読んでいただきありがとうございます😊😊😊
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