小さな別れは、淡く儚い恋を呼ぶ

桐生桜月姫

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83 無神経な有栖川

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「はあー、はあー、」
「「い、イェーイ!!」」

 秋に入って尚、真夏のような暑さを放つ日差しでいっぱいの運動場のど真ん中で踊り切った心菜と優奈は、チームの席に戻るための道に入る退場門を走り切った途端に、2人で息も絶え絶えでぴょんと飛んで、ハイタッチをした。体力がない組には、炎天下の中の5分間の激しいダンスは身に応えるのだ。ちなみに、陸上部や水泳部などの相当走らされる部活の子達は涼しい顔をしている。羨ましいったらありゃしない。

「本番のダンス、無事に終わったー!!」
「ねー。それに、これでやっと、毎日の地獄の2時間ダンスレッスンも、これにて終了だね………」
「それ、マジで最高!!」

 人差し指をぴっと伸ばしながら、優奈は思いっきり頷いた。心菜はそんな優奈に向けて苦笑して優奈同様に、人差し指を刺した。

「それなー」

 2人で苦笑しながら笑い合うと、次の競技の応援に向けて急いでチーム席に戻って、ダンスに使ったポンポンを運動場に持ち出していたカバンの中に片付けて、そして急いでチームの応援席へと戻った。

「おー!ドラゴンとお嬢さまのご帰還だー!!」
(………有栖川は相変わらず余計なことしかできないのね)

 ぴょんぴょんと飛びながらお出迎えをしてきた有栖川に、優奈と心菜はにこーっと笑ってそれぞれが身長の低い有栖川の肩に手を載せた。ある意味いじめと取られてもおかしくない行動だったが、なぜかは分からないが、普通に周囲は流していた。
 それどころか、『あーあ、有栖川。まーた余計なことを言って女子怒らせてるよ。あそこまで無神経なのも、ある意味才能だよな………』とまで言われている始末だ。
 有栖川の無神経・神経逆撫での才能は、そこそこ有名なこととなっているようだ。幼稚園の頃から変わらない有栖川に、幼馴染たる優奈と心菜はすっと目を細めて捲し立てる。

「………有栖川、誰が『ドラゴン』だって言ったの?」
「………私は『お嬢さま』でもなんでもないわ」
「え、えぇー、だ、だって………」

 しどろもどろな有栖川に、心菜と優奈はにこっと笑ってそっくりな仕草で首を傾げた。

「「だって何?見苦しい言い訳は聞かないわよ?」」
「………立花がそう言ったし………………」

 なんとなしに有栖川は言った言葉だったが、2人にはそこそこ響いてしまった。

*******************

読んでいただきありがとうございます😊😊😊

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