小さな別れは、淡く儚い恋を呼ぶ

桐生桜月姫

文字の大きさ
上 下
84 / 144

83 無神経な有栖川

しおりを挟む
「はあー、はあー、」
「「い、イェーイ!!」」

 秋に入って尚、真夏のような暑さを放つ日差しでいっぱいの運動場のど真ん中で踊り切った心菜と優奈は、チームの席に戻るための道に入る退場門を走り切った途端に、2人で息も絶え絶えでぴょんと飛んで、ハイタッチをした。体力がない組には、炎天下の中の5分間の激しいダンスは身に応えるのだ。ちなみに、陸上部や水泳部などの相当走らされる部活の子達は涼しい顔をしている。羨ましいったらありゃしない。

「本番のダンス、無事に終わったー!!」
「ねー。それに、これでやっと、毎日の地獄の2時間ダンスレッスンも、これにて終了だね………」
「それ、マジで最高!!」

 人差し指をぴっと伸ばしながら、優奈は思いっきり頷いた。心菜はそんな優奈に向けて苦笑して優奈同様に、人差し指を刺した。

「それなー」

 2人で苦笑しながら笑い合うと、次の競技の応援に向けて急いでチーム席に戻って、ダンスに使ったポンポンを運動場に持ち出していたカバンの中に片付けて、そして急いでチームの応援席へと戻った。

「おー!ドラゴンとお嬢さまのご帰還だー!!」
(………有栖川は相変わらず余計なことしかできないのね)

 ぴょんぴょんと飛びながらお出迎えをしてきた有栖川に、優奈と心菜はにこーっと笑ってそれぞれが身長の低い有栖川の肩に手を載せた。ある意味いじめと取られてもおかしくない行動だったが、なぜかは分からないが、普通に周囲は流していた。
 それどころか、『あーあ、有栖川。まーた余計なことを言って女子怒らせてるよ。あそこまで無神経なのも、ある意味才能だよな………』とまで言われている始末だ。
 有栖川の無神経・神経逆撫での才能は、そこそこ有名なこととなっているようだ。幼稚園の頃から変わらない有栖川に、幼馴染たる優奈と心菜はすっと目を細めて捲し立てる。

「………有栖川、誰が『ドラゴン』だって言ったの?」
「………私は『お嬢さま』でもなんでもないわ」
「え、えぇー、だ、だって………」

 しどろもどろな有栖川に、心菜と優奈はにこっと笑ってそっくりな仕草で首を傾げた。

「「だって何?見苦しい言い訳は聞かないわよ?」」
「………立花がそう言ったし………………」

 なんとなしに有栖川は言った言葉だったが、2人にはそこそこ響いてしまった。

*******************

読んでいただきありがとうございます😊😊😊

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

社長室の蜜月

ゆる
恋愛
内容紹介: 若き社長・西園寺蓮の秘書に抜擢された相沢結衣は、突然の異動に戸惑いながらも、彼の完璧主義に応えるため懸命に働く日々を送る。冷徹で近寄りがたい蓮のもとで奮闘する中、結衣は彼の意外な一面や、秘められた孤独を知り、次第に特別な絆を築いていく。 一方で、同期の嫉妬や社内の噂、さらには会社を揺るがす陰謀に巻き込まれる結衣。それでも、蓮との信頼関係を深めながら、二人は困難を乗り越えようとする。 仕事のパートナーから始まる二人の関係は、やがて揺るぎない愛情へと発展していく――。オフィスラブならではの緊張感と温かさ、そして心揺さぶるロマンティックな展開が詰まった、大人の純愛ストーリー。

偽装夫婦

詩織
恋愛
付き合って5年になる彼は後輩に横取りされた。 会社も一緒だし行く気がない。 けど、横取りされたからって会社辞めるってアホすぎません?

魔術師の妻は夫に会えない

山河 枝
ファンタジー
 稀代の天才魔術師ウィルブローズに見初められ、求婚された孤児のニニ。こんな機会はもうないと、二つ返事で承諾した。  式を済ませ、住み慣れた孤児院から彼の屋敷へと移ったものの、夫はまったく姿を見せない。  大切にされていることを感じながらも、会えないことを訝しむニニは、一風変わった使用人たちから夫の行方を聞き出そうとする。 ★シリアス:コミカル=2:8

溺婚

明日葉
恋愛
 香月絢佳、37歳、独身。晩婚化が進んでいるとはいえ、さすがにもう、無理かなぁ、と残念には思うが焦る気にもならず。まあ、恋愛体質じゃないし、と。  以前階段落ちから助けてくれたイケメンに、馴染みの店で再会するものの、この状況では向こうの印象がよろしいはずもないしと期待もしなかったのだが。  イケメン、天羽疾矢はどうやら絢佳に惹かれてしまったようで。 「歳も歳だし、とりあえず試してみたら?こわいの?」と、挑発されればつい、売り言葉に買い言葉。  何がどうしてこうなった?  平凡に生きたい、でもま、老後に1人は嫌だなぁ、くらいに構えた恋愛偏差値最底辺の絢佳と、こう見えて仕事人間のイケメン疾矢。振り回しているのは果たしてどっちで、振り回されてるのは、果たしてどっち?

私の大好きな彼氏はみんなに優しい

hayama_25
恋愛
柊先輩は私の自慢の彼氏だ。 柊先輩の好きなところは、誰にでも優しく出来るところ。 そして… 柊先輩の嫌いなところは、誰にでも優しくするところ。

好きな人の好きな人

ぽぽ
恋愛
"私には10年以上思い続ける初恋相手がいる。" 初恋相手に対しての執着と愛の重さは日々増していくばかりで、彼の1番近くにいれるの自分が当たり前だった。 恋人関係がなくても、隣にいれるだけで幸せ……。 そう思っていたのに、初恋相手に恋人兼婚約者がいたなんて聞いてません。

私に告白してきたはずの先輩が、私の友人とキスをしてました。黙って退散して食事をしていたら、ハイスペックなイケメン彼氏ができちゃったのですが。

石河 翠
恋愛
飲み会の最中に席を立った主人公。化粧室に向かった彼女は、自分に告白してきた先輩と自分の友人がキスをしている現場を目撃する。 自分への告白は、何だったのか。あまりの出来事に衝撃を受けた彼女は、そのまま行きつけの喫茶店に退散する。 そこでやけ食いをする予定が、美味しいものに満足してご機嫌に。ちょっとしてネタとして先ほどのできごとを話したところ、ずっと片想いをしていた相手に押し倒されて……。 好きなひとは高嶺の花だからと諦めつつそばにいたい主人公と、アピールし過ぎているせいで冗談だと思われている愛が重たいヒーローの恋物語。 この作品は、小説家になろう及びエブリスタでも投稿しております。 扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。

処理中です...