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76 運動会

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 心菜は抵抗することもなく諦め、大人しくリレーに出ることにした。
 平和な1年が、また1歩遠かった気がした。
 その後は心菜の意見も取り入れられてどんどん恭吾の出場者が決まっていく。心菜は1つだけリレーに出ない以外の我が儘を通す権利を得て、念願だった『借り物競走』への出場権をもぎ取った。心菜は毎年リレー選手であったが故に、2つ目の競技という欄でしか競技が選べず、人気のない競技しか選択できていなかったのだ。ちょっとだけほくほく顔の心菜は、これから待っている地獄の運動会練習から目を背け、束の間の喜びを噛み締めた。まあ、全ての元凶は優奈なため、優奈には次のテストで色々頑張ってもらう予定だが。
 心菜は裏切った幼馴染にふふふっ、と笑みをこぼした。

「ゆーなちゃん、次のテスト楽しみだね」
「え?………な、なんで?」
「ふふふっ、楽しみね」

 優奈は半泣きで震えながらうぎゃあああぁぁぁ!!と悲鳴を上げた。

▫︎◇▫︎

 運動会の日は案外あっという間にやってきてしまった。
 
「はあああぁぁぁー、」
「うっわ、引くレベルの溜め息」

 いきなり現れた立花は、心菜の肩に手を置きながら苦笑した。彼は気合いっぱいに袴を着ている。応援団の服だろう。優奈の喜びそうな構図だと思いながら、心菜は肩をすくめる。
 和風ラノベや漫画をこよなく愛する優奈を知っている心菜は、思いっきり苦笑してしまう。

「………なんか悪い?」
「いや?………悪くないんじゃないか?」
「でしょう?」

 運動会という憂鬱な行事も、優奈は立花の袴で乗り切れるだろう。心菜はぐっと背伸びをすると、列へと並ぶ。長ったらしい先生のお話に耳を傾けたふりをし、必要な競技にのみでて、必ず1番をとって帰る。走る系統のみだったら、心菜は果音以外にはほとんど負け知らずだ。今回は運良く、どの競技も陸上部のメンツとぶつかっていない。心菜はただただ走って、飛んで、必要なものをもらってゴールへと駆け抜ける。借り物競走も、見るだけなら楽しくても、実際に走ってみると意外につまらない。
 心菜はとぼとぼと自分のチームのヤグラに帰って、みんなからの歓声を受ける。1~10までつまらないけれど、仲良しメンバーに褒められるのは少しだけ、嬉しいかもしれない。

*******************

読んでいただきありがとうございます😊😊😊

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