小さな別れは、淡く儚い恋を呼ぶ

桐生桜月姫

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54 朝食

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▫︎◇▫︎

 次の日、朝食を前にしてぼーっとしている心菜は、周囲も皆そういう雰囲気というのを見て、くすっと笑った。どの部屋でも朝方まで大宴会が開かれ、十分に睡眠が取れていなかったようだ。心菜はあくびを噛み殺し、苦笑した。

「ふぁあぁあ、」
「とっても大きなあくびだこと」
「………ねむい」
「言われなくともそのくらい分かるよ」

 馬鹿にされた気がしてむうっとくちびるを尖らせた心菜は、横で大きなあくびをしている立花を見て、男子のお部屋でも夜通し色々なカードゲームをしていたのかと当たりをつけた。ちなみに、女子の部屋ではほとんどのお部屋が恋バナではなくこっそり持ち込んだカードゲームやボードゲームをしていたらしい。心菜が想像していたような恋する乙女は、実際にはなかなかいないようだ。

「男子の部屋でも朝まで何かしらのゲームをしていたの?」
「………いや?恋バナ」
「は?ーーー………」

 心菜は一瞬びっくりして、目をパチパチとさせた。

「えっと、は、え?こ、恋バナ!?」
「あぁ、恋バナ」

 心菜は不可解と言った表情で首を傾げる。心菜にとって、恋バナというものは女子のものという印象が強い。だから、何故男子が恋バナをしていたのかということが分からないのだ。

(い、意味がさっぱりわらない。え?こ、恋バナって何かの隠語だっけ?)

 困りきった心菜を見た優奈が、苦笑した後に助け舟を出す。

「ここなは、そういうのにものすっごく疎いんだから、揶揄わないでよね。こんな純粋無垢な子、なかなかいないよ自慢の幼馴染!!」
「………そうみたいだな」

 何故か分かりきったことを話すかのように馬鹿にして口調じゃないけれど、貶されていると感じることを話す2人に、心菜は疎外感を覚えてむうっと不機嫌な顔を作った。そして、やけ食いだと言わんばかりに、朝食の白いご飯の上に乗っていた梅干しをぱくっと1口で食べた。艶々の真っ赤な色が美味しそうだったが、その実はそうではなかった。否、そうだけどそうじゃないと言った方が正しいかもしれない。

「す、すっぱい………」

 梅干し好きの心菜でも、1口で大粒の梅干しを朝食に食べるのは、いくらなんでも酸っぱくて辛かったようだ。

▫︎◇▫︎

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