小さな別れは、淡く儚い恋を呼ぶ

53 お部屋にて

　立花のことを思慕している幼馴染の顔を思い浮かべた心菜は少しだけ申し訳なく思いながらも、どうしてもこの時間を終わらせたくないと思ってしまった。心臓がぎゅーっとなって苦しいのに居心地が良くて、手放したくなくて、彼の隣に立ちたいと願ってしまう。

(重症だな………)

　未だにずっと心の自分から目を背けている心菜は、そっと自嘲気味に心の中の自分につぶやいて、握っている手の力をそっと強めた。わずかな逢瀬のようなひと時を、心菜は知らず知らずのうちに、楽しんでしまっていた。

▫︎◇▫︎

　その後、心菜たちは水族館のイルカショーを楽しみ、売店に向かった。売店では、相変わらず心菜がチョコレート菓子を全制覇しようとするのを優奈が必死になって止めて、それを見て立花が爆笑してという1波乱があったが、比較的穏便にことが進んだ。
　観光地にも1,2件みんなで回ったが、見事に心菜が迷って立花が助けに来るというのはお決まりになってしまっていた。
　そして夜、修学旅行の醍醐味、旅館での恋バナが開始！！かと思いきや、心菜たちのお部屋ではルームメイト7人でこっそり持ち込んだ人狼ゲームを開始するという流れになった。

(また占い師だ)

　5回中5回とも占い師を当てた心菜は、ひっそりと溜め息をつきながらも、どんどんゲームに貢献していき、村人チームを勝利へと導いていく。

「じゃあ、昨夜の占いの結果を発表します。ゆーなちゃんを占った結果、彼女は『黒』でした」
「またかいなっ！！」

　関西弁チックな話し方をする転校生のツッコミに、ルームメイトが皆一様に苦笑する。こんな調子で、心菜は2日目には人狼を毎度当ててしまっていたのだ。

「心菜ちゃんが占い師やったら、ゲームにならへんでー」
「うぐっ、私に言われても困るんだけどー。私が持ってきたゲームだけれど、役職やらの調整はできないもん！！」
「というか、できたらゲームにならへんやろ」
「まあ、そうだけど」

　ゲームを持ってきてくれた女の子と転校生の会話を申し訳なく思った心菜は、そっと鞄の中からトランプを取り出した。

「と、トランプ持ってきてるけど、次はババ抜きでもする？」
「あ、いいかも」
「賛成ー！！」

　みんなの言葉に安心した心菜は、トランプをきってみんなに配布した。楽しい夜ふかしゲームは、先生が夜の巡回でやってきて、生徒を叱るまで続いたとさ。

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