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「よう、久遠、高梨。お?意外だな。久遠のことだから、チョコ菓子制覇するのかと思ってたんだが………」

 立花が心菜の手元を見て不思議そうに首を傾げた。心菜はちょっとだけ頬を膨らませながら、不服そうに文句を言う。正直、心菜は未だにチョコレート菓子全制覇をしたくて仕方がない。

「………ゆーなちゃんに怒られた………………」
「あぁー、………小遣い足りなくなるもんな」
「………………多めに持ってきてるから、お小遣いは問題ないけど………」
「持って帰れなくなるな」

 心菜はこくんと頷いた。お小遣いは諭吉さんを多めに持ってきているから、全くもって困らないが、袋はそこまで多く持ってきていない。下手をすれば、手に持って帰らないといけなくなり、チョコレートが溶けてどろどろになってしまう。車の中でチョコレートが溶けるという事故ほど、辛いものはない。

(溶けたチョコレートの匂いって、車の中で嗅ぐと酔いが悪化するんだよね………)

 そっと溜め息をついた後、心菜は頭の方に伸ばされかけていた立花の手を見なかったふりをして、もう1つの懸念事項を口にする。

「うん、………あと、流石に、先生にバレる気がする」

 模範的な性格でありながら、チョコレートに目がなくてお金を多めに持ってきた心菜だが、罪悪感が全くないというわけではない。どちらかといえば、罪悪感満載だし、よっぽどでなければ予備の多めに持ってきたお金は使わないでいる気だ。

「あぁー、うん、なんとなく分かった」

 どのくらいのお菓子を手に持っていたのか想像した立花は、引き攣った笑みを浮かべて片手を上げてストップをかける。『高梨ナイス』としか言いようがないくらいに、心菜はおそらくお菓子を握りしめていたのだろう。

「じゃあ、そろそろ会計行ってこい。もう少しで出発だぞ」
「そうだね」

 心菜は会計の列に並びながら、帰ってからのお楽しみになるであろうチョコレートのもみじ饅頭の箱をするりと撫でた。小学校の修学旅行と似たようなルートなのはいただけないと思ったが、存外悪くないかもしれない。そう考えながら、心菜は周りの子に比べると高額なお土産を無事に購入し、そして宮島まで船に揺られていくのだった。

(うぅ、き、気持ちが悪すぎる………)

 言わずもがな、心菜は船酔いを起こして、宮島到着直後は使い物にならなくなったとさ。

*******************

読んでいただきありがとうございます😊😊😊

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