小さな別れは、淡く儚い恋を呼ぶ

桐生桜月姫

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25 優奈に語る

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 次の日の朝、心菜は少しだけ学校に行くのが憂鬱だった。昨日の立花の言葉への不思議な感情と、優奈への申し訳なさ、そして優奈への憐れみが生まれてしまったからだ。いつもいつも朝は学校に行きたくなくて仕方がないが、今日はいつにも増して行きたくないのだ。

「うぅー、行きたくない………」

 だが、ここで足踏みしていても優奈は心菜を引きずってでも学校に連れていくだろう。優奈はそういう子だし、実際今までに5度ほど駄々を捏ねて優奈に学校まで引きずられて連れて行かれた。

 ーーーピーンポーン

「うげー、」

 ほら、お迎えが来た。いっつもいっつも、ちょっと遅くなるだけで、心菜が行きたくないと駄々を捏ねていると勘違いされてしまう。いや、今日は行きたくないから足踏みしているのだから、正解なのか?

「ここなー!!学校遅れるよー!!」
「ちょっと待ってー!!今行くー!!」

 女は度胸!!心菜はパシッ!!とほっぺを叩いて喝を入れ、1階に滑るようにして降りていった。玄関前では優奈が応仁立ちでこちらを見ている。

「遅い!!」
「ごめんって」
「行くよ」
「ん、レッツゴー!!ママ!行ってきまーす!!」
「いってらっしゃい!!」

 心菜は未だに母親のことを『ママ』と呼んでいる。小学校の頃に、近所のアホ男(元同級生)に『お前まだ母親のことをママなんて幼い呼び方してるんでちゅかー?久遠はお子ちゃまでちゅねー!!』と言われてカチンときて、一時は直そうとしていたが、もう最近は諦めて大人しく『ママ』と呼んでいる。だってこっちの方が『お母さん』よりも圧倒的に短くて、呼びやすくて、全てにおいて効率的だから。

「そうだ、ここな。昨日は結局コンビニスイーツ食べられたの?」
「うん、食べれたよ」
「立花が手を回してくれたの?」
「そ、ちょー美味しかったよ!!」

 心菜は昨日の美味しい最高のスイーツを思い出してぐっとこぶしを握りしめて力説する。どんなに説明しようとも、百聞は一見に如かず、食べるのが1番だ。だが、心菜は今はどうしてもこの暑い思いを誰かに思いっきり思うがままに、感情のままにあのチョコロールの美味しさを語りたい。理性をぶん投げた心菜は、優奈に登校中ずっとあのお菓子の素晴らしさを、少しでも気が済むまで延々と語り続けた。

(あぁ、チョコロール。思い出すだけで幸せだ………)

*******************

読んでいただきありがとうございます😊😊😊

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