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21 もぐもぐタイム

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「じゃあ、いただきます」

 心菜はチョコスイーツを前にしっかりと手を合わせて挨拶をする。『いただきます』という言葉には沢山の意味が詰まっているというが、心菜はいつもに感謝している。作ってくれた人も尊い。けれど、心菜はいつも目の前の食べ物に向き合いたいと、そう思っている。
 丁寧にパッケージを開くと、中からチョコレートのロールケーキが出てきた。有名なチョコレート専門店とのコラボ商品だというこのケーキは、見た目にも細心の注意が注がれている気がした。

「んー!美味い!!」
「!!」

 心菜がじいぃっと美しいケーキを眺めている間に、立花はフォークもスプーンも使わず、指で持ち上げてガブリと齧り付いていた。心菜は楽しみにしていただけあって、ここまで勢いよく食べられてしまうとびっくりしてしまった。

(ず、ずるい!!)

 心菜もごくりと唾を飲み込んで、小柄なチョコロールにフォークを入れた。ねっとりとしたチョコクリームに、うっとりとしながら、心菜は1口サイズに切ったロールケーキをパクリと食した。

「!!」
(美味しー!!)

 ちょっとしっとりとしたチョコチップ入りの甘ーい生地に、少しだけビターなチョコレートクリーム、上には生チョコ風のチョコレートソースがかかっていて、上品に乗せられたクラッシュチョコと可愛いハート型のチョコレートが見た目にも良い!控えめに言って最高だ!!
 心菜がゆっくりと味わっていたら、横で立花がぺこりと親指と人差し指を舐めた。もう彼は完食してしまっている。勿体無いったらありゃしない。

「俺、ミルクティー買ってくれるわ」

 心菜は彼の言葉にひらりと手を振った。今は彼を構うよりも、チョコロールに構っていたい。心菜は最後の1口まで丁寧に丁寧にゆっくりと食べた。こういうスイーツを食している時間は、心菜にとって何にも変えられない至福の時間だ。

「ほうぅー、しあわせ………」
「そりゃ良かった」
「ふぎゃにゃっ!!」

 いきなり後ろから立花に話しかけられた心菜は、ビクッと身体を震わせた。心無しか、殺気立っている仔猫のようだった。

「脅かさないでよ!!」
「いいじゃん。で?どこが良かったの?」
「………強いて言うなら全部?」
「え、それ選べてなくね?」
「私、スイーツにはイチャモン付けない主義なの」

 心菜は紅茶を1口飲んで、悪戯っぽく微笑んだ。

*******************

読んでいただきありがとうございます😊😊😊

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