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19 心菜は困り果てる

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「す、すごいこだわりだな。立花、こんなのが好きだったんだな………。高梨ちゃん?の猛アタックは見て見ぬふりしてたのに」
「え?」

 心菜は優奈が猛アタックをしていたということにとても驚いた。優奈からの報告と、周りからの反応から言って、優奈は立花に告白していないものだと思っていた。というか、そうとしか感じられなかった。

「………久遠とはカレカノじゃありません。彼女に失礼ですから、そういうのはやめてください」
「まじかー!!じゃあ久遠ちゃん、俺と付き合ってよ!!俺、君みたいな子タイプなんだー!!」
「え、あ、」

 心菜はすっと立花の後ろに隠れ、そして彼のベストの裾をぎゅっと握り込んだ。手が情けなく震えてしまっている。怖い。

「あぁーあ、先輩。そんなんだから毎回毎回振られるんすよ。久遠怖がってるじゃないですかー」
「嘘っ!?あっちゃー、ごめんな?久遠ちゃん」

 先輩がものすごく申し訳なさそうに謝ってきた。真っ直ぐに向けられる焦茶色の瞳からは、真摯な誠実さが垣間見える。

「………………いえ………」

 心菜は誰も傷つけたくない。平穏に、静かな生活が送りたい。確かに、人並みに、否、人並み以上に楽しいこと、面白いこと、嬉しいこと、幸せなことは大好きだ。けれど、心菜が望むのは平家な生活だ。

「………………久遠、イートイン行こーぜ。先輩、付いて来んなよ」
「え、あ、お、お会計」
「あぁ、それならもう俺が払った。ほら、行くぞ」

 心菜は立花に手を引っ張られてイートインスペースに連れて行かれた。清潔感があるこの場所は、心菜の好きな場所No.3だ。ちなみに、No.1は自室で、No.2は本屋さんや図書館だ。カフェも捨てがたい。

「ほら、さっさと紅茶でも飲んで落ち着け」

 イートインスペースの席に着くと、立花がストレートティーのペットボトルにキャップを開けて手渡してくれた。心菜は自分で開けることができないから、とてもありがたい。ちなみに、いつもは怪力優奈にお願いしている。炭酸を渡すと振られてしまうから、いつもブクブクになって返ってくるが………。

 ーーーコクコク

 小さな音を立てていつもよりも勢いよく紅茶を飲むと、ざわついていた心がすうぅっと波紋の無い水面のように凪いでいくのが感じられる。

「………ありがとう、立花」
「どーいたしまして」

 立花は肘をついて心菜を見つめながら悪戯っぽく微笑んだ。

(彼の柔らかい笑顔に、どうしてこんなにも胸が痛むのだろうか)

 心菜は得意の作り笑いを完璧装備した。

*******************

読んでいただきありがとうございます😊😊😊

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