10 / 144
9 大鷲裕人
しおりを挟む
「………久しぶりね、大鷲」
麦色に焼けた健康的な肌に、縮れた黒い髪。ヤンチャボーイの風貌をした男の子は小学校時代の有名人、大鷲裕人その人だ。
「おう!久しぶり。高梨も久しぶり」
「ひっさしぶりー!!」
優奈はよっ!とばかりに片手を上げて満面の笑みで大鷲に挨拶をした。
(あぁ、最悪だ)
心菜は早く帰りたいと心の中で唱えまくったが、そんな願いが天に届くわけもなく、近所のコンビニのイートインスペースに連れ込まれてしまった。
(あぁ、漫画が読みたい。ライトノベルが読みたい)
ちゅーっとストローを刺したカップのミルクティーを飲みながら、心菜は堂々と溜め息を吐いた。この男相手に、お猫さまを被る必要なんてない。というか、被りたくない。正直に言って面倒くさい。
「うわー、あいっかわらず久遠はひでーなー」
「問題児相手ににこにこしていられるほど、私の心は広くないの」
「心に菜の花って書くのに?これって『心の明るい子に育ちますよーに』だろう?」
「………………何で分かるのよ」
心菜はじとっとした目を大鷲に向けた。確かに心菜の名前の由来は『心の明るい子に育ちますように』だ。けれど、このことを誰かに話したことなんてない。何故なら、心菜の心は結構荒んでいるからだ。明るいというよりも暗いし、陰湿だ。
「だって、菜の花の花言葉って、『明るい』とか『快活』だろ?逆に聞くけど、『心菜』って名前でそれ以外の願いなんてあるのか?」
「………ないわね。その通りよ」
心菜はげっそり疲れて、優奈に会話をバトンタッチした。こういう時、気心の知れた幼馴染というのはとても便利だ。言わなくてもやってほしいことを理解してくれる。
「にしても大鷲、どうしてこっちにいるの?引っ越したんじゃなかったけ?というか、学校は?」
「ん?サボった。めんどかったからサボった。今日は電車でぶらり旅~」
「うわー、あんたまだ問題児続けてんの?いい加減教師に見放されるよー」
『それ、ゆーなちゃんが言うか?』という言葉を寸出で飲み込んだ心菜は、ちょっと味の気に入らないミルクティーをごくりと1口飲み込んだ。味から考えるに、ダージリンとアッサムのミックスであろうミルクティーは、無糖なはずなのにとても甘い。
「はははっ、もう見放されてっよ」
「マジかー」
「マジだー」
見放された組の会話ほどシュールなものはないと、心菜はこの日初めて知ることとなった。
*******************
読んでいただきありがとうございます😊😊😊
麦色に焼けた健康的な肌に、縮れた黒い髪。ヤンチャボーイの風貌をした男の子は小学校時代の有名人、大鷲裕人その人だ。
「おう!久しぶり。高梨も久しぶり」
「ひっさしぶりー!!」
優奈はよっ!とばかりに片手を上げて満面の笑みで大鷲に挨拶をした。
(あぁ、最悪だ)
心菜は早く帰りたいと心の中で唱えまくったが、そんな願いが天に届くわけもなく、近所のコンビニのイートインスペースに連れ込まれてしまった。
(あぁ、漫画が読みたい。ライトノベルが読みたい)
ちゅーっとストローを刺したカップのミルクティーを飲みながら、心菜は堂々と溜め息を吐いた。この男相手に、お猫さまを被る必要なんてない。というか、被りたくない。正直に言って面倒くさい。
「うわー、あいっかわらず久遠はひでーなー」
「問題児相手ににこにこしていられるほど、私の心は広くないの」
「心に菜の花って書くのに?これって『心の明るい子に育ちますよーに』だろう?」
「………………何で分かるのよ」
心菜はじとっとした目を大鷲に向けた。確かに心菜の名前の由来は『心の明るい子に育ちますように』だ。けれど、このことを誰かに話したことなんてない。何故なら、心菜の心は結構荒んでいるからだ。明るいというよりも暗いし、陰湿だ。
「だって、菜の花の花言葉って、『明るい』とか『快活』だろ?逆に聞くけど、『心菜』って名前でそれ以外の願いなんてあるのか?」
「………ないわね。その通りよ」
心菜はげっそり疲れて、優奈に会話をバトンタッチした。こういう時、気心の知れた幼馴染というのはとても便利だ。言わなくてもやってほしいことを理解してくれる。
「にしても大鷲、どうしてこっちにいるの?引っ越したんじゃなかったけ?というか、学校は?」
「ん?サボった。めんどかったからサボった。今日は電車でぶらり旅~」
「うわー、あんたまだ問題児続けてんの?いい加減教師に見放されるよー」
『それ、ゆーなちゃんが言うか?』という言葉を寸出で飲み込んだ心菜は、ちょっと味の気に入らないミルクティーをごくりと1口飲み込んだ。味から考えるに、ダージリンとアッサムのミックスであろうミルクティーは、無糖なはずなのにとても甘い。
「はははっ、もう見放されてっよ」
「マジかー」
「マジだー」
見放された組の会話ほどシュールなものはないと、心菜はこの日初めて知ることとなった。
*******************
読んでいただきありがとうございます😊😊😊
0
お気に入りに追加
9
あなたにおすすめの小説
プレッシャァー 〜農高校球児の成り上がり〜
三日月コウヤ
青春
父親の異常な教育によって一人野球同然でマウンドに登り続けた主人公赤坂輝明(あかさかてるあき)。
父の他界後母親と暮らすようになり一年。母親の母校である農業高校で個性の強いチームメイトと生活を共にしながらありきたりでありながらかけがえのないモノを取り戻しながら一緒に苦難を乗り越えて甲子園目指す。そんなお話です
*進行速度遅めですがご了承ください
*この作品はカクヨムでも投稿しております
いつも伴奏な僕に主旋律を
ゆず太郎
青春
何気なく入った吹奏楽部に入った僕こと
葛城 真一(かつらぎしんいち)はサックスの中でも(中学校の中で)一番大きなバリトンサックスを担当することになった。最初は音を出すこともままならなかったが、楽器が好きになっていく。
彼女に振られた俺の転生先が高校生だった。それはいいけどなんで元カノ達まで居るんだろう。
遊。
青春
主人公、三澄悠太35才。
彼女にフラれ、現実にうんざりしていた彼は、事故にあって転生。
……した先はまるで俺がこうだったら良かったと思っていた世界を絵に書いたような学生時代。
でも何故か俺をフッた筈の元カノ達も居て!?
もう恋愛したくないリベンジ主人公❌そんな主人公がどこか気になる元カノ、他多数のドタバタラブコメディー!
ちょっとずつちょっとずつの更新になります!(主に土日。)
略称はフラれろう(色とりどりのラブコメに精一杯の呪いを添えて、、笑)
久野市さんは忍びたい
白い彗星
青春
一人暮らしの瀬戸原 木葉の下に現れた女の子。忍びの家系である久野市 忍はある使命のため、木葉と一緒に暮らすことに。同年代の女子との生活に戸惑う木葉だが……?
木葉を「主様」と慕う忍は、しかし現代生活に慣れておらず、結局木葉が忍の世話をすることに?
日常やトラブルを乗り越え、お互いに生活していく中で、二人の中でその関係性に変化が生まれていく。
「胸がぽかぽかする……この気持ちは、いったいなんでしょう」
これは使命感? それとも……
現代世界に現れた古き忍びくノ一は、果たして己の使命をまっとうできるのか!?
木葉の周囲の人々とも徐々に関わりを持っていく……ドタバタ生活が始まる!
小説家になろう、ノベルピア、カクヨムでも連載しています!
想い出と君の狭間で
九条蓮@㊗再重版㊗書籍発売中
青春
約一年前、当時付き合っていた恋人・久瀬玲華から唐突に別れを告げられた相沢翔。玲華から逃げるように東京から引っ越した彼は、田舎町で怠惰な高校生活を送っていた。
夏のある朝、失踪中の有名モデル・雨宮凛(RIN)と偶然出会った事で、彼の日常は一変する。
凛と仲良くなるにつれて蘇ってくる玲華との想い出、彼女の口から度々出てくる『レイカ』という名前、そして唐突にメディアに現れた芸能人REIKA──捨てたはずの想い出が今と交錯し始めて、再び過去と対峙する。
凛と玲華の狭間で揺れ動く翔の想いは⋯⋯?
高校2年の夏休みの最後、白いワンピースを着た天使と出会ってから「俺」の過去と今が動きだす⋯⋯。元カノと今カノの狭間で苦しむ切な系ラブコメディ。
片翼のエール
乃南羽緒
青春
「おまえのテニスに足りないものがある」
高校総体テニス競技個人決勝。
大神謙吾は、一学年上の好敵手に敗北を喫した。
技術、スタミナ、メンタルどれをとっても申し分ないはずの大神のテニスに、ひとつ足りないものがある、と。
それを教えてくれるだろうと好敵手から名指しされたのは、『七浦』という人物。
そいつはまさかの女子で、あまつさえテニス部所属の経験がないヤツだった──。
サンスポット【完結】
中畑 道
青春
校内一静で暗い場所に部室を構える竹ヶ鼻商店街歴史文化研究部。入学以来詳しい理由を聞かされることなく下校時刻まで部室で過ごすことを義務付けられた唯一の部員入間川息吹は、日課の筋トレ後ただ静かに時間が過ぎるのを待つ生活を一年以上続けていた。
そんな誰も寄り付かない部室を訪れた女生徒北条志摩子。彼女との出会いが切っ掛けで入間川は気付かされる。
この部の意義、自分が居る理由、そして、何をすべきかを。
※この物語は、全四章で構成されています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる