小さな別れは、淡く儚い恋を呼ぶ

桐生桜月姫

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5 心菜の性格

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「それにしてもここな、学校は大丈夫?」

 優奈は心配そうに心菜を見つめて、嘘はつかせないという気概の感じられる表情で言った。

「うん、大丈夫。孤立はしてるけど、いじめられてないから」
「あぁー、まーた、高嶺のお花になっちゃってるの?」
「うぐっ、」

 そう、心菜はコミュ症なのだ。
 コミュニケーション能力が壊滅的なのではないが、話が合う相手がなかなか見つけられず、そして、話が合わない人間との会話と付き合いを無駄だと思っている。面倒くさいのもあるが、やっぱり合わない相手との会話や付き合いは気を使うから、気が合う相手の数十倍の労力を必要とするし、得られる情報も少ないから無駄としか感じられないのだ。
 心菜は面倒くさいこと、疲れること、無駄だと思うことが大嫌いだ。
 必要最低限のことを必要最低限できていればいい、心菜はそんな思考の持ち主だ。
 合理主義者とも言えるだろう。

「そんなんだから、初恋もまだのお子ちゃまなのよ」
「ひどい………」
「私は事実しか言ってないよ」
「ふぐー………」

 けれども、この幼馴染優奈はちょっとだけ特別だ。オタクと言う共通点以外は特に関わるような理由もないし、どちらかといえば気も合わないのに、何故か隣に行ってしまう。面倒くさいことに巻き込まれるし、彼女のフォローは疲れるし、得られる情報も少なくて無駄が多い。
 でも、何故か心菜は放っておけない。

「じゃ、そろそろ帰るねー。はい、生徒手帳」
「ありがとう」

 手元に戻ってきた生徒手帳は少しだけ土で汚れてしまっていた。
 心菜は入学早々の失態にげんなりと肩を落としてしまう。

「じゃあまた明日ー」

 優奈はぽっちゃりした身体をよっこいせと持ち上げて帰っていく。

「うん、また明日」

 心菜はひらりと手を振った。
 下の階から母親の驚く声が聞こえる。優奈がこんなに早く帰宅するのは、初めてのことではないだろうか。心菜は自分と優奈の道が別れたことを、はっきりと突きつけられた気がした。
 明日からも、優奈と過ごす時間がどんどん減っていくことだろう。だが、それが正しい姿だ。幼稚園の頃の距離に戻っていくだけだ。今までが近すぎた。大して気が合うわけでもないのに惰性でずっと側にいた。陽キャで友達を連れてきてくれて、苦手な子をあしらってくれる、頼もしいお友達。
 心菜は虚しくなって鞄の中に明日学校で読みたい本を無造作に突っ込んだ。

*******************

読んでいただきありがとうございます😊😊😊

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