70 / 72
第一章 修行について
新たな生活と女子力
しおりを挟むぜぇぜぇ
息が切れる、体が軋み、肺の酸素不足で痛む、心臓激しく連続収縮する。
足がふらつきうまく上がらない。
足裏も慣れない走りで痛かった。
体の限界を感じてペースがゆっくりと下がっていく。
その瞬間、
「はーいペース落とさない、もっとできる、キミならもっとできる」
「も、もう、ぜえ、ぜぇ、じゅっ…10キロ結構な、はあはあ、ペースで走っている…が…」
苦痛に関しては生の実感があるので悪くないが、それにしてもはじめての運動でここまで酷使してよいのだろうか、意思とは別に体から軋むような変な音が聞こえてくるが…
「ここで諦めたら試合終了だよ!」
「ぜぇ、ぜぇ、し、試合ってなんだ?」
「言葉のあやよ、それよりももっと早く、もっと!」
ノエルキャラ変わっていないか?
し、しかしなぜこんな目にあっているのだろう
※
混沌の欠片との邂逅から一ヵ月後、我輩はノエルと一緒に生活することになった。
なぜか意気投合した、ノエルとフカガワと精霊までもついてきており事務所に居座っている。
我輩いったんすべてを受け入れ我慢するぞ。
すべては舞殿、サチ、シモダを救うためである。
混沌の欠片は見事に三人の存在まで消してしまい、我輩達以外はすべてこの三名の記憶が消えていた。
記憶だけではなく、コセキなどの記録も消えており、存在そのものが消えているのだ。
我輩、会社を退職し、ノエルとともに事務所で除霊師として働くことになったのだが、まずやらないといけないのは、
掃除、洗濯、食事、買い物などもろもろの家事である。
幸いにも家事全般は嫌いじゃないので、ノエルの事務所で整理できていない書類をまとめたり、ほこりのたまった床を拭き掃除したり、水垢のたまったお風呂場をぴかぴかにしたり、冷蔵庫で賞味期限が切れかかっている食べ物を組み合わせて献立を考えたりと色々がんばっている。
フカガワに女子力高いと言われたが、あまりうれしくはない。
我輩から言わせれば、お前らが雑なのである。
ノエルなどは小物を買って飾るのは良いが、小物と小物の間にほこりが溜まりやすいので結局掃除の手間が増えるだけである。
同居して数日経過するが、我輩、家事が忙しく、肝心の修行がおろそかである。
そろそろ家事の分担を提案したところである。
「家事の分担の前にまず、加藤は弱くなるのが先よ」
「確かに今のままでは、除霊どころではないわ」
二人の言葉は一理ある、除霊する前に、悪霊どもは我輩が近づくだけですぐに逃げ出すのである。
ちなみに我輩達もノエルの事務所では手狭ということで都心で3DK、月5万円の格安物件を借りたのだが、そこは相場の四分の一ではあるが、借り手は必ず自殺するという凶悪物件といううわさだった。
現在は普通に住めている。
むしろ快適である。
「はじめて見たわ、悪霊達があわてて逃げ出すところ」愉快そうにフカガワがアイスを食べる。
「でもそれじゃ、加藤の力は溜まらないのよ」
我輩の力の元である瘴気を溜めるにも行く先、行く先勝手に浄化されていくので力が溜めようもない。
「まず弱くなることね、このままだと燃費も悪いし」
ノエルは我輩にそう命じる。
「うむ、それはまずやらなければならないことだろうな」
確かに、今の我輩は必要な瘴気に対して存在そのものを維持するのに燃費が悪すぎる、この世界でいえばいくら省エネ運転を心がけてもジェット機で道路を走っているようなものである。
「漏れ出す妖気を抑えるのでも相当なエネルギー使っていますよね」
「ああ、だからこんなに妖気が溢れているんだぁ」
感心したようにフカガワが頷いた。
「そうなのよ!ハルナちゃん!おかげで護符が勝手に焼けちゃって大変なのよ」
「えーそれ大変、ミズモちゃんもそれで加藤さんに近づけないって嘆いていましたよ」
「それカワイソー!!」
我輩なぜか意気投合しているノエルとフカガワ、そして奥にいる水の精霊(ミズモというらしい)を遠い目で見守る。
ミズモは奥の部屋でもじもじと我輩を見ているが…
その姿は、
短い青い髪の毛にブルーのドレス、目は大きく、くりくりとしており、体つきも筋肉質の褐色でどこかの健康的なイメージだ。
おい、キャラが変わっているぞ…
「どう?似合っているでしょ、以前のままだとハルナちゃんとキャラ被るから変えてみたの」
そういう、ノエルも長い髪の毛をポニーテールにまとめている。
フカガワは相変わらず、長い黒髪で顔を隠したままの幽霊スタイルだ。
なぜ、人ではなく精霊の方をイメチェンするのか理解に苦しむが突っ込むのはやめておこう。
女子同士の世界は時々理を超えることがあり、それに異を唱えてはいけないということは身にしみている。
「最低でも悪霊たちが逃げ出さない位になってほしいわね」
うむ擬態というやつか
「弱くなるように特訓よ」
あまり聞いたことのない概念であるが、我輩努力するぞ。
その結果、我輩走らされることになった…
なぜだ?
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
異世界帰りの底辺配信者のオッサンが、超人気配信者の美女達を助けたら、セレブ美女たちから大国の諜報機関まであらゆる人々から追われることになる話
kaizi
ファンタジー
※しばらくは毎日(17時)更新します。
※この小説はカクヨム様、小説家になろう様にも掲載しております。
※カクヨム週間総合ランキング2位、ジャンル別週間ランキング1位獲得
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
異世界帰りのオッサン冒険者。
二見敬三。
彼は異世界で英雄とまで言われた男であるが、数ヶ月前に現実世界に帰還した。
彼が異世界に行っている間に現実世界にも世界中にダンジョンが出現していた。
彼は、現実世界で生きていくために、ダンジョン配信をはじめるも、その配信は見た目が冴えないオッサンということもあり、全くバズらない。
そんなある日、超人気配信者のS級冒険者パーティを助けたことから、彼の生活は一変する。
S級冒険者の美女たちから迫られて、さらには大国の諜報機関まで彼の存在を危険視する始末……。
オッサンが無自覚に世界中を大騒ぎさせる!?
俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない
亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。
不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。
そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。
帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。
そして邂逅する謎の組織。
萌の物語が始まる。
貞操逆転世界に無職20歳男で転生したので自由に生きます!
やまいし
ファンタジー
自分が書きたいことを詰めこみました。掲示板あり
目覚めると20歳無職だった主人公。
転生したのは男女の貞操観念が逆転&男女比が1:100の可笑しな世界だった。
”好きなことをしよう”と思ったは良いものの無一文。
これではまともな生活ができない。
――そうだ!えちえち自撮りでお金を稼ごう!
こうして彼の転生生活が幕を開けた。
転生前のチュートリアルで異世界最強になりました。 準備し過ぎて第二の人生はイージーモードです!
小川悟
ファンタジー
いじめやパワハラなどの理不尽な人生から、現実逃避するように寝る間を惜しんでゲーム三昧に明け暮れた33歳の男がある日死んでしまう。
しかし異世界転生の候補に選ばれたが、チートはくれないと転生の案内女性に言われる。
チートの代わりに異世界転生の為の研修施設で3ヶ月の研修が受けられるという。
研修施設はスキルの取得が比較的簡単に取得できると言われるが、3ヶ月という短期間で何が出来るのか……。
ボーナススキルで鑑定とアイテムボックスを貰い、適性の設定を始めると時間がないと、研修施設に放り込まれてしまう。
新たな人生を生き残るため、3ヶ月必死に研修施設で訓練に明け暮れる。
しかし3ヶ月を過ぎても、1年が過ぎても、10年過ぎても転生されない。
もしかしてゲームやりすぎで死んだ為の無間地獄かもと不安になりながらも、必死に訓練に励んでいた。
実は案内女性の手違いで、転生手続きがされていないとは思いもしなかった。
結局、研修が15年過ぎた頃、不意に転生の案内が来る。
すでにエンシェントドラゴンを倒すほどのチート野郎になっていた男は、異世界を普通に楽しむことに全力を尽くす。
主人公は優柔不断で出て来るキャラは問題児が多いです。
総受けルート確定のBLゲーの主人公に転生してしまったんだけど、ここからソロエンドを迎えるにはどうすればいい?
寺一(テライチ)
BL
──妹よ。にいちゃんは、これから五人の男に抱かれるかもしれません。
ユズイはシスコン気味なことを除けばごくふつうの男子高校生。
ある日、熱をだした妹にかわって彼女が予約したゲームを店まで取りにいくことに。
その帰り道、ユズイは階段から足を踏みはずして命を落としてしまう。
そこに現れた女神さまは「あなたはこんなにはやく死ぬはずではなかった、お詫びに好きな条件で転生させてあげます」と言う。
それに「チート転生がしてみたい」と答えるユズイ。
女神さまは喜んで願いを叶えてくれた……ただしBLゲーの世界で。
BLゲーでのチート。それはとにかく攻略対象の好感度がバグレベルで上がっていくということ。
このままではなにもしなくても総受けルートが確定してしまう!
男にモテても仕方ないとユズイはソロエンドを目指すが、チートを望んだ代償は大きくて……!?
溺愛&執着されまくりの学園ラブコメです。
テンプレな異世界を楽しんでね♪~元おっさんの異世界生活~【加筆修正版】
永倉伊織
ファンタジー
神の力によって異世界に転生した長倉真八(39歳)、転生した世界は彼のよく知る「異世界小説」のような世界だった。
転生した彼の身体は20歳の若者になったが、精神は何故か39歳のおっさんのままだった。
こうして元おっさんとして第2の人生を歩む事になった彼は異世界小説でよくある展開、いわゆるテンプレな出来事に巻き込まれながらも、出逢いや別れ、時には仲間とゆる~い冒険の旅に出たり
授かった能力を使いつつも普通に生きていこうとする、おっさんの物語である。
◇ ◇ ◇
本作は主人公が異世界で「生活」していく事がメインのお話しなので、派手な出来事は起こりません。
序盤は1話あたりの文字数が少なめですが
全体的には1話2000文字前後でサクッと読める内容を目指してます。
2年ぶりに家を出たら異世界に飛ばされた件
後藤蓮
ファンタジー
生まれてから12年間、東京にすんでいた如月零は中学に上がってすぐに、親の転勤で北海道の中高一貫高に学校に転入した。
転入してから直ぐにその学校でいじめられていた一人の女の子を助けた零は、次のいじめのターゲットにされ、やがて引きこもってしまう。
それから2年が過ぎ、零はいじめっ子に復讐をするため学校に行くことを決断する。久しぶりに家を出る決断をして家を出たまでは良かったが、学校にたどり着く前に零は突如謎の光に包まれてしまい気づいた時には森の中に転移していた。
これから零はどうなってしまうのか........。
お気に入り・感想等よろしくお願いします!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる