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 第三章 殺人事件について

ホラーから素朴な疑問へ

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ようやく、フカガワから解放されたのは2時間後だった。
 独自の霊的見解につき合わされ、我輩とノエルはヘロヘロになっていた。
「ね、ねえ、どう思った」ノエルの美しい黒髪はほつれ、目元にはくまが見れる。
「も、もう、あんまり聞きたくない話だったな…」
 我輩も疲労で倒れそうである。
 なんせ、幽霊は見えない波動の一種だとか、霊的波動をある程度集めると実体化する、それを悪魔という、とか、前世と今世は時空のゆがみによりパラレルワードとして存在しているとか、
 我輩から言えば、「知るか!そんなもの」と言いたいことを延々と途切れなく、まくしたてるように聞かされるのである。
 フカガワの持論では我輩達、魔王は人が無意識にある性的願望が膨大化し屈折した結果、無意識の次元(五次元)で集団的無意識で統合した、象徴のようなものであるという。
 まったく意味がわからない。
 だが、要約すると、「そこにいる幽霊が毒を盛った」ということらしい。

 うむ、却下

 ここでわかったのは、勇者は我輩を、ハナヤマはオオクマ夫婦を、フカガワは幽霊(精霊)を、それぞれを犯人としたが、要するにヒトは自分が知らないものは基本悪とみなす性質があるということだ。
 偏見を正論でコーティングして披露する姿は滑稽で味わい深くはあるが、今はそれに付き合う気力はない。
 
 ようやく解放された安堵で、階段で戻る際に、舞殿がいた。
 舞殿は我輩を確認しもじもじと何か言いたそうである。
「どうした?」
「加藤さんって魔王なの?」
 一瞬どう言おうか迷ったが、舞殿の素直な表情に対して嘘を着くのは良くないと判断する。
「うむ、転生する前は元魔王だ。」
「なんとなく変わっているなぁーって思ったけどそうなんだね。」
 舞殿は納得したようだった。
 素直にそのまま受け止めるその姿勢に、我輩、敬意を抱くぞ。
「あの、死んだ人も魔王さんの仲間」
「元であるが、おそらく間違いない」
しばらく舞殿は考えてから
 我輩に問いかける
「魔王さんの仲間って心臓ってあるの?心臓が止まったら同じように死ぬの?」

 あっ?

 我輩、息が止まった。

 そうか、そうだ。

 舞殿はこう言っているのだ。

 

 我輩も先入観があった、我輩が人間に転生し、その他の魔族や勇者達も人間に転生していた。
 だから、海王も人間に転生しているに違いないと、

 
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