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 第三章 殺人事件について

謎の意図と謎の社会常識

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「俺達だってこんなことになるなんて思わなかったんだ」
「普通、魔王を滅ぼすことができるならって思うでしょう」
 アラニールとエリザベスが自棄になったのかいきなり強気になる。
 
 我輩がいうのも何だが、普通、魔族の言うことを聞くか?
 魔王を滅ぼすために世界を滅ぼそうとする行為は暴走の範囲である。

「まあ、過ぎたことを言ってもしょうがない、海王や冥王の望みどおり混沌の欠片が発動した結果はこのとおりだ。予想された結果かどうかはわからぬが、少なくとも我輩の力は弱体化された。さて、我輩を滅ぼしたいのならなぜこんな風にまどろっこしいまねをする?」
「それは俺達もわからない、第一こんなヘンテコナ結果になると夢にも思えないだろう?」
「まるでパルプ●テね」
 ノエルが意味不明な言葉を発したがとりあえず無視する。雰囲気からおそらくゲーム語だろう。
「それに私達も気づいたらこんな姿になっていてあれから冥王も海王も会えていないわ。」
「今回の事件は俺達関係者を一掃するのが目的だと睨んでいたんだ。」
「それにしては稚拙すぎるし意図が謎すぎるぞ」
「確かに、今回の事件は目的がわからないわ」
 再び振り出しに戻った。

 その夜の夕食はさらに重々しい雰囲気だった。

 無理もない隣の部屋に死体が二体もあり、下手すると殺人鬼までいるような空間で楽しく食事をするものがいたらそいつは確実にどうかしている。

 舞殿も食欲がないらしく、スープを飲むことなく何度も小さくかき混ぜていていた。

 その夜はできるだけ、皆が別々に行動しないように部屋の真ん中で眠った。
 
 皆がそれに賛同しそのまま布団を敷き始める。

「不思議だわ」ぽつんとノエルが呟いた。
 何がだ?
「こんな時、『絶対皆では眠らないわ』とか『殺人鬼と一緒かも知れないのに信用できない』とかで必ず部屋にこもる人がいるはずなのに、みんな聞き分けがいいわね」
 そりゃ、そうだ
 ノエルの横で聞いていたハナヤマとマエダが鼻で笑う。
「この状況で一人で部屋にこもったら、死亡フラグが立つだろ、雪山で殺人事件が起こったら、単独行動は避ける、これは社会常識だろ!」

 なるほどこの世界の社会常識は突発的な事象にまで常識を当てはめているのか

 あまりの意味のない習慣に我輩少し感動したぞ
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