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 第三章 殺人事件について

舞と将棋と魔王観

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 慌てて舞殿のところへ向かうと、舞殿はサチの膝で眠っていた。
「さすがに少し疲れたようです」
 うむ、それはそうだろう、10歳の年齢には衝撃的なことが多すぎた、隣の50歳のおっさんでも寝込むぐらいの出来事だ。
「まあ、無理をせず休ませろ」
 そう告げて我輩近くで休む。
 舞殿が狙われたらたまらん。
「マイちゃんには優しいんですね?」ノエルがくすっと笑う。

 やさしい?

言われたことのない言語と概念に我輩首を傾げる。

「何かマイちゃんには特別扱いしているみたいじゃないですか」
「うむ、舞殿は特別だからな」
「なんだ、あの女の子に特殊能力があるのか?」
「それはものすごい能力が眠っているぞ」
「魔王が復活できる欠片とか?」エリザベスがじっとこっちを見る。
「そんなものあってどうするんだ?」
「「「えっ?」」」
 アラニールとエリザベス、ノエルまでもが驚く。
 何を驚いているかは理解できんがな
「だって魔王にとって復活することが一番重要なことじゃないですか?」ノエルが問う。
何を興奮しているのか、声が大きい。
「静かに!」
 我輩が睨むと三人がしゅんとする。
「少しは常識を考えろ、まったく」
「まさかコイツに言われるとは…」複雑な顔でアラニールがつぶやく。
 これこれ聞こえているぞ

 あまり騒がしいようなので少し離れた場所で話を続ける。
 話を聞かれて変人扱いされるのも嫌だからな。

「誤解ないように言っておくがな、我輩にとって重要なことは舞殿に将棋で勝つことだ。舞殿の特殊な才能は将棋だ、あれほどの才能を摘むわけにはいかんだろ」
「理解できない、将棋に勝ったらどうなるんだ?力が取り戻せるのか?」
「そんなわけあるか、うれしいからに決まっているだろ。」
「うれしい?」
「それだけ?」アラニールが呆然とする。
「それで十分だろうが?」
 何を言っているのかわからんが、何年だろうが何万年だろうが、うれしいやら楽しいことをやるのが一番である。

 この世でもっともやっかいなのは「退屈」である。
 何万年も生きる魔族がかかる大きな弊害は『退屈』になることである、退屈になれば自暴自棄になりやがて世界そのものを滅ぼしたくなる。
 狂王もそれに掛かってしまったのだ、海王はそれに比べまだ我輩暗殺するだけ十分健全だ。
 別次元の魔王もそれにかかり、世界を滅ぼしたあとに途方にくれているという伝承もあるくらいである。
 我輩、将棋にはまってしまった、あれは数千年クラスで研究できるスケールがある、何回転生しても退屈せずにすむ。
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