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 第三章 殺人事件について

なぜか、初対面同士で食事をする

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食事は豪華だった。
 鶏肉をハーブで焼いたものや、山菜などを取り入れたサラダ、自家製のポタージュなどなかなか美味なものばかりだ。
 鶏肉はあえて焦げ目をつけ、香ばしくしたあとに、少し濃い目のソースをつけている。

 我輩、ニンゲンに転生し、食べのものの味を知ったため料理も凝り出したのである。
 なので自然と食べ物の調理法も学んでいるのだ。
 
 生き物の負も糧ではあるが、なんせ概念なため舌の味覚ではなく、感覚を吸収しているようなものである。
 味覚、嗅覚、触覚、視覚、聴覚が織り成す複数の刺激のバリエーションはかなり興味深い。

 料理はうまい、うまいであるが、

 雰囲気は微妙である。

 理由はおそらく二つある。

 一つは先ほどタバコを要求していたクリタ婦人の夫がまだ部屋から出てこず、クリタ婦人がぴりぴりしていること。
 どうやら夫婦喧嘩をしたらしく、その結果、夫がすねて部屋から出てこないらしい。
「あの人、最近人が変わったようになって、いつもは部屋にこもってパソコンばかりしている人だったのに、いきなり海の男みたいに海好きになって、今回なんて夫婦で話し合って決めたのに、山なんて最悪だって言い出すし…きっと別の女ができたのよ、絶対そうだわ、」
 おいおいと泣き出すのを困ったようになだめるサチ。
 我輩、そういうのはよくわからん。
 
 そう思いながら、丁寧に濾されている、野菜のポタージュを啜る。
 
 向かいからの強い視線を感じながら。

 もう一つの理由は
 目の前にいる学生グループの二人が勇者とそのパーティの一人ということだ。
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