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 第二章 心霊現象について

サチの悩み

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「数日前にね、舞は将棋の大会だったの、小さな地区でやっているような将棋大会」
「うむ、でっ舞は当然優勝しただろう」
 サチは少し微妙な表情をつくりううんと首を横に振った。

「予選落ちよ」

 なに
 我輩これに驚く、あのレベルで予選落ちだと

 確かに舞の将棋が完成しているとは思っていない、いくつか荒いと感じる部分はあるが、それ以上に巨大な可能性に満ちている指してである。
 それにしても我輩が角を抜かれても勝てないあの舞よりもより強いやつがまだゴロゴロいるのか

 「あり得ない」

 「舞は将棋では二段で強いけど、大会ではもっと強い子がもっとたくさんいるよ」

 なんということだ、我輩衝撃で眩暈がした。
 ヒトがそこまで将棋の理を深く研究していたとは
 いやしかしいくらなんでも、

 我輩の衝撃を置いてサチは話を続ける。

 「でその後は自由に対局していたんだけど、そのときに変な親子がいてね」
 サチはすごく苦しそうな顔をした。
 「級位者で特別強いってわけではないけど、対局中ずっと喋っているの」
 うむ喋るねえ
 よくわからんが異常さが伝わらない。
 サチもこくんと頷き
「まあ、対局中おしゃべりの多い子はたくさんいるけど、この子は特殊で相手を脅している感じなの?」
 たとえばね、とサチは言葉を区切り
「この手を打つとお前弱くなる、とか時間をかけるな、とか簡単なことだろ早く打てとかいちいち挑発したり脅迫しためいた言葉を喋るの、でも相手の顔は一切見ないでぼそぼそって、まあ大人たちはたまにいるっていうけどね」
「盤外戦法とかいうやつか」
「ああ、それそれ、カトウ君よく知っているね」
 よくできましたと言わんばかりにサチが声を上げる。

 うむ、こやつ時々我輩を年下のように扱ってくるな、

 「まあ、それはさておき」
 サチが話を続ける。
「あんまりしつこいから私その子に軽く注意したの、そしたらその子のお母さんがすごい剣幕で突っかかってきてね、息子の集中を邪魔するなってね」
「あーわかりやすい、大概、ひとを平気で不愉快にさせるやつって自分がされたら過剰に反応しちゃうんだよね、耐久性がないってやつ」
 シモダが勝手に入り込む。
 確かにコイツも自分の話に割り込まれると露骨に不機嫌になる。なるほどシモダの言う通だ。
「すぐに謝ったけど、全然引かなくて最後に呪われているって言い出し始めて、怖かったので逃げ出したんだけど、それから合うたびにあなた達は呪われているから叙霊しましょうって言い出し始めて」
 いきなり話が飛んだな。我輩の世界では呪術は特殊なものだったが、ここでは些細な言い争いでいきなり呪いについて発展するものなのか?
「いきなり呪いって絶対危ないやつだよ、無視した方がいいよ、無視、無視」
 シモダがちょび髭をしかめて首を振る。
「私もそのつもりで相手にしなかったんですけど、将棋の練習場で会うたびにしつこくって、話だけども聞きなさいってすごい剣幕で、わたし不安になって」
 まさか、
「行ったのか?」
 こくんとサチが頷いた。
「えー行っちゃだめでしょ、危ない、危ない」
 シモダの声が高くなった。
 どうしたシモダ、キャラが変わっているぞ。
 我輩少し怖くなってきた。
「でもね中には入らなかったの、駅から少し離れた古い家だったんだけど、見た瞬間気持ち悪くなって」
 「気持ち悪いってどんな家だったの?」
 「とっても古い家で庭も手入れがされてなくて、何年も放置されたような黒い液体のペットボトルがあったり、ひび割れた子どもの人形があったり、それよりも何か、卵の腐った匂いとか色んな腐敗臭が混じったような重い空気がまとわりついているの」

 瘴気しょうき

 瘴気しょうきとは人が死んだり、苦悩や憎悪など負の感情が溜まり膿んだ時に発生するもので我輩たち魔族の力の源である。しかし瘴気などが自然発生するにはそれなりに濃厚に負を積みかさないと生まれない。

 たとえばナカニシのアジトでいえば数十人の人が殺されたりする場所でないと発生しないものである。

「それで怖くなって逃げ出したんだけど、そのとき後ろですごい声がして振り返ったら中年の女性がすごい形相でこちらを睨んでいて、そして何か唸っていたの」
 うむ、話の筋が見えてきた。
「それから自宅で何かがあったということか?」
 我輩の言葉にサチは頷き

「ずっと変な匂いがして、誰かに見られている気がするの」
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