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 第二章 心霊現象について

魔王は幽霊を信じますか

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幽霊を信じますか?

そう問われたとき我輩は返答に困った。

 幽霊とはおそらくゴースト(人型の死霊)を指していると思うが、霊といってもたくさんある、精霊や死者の霊、肉の縛りを外した魔族の一形態など魂のみの具現としてとらえてしまったら幾つもの参考例があげられる。
 我輩も厳密に言えば魂を他の肉体に融合した亜形態の霊の定義になる。
 魔を統治する我輩に霊などを信じるかといえば当たり前だろと答えるしかない、

 だが、その質問をするということは?

 「サチは幽霊を信じていないのか?」

 まあ、私は見えないほうなので、そうサチが申し訳なさそうに答える。

 なぜ、そんなに申し訳なさそうな態度なのかわからないが、サチはどうやら相手をおこらせないようにいつも気を使っているらしかった。
 難儀な性格だな。
 自己主張の塊しか周囲にいなかった我輩にとってはサチの態度は不思議でならない。

「幽霊なんているわけないでしょ」
 横で聞いていた、シモダがちゃちゃを入れてくる。

 こいつは…
 人懐こいといえば聞こえが良いが、いろんなことに首をつっこむ癖があり余計なことに巻き込まれる性質があった。

 まったく、以前の会社からシャチョウであったが変なやつをフクシャチョウにして事件に巻き込まれたことに懲りていないのか、新しいカイシャを立ち上げても、どう見ても利益の少ないシゴトやボウリョクダンと呼ばれる無法者のような人物と意気投合したりと余計なことを呼び寄せてくる。
 そのたびに我輩、やんわりとシゴトを断ったり、ボウリョクダンには真摯なお願いででお帰りをしてもらったりと裏から色々手を回している。

 我輩いわゆる有能な秘書である。
 
 そんな我輩の心中を無視してシモダは得意の持論を話し出す。
 「幽霊なんてのは人の脳がつくったマボロシだよ。気にするだけ無駄だよ無~駄」


 魔王の横でよく言えたぞ、シモダよ

 この世界の人間は自分の見えないものを信じないらしい。
 自分達の目に精霊や霊を見る力を失っているのを棚にあげている様子は滑稽である。

 我輩はそんな人間を擁護する気にもならないので放置することにしている。

「でも舞が巻き込まれそうで心配で」

 なに、舞が巻き込まれる。

 それは聞き捨てならない
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