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…just a bit digress.6
しおりを挟むしかし斎藤は火のついた煙草を吸い、紫煙を潜らせるだけで何も話そうとしない。
これじゃあ晒し者だ、と思いながら拳を握りしめた快斗は思いきって顔を上げると、
「話がこれだけなら、失礼します」
と言って、斎藤に頭を下げた。
「ん」
固い表情の快斗に対し、斎藤が放った相槌は…ただ、それだけだった。
何もない空間へ視線を向け、その間で潜る紫煙を見つめるだけで、斎藤は何一つ、快斗へ向ける弁護を口にすることがなかった。
(それだけかよ)
本気でこれ以上話をする気のない斎藤の態度に多少の蟠りを感じつつ、踵を返し喫煙室を出た。
「…んだよ」
これじゃあ何のために呼ばれたのか、分からない。
ただ単に事実を確かめたかったのなら、仕事が終わってからでも良かったはずだ。
――快斗が課長補佐の役名を拝してから、斎藤とはプライベートの時間も多く共有するようになっていることは、周知の事実だ。
だから、快斗が斎藤のマンションへ足繁く通っていることを不審がられたりしないのだから、わざわざ仕事中に問い糺した理由を、ちゃんと示して…欲しかった。
就業を待てずに声をかけたのだ、もっと具体的な言葉で詰るなり、怒るべきだと思う。
(いや、違うな)
思う気持ちとは裏腹に、自分を省みた快斗の胸に、ふとそんな言葉が過る。
元々快斗と斎藤の関係は、そんなウエットなものではないのだから、『怒っていない』と言った斎藤の言葉は、額面通り受けとるべきなのかもしれない。
…大体にして、だ。
斎藤と肌を重ね合わせるきっかけは、快斗が下らない疑問を口にしたからだった。
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