銃器が弱すぎる世界に転生したけど銃知識と現代戦術知識で成り上がる

佐々牙嵯峨兎

文字の大きさ
65 / 81
2章 邪月の都ルナ

59.完全勝利

しおりを挟む
 ヴィンセントが催涙手榴弾(中身はスパイス)を使って兵士達を止まっている間に、二手に分かれて逃げる。
 俺とアリスはアリオンが乗っている馬車に、ヴィンセントとカイン様はお嬢様がいる山頂に向かっている。
 馬車に向かうのは奥様に着けられている隷属首輪スレイブ・ネックレスを外すためで、ヴィンセント達が山頂に向かうのはお嬢様を撤退させるためだ。
 兵士達が恐怖で動けないとはいえ、弾切れになってしまうと一斉に進撃するかもしれない。そのため首輪を外した合図が来たら、少しでもこの場から去るために撤退の準備をさせている。
 少し走っているとアリオンが手を振って呼び掛ける。

「アレス様―! ご無事でしたかー!」

 俺は馬車に着くと奥様を荷台に座らせながらアリオンに状況を伝える。
 アリオンは状況を聞くと頭を深く下げて謝る。

「申し訳おりません! 敵が近くにいるかもしれないのにこんな大声で呼ぶなんて!」
「いや、フォルトさん達が仕掛けたトラップとお嬢様の狙撃銃スナイパーライフルがあるから大丈夫だろ?」

 そう言うとアリオンは何かピンとした表情になる。

「そう言えば敵側の兵士が急に撤退するようになって、フォルトさん達も撤退しましたわ」

 アリオンの報告を聞いた奥様はホッと胸を撫で下ろす。奥様はフォルトさん達にしばらく会って無いから、心配だっただろう。
 ほっこりとした空気が流れるが、銃声が森に響いてハッと我にかえる。
 狙撃銃スナイパーライフルの弾丸を逃れるのは無理だが、仮に近くにこの会話を聞いた者がいたら大変だ。俺は急いで従者台に乗って馬を走らせる。
 アリオンが首輪を外す準備をしていると、奥様がアリオンに興味を持って質問をする。

「あら、もしかしてあなたはアリオン・ミルフィオリかしら?」
「ハイ、現商人会会長アリオン・ミルフィオリと申します。今はアレス様の一番弟子としております」
「マァ……もしかしたらアリスちゃんと同じ恋人かしら?」
「イ、イエ!? それに付ては滅相もありません!」

 アリオンは恥ずかしくも少し嬉しそうに指をくねくねとする。あの、早く解除の準備を終えてくれませんかね?
 俺少し呆れているとアリスは頬を膨らまして怒る。

「違います! 彼女はアレスの事を好きに言っていたの!」
「ウゥ……本当に誠に申し訳ございません。このアリオン、しっかりと首輪を外して見ます!」

 アリオンは胸を張って豪語するが、ただと付け加えて言う。

「この首輪を外すには30分もかかりますわ」

 魔法具をよく扱うプロでも30分かかるなんて。素人だったらそれ以上の時間か、もしくは外す事すら難しいだろう。
 そう思いながら進んでいるとガチャリと何かを外された音が鳴り、振り向くとアリオンが奥様に着けれた首を外していた。
 俺はアリオンを褒める。

「悪いな、俺だったら外せなかった」
「イエ、アレス様の頼みなら何でも来いですわ」

 彼女はそう誇らしげに答えると、外された首輪を遠くに投げ捨てる。あとは俺達に協力してくれる近くの貴族の屋敷に向かうだけだ。
 俺は少しくらい安心しつつ貴族の屋敷に向かうため、手綱を強く握って馬を走らせる。
 その後は首輪の探知をおってきたウォーロックさん達が負けたのを知ったのは、アリオンが首輪を外してから30分経っていた。




▲▽▲▽▲▽




 俺達が屋敷についてしばらく居間で待つ。すると扉を叩く音がして、アリスが開けるとそこにはヴィンセントとカイン様、そしてお嬢様がいた。
 お嬢様は手が震えていてよほど奥様が無事だと安堵しているだろう。奥様はお嬢様の気持ちを察して抱き寄せる。

「レノン……あなたが無事でよかったわ」
「ウゥ……お母さん!」
「良かったな、レノン……」

 お嬢様はうれし泣きをしながら奥様に抱き着く。カイン様はお嬢様の頭を優しくなでる。
 カイン様やお嬢様は奥様の安否をとても心配していた。その家族愛に俺はともかく、ヴィンセントやアリスも心から喜んでいた。
 アリオンは気まずそうに手を挙げる。

「とても喜ばしいですけれども、この後はどうなさりますの?」

 奥様以外「アッ」と呟いて思い出す。そう言えばあいつ等も奥様を取り返すどころか、お嬢様を捕まえようとこっちに来るはずだ。
 どんな手で太陽しようかと考えていると、奥様が手を挙げて提案する。

「だったら手打ちにしたらどうかしら?」
「「「……ハイ?」」」

 俺とアリオンとヴィンセントは奥様が言っている事に分からずに首を傾げる。アリスやお嬢様とカイン様は少し苦い顔をする。
 一体どういう事なのか聞くと、奥様はこれまでの騒動の中で旦那様を探すのは難しい。そのためあいつ等と一時的な手打ちをして、旦那様を見つけて後処理をするだけだ。フォルトさん達に会うのも手打ちが終えてからだ。
 確かに敵に追われながら旦那様を探すのは難しいな。さすが戦闘乙女の名はすたれて無いな。
 そう感心しながら思うとお嬢様が奥様に質問する。

「お母様、お父様の居場所の目所はまだついていますか?」
「それが……あの二人は祖のことを危惧しているか。私や夫が知っている奴隷商とは別のを使って、どこかの大陸に搬送させたらしいわ。力がない母でごめんなさい」

 お嬢様はその言葉を聞いて否定する。

「そんなの事はありません! でもお父様は無事でしょうか?」
「大丈夫よ。あの人なら嵐纏王獣ワイルドハント・グリフォンが数体来ても無傷で倒せるわ」

 奥様はそう呑気に言うが嵐纏王獣ワイルドハント・グリフォンは+Aで、数体来たら一国分の兵力が必要だがそれを無傷で倒すって……その状況が見えるほどこの世界のルールに感心しつつも呆れてしまう。
 アリスやヴィンセントとこっそりと「一国分の不浄人形ドールズを無傷で……一体どんな人かメッチャ気になってきた」「その様子が想像出来ちゃったよ……」とささやいていた。
 こらこら、いくら筋肉モンスターだからってさすがにそれは無いだろ? とはいえど俺も想像したけど。
 その後は久々に会えたことだから家族一緒にお風呂に入る事になった。カイン様は最初断っていたが、お嬢様が頼んで渋々承諾した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

天城の夢幻ダンジョン攻略と無限の神空間で超絶レベリング ~ガチャスキルに目覚めた俺は無職だけどダンジョンを攻略してトップの探索士を目指す~

仮実谷 望
ファンタジー
無職になってしまった摩廻天重郎はある日ガチャを引くスキルを得る。ガチャで得た鍛錬の神鍵で無限の神空間にたどり着く。そこで色々な異世界の住人との出会いもある。神空間で色んなユニットを配置できるようになり自分自身だけレベリングが可能になりどんどんレベルが上がっていく。可愛いヒロイン多数登場予定です。ガチャから出てくるユニットも可愛くて強いキャラが出てくる中、300年の時を生きる謎の少女が暗躍していた。ダンジョンが一般に知られるようになり動き出す政府の動向を観察しつつ我先へとダンジョンに入りたいと願う一般人たちを跳ね除けて天重郎はトップの探索士を目指して生きていく。次々と美少女の探索士が天重郎のところに集まってくる。天重郎は最強の探索士を目指していく。他の雑草のような奴らを跳ね除けて天重郎は最強への道を歩み続ける。

荷物持ちの代名詞『カード収納スキル』を極めたら異世界最強の運び屋になりました

夢幻の翼
ファンタジー
使い勝手が悪くて虐げられている『カード収納スキル』をメインスキルとして与えられた転生系主人公の成り上がり物語になります。 スキルがレベルアップする度に出来る事が増えて周りを巻き込んで世の中の発展に貢献します。 ハーレムものではなく正ヒロインとのイチャラブシーンもあるかも。 驚きあり感動ありニヤニヤありの物語、是非一読ください。 ※カクヨムで先行配信をしています。

異世界でただ美しく! 男女比1対5の世界で美形になる事を望んだ俺は戦力外で追い出されましたので自由に生きます!

石のやっさん
ファンタジー
主人公、理人は異世界召喚で異世界ルミナスにクラスごと召喚された。 クラスの人間が、優秀なジョブやスキルを持つなか、理人は『侍』という他に比べてかなり落ちるジョブだった為、魔族討伐メンバーから外され…追い出される事に! だが、これは仕方が無い事だった…彼は戦う事よりも「美しくなる事」を望んでしまったからだ。 だが、ルミナスは男女比1対5の世界なので…まぁ色々起きます。 ※私の書く男女比物が読みたい…そのリクエストに応えてみましたが、中編で終わる可能性は高いです。

第2の人生は、『男』が希少種の世界で

赤金武蔵
ファンタジー
 日本の高校生、久我一颯(くがいぶき)は、気が付くと見知らぬ土地で、女山賊たちから貞操を奪われる危機に直面していた。  あと一歩で襲われかけた、その時。白銀の鎧を纏った女騎士・ミューレンに救われる。  ミューレンの話から、この世界は地球ではなく、別の世界だということを知る。  しかも──『男』という存在が、超希少な世界だった。

処理中です...