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2章 邪月の都ルナ

54.突入

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 俺とアリスは奥様が幽閉されている塔に向かうため走っている。今はヴィンセント達が敵を誘導しているけど、木の頂上で見た緑髪の魔術師が異形の怪物に近くなっている。
 何分間も耐えれずにヴィンセント達がやられたら終わりだ。そのため早くいかなければいけない思いと、早く助け出せなければいけない焦りが心に交じって判断を鈍くさせる。
 しかし焦ったり慌てたりしたらそれこそ作戦が失敗してしまう。
 そのため俺は作戦の詳しい内容を振り替えて心を落ち着かせる。
 最初に魔像ゴーレム機動鎧リビングアーマーを率いるヴィンセント達が緑髪の魔術師を陽動し、敵の警備が薄くなっている今の内に俺とアリスが突入する。奥様を塔に連れ出したらそのまま目的地に向かって走るだけだ。
 それだけを見て簡単そうだ。だがこの世界には魔法具と呼ばれるアイテムがあって、生産しやすさは五つの準に定めている。
 ・普通級ノーマル……一般的なアイテムの総称の事で、普通の魔術師でも作り出せる。(例え鉤爪の縄フックロープ輝く灯篭ライト・ランタン、魔術書など)
 ・希少級レア……希少なアイテムの総称の事で、中級魔術師で作り出せる。(例え魔導手袋マジックグローブ知恵の杖ワンド、魔導書など)
 ・特異級ユニーク……特異的なアイテムや武器の事で、上級魔術師が魔法を駆使して作り出せる。(例え釈帝杖インドラ搾血剣クドラク命の雫ソーマ命草酒ハオマなど)
 ・伝説級レジェンド……ダンジョンにしか手に入れない武器の事で、六式魔術師達が生まれる前から作り出した代物。(例え穿つ碧槍ゲイ・ボルグ赫雷魔剣クラレント屈強の剛剣デュランダルなど)
 ・神話級ミソロジー……神殿にしか手に入れない武器の事で、人が生まれる前に三原神が作り出した久遠の代物。(例え雷霆ゼウス全知全能の魔術書オーディーン生誕の長刀イザナギなど)
 その中で希少級レア隷属首輪スレイブ・ネックレスには探知機能だけではなく、使用者からも一キロ離れると息の根を止める中級呪怨魔法〈絶命ダイ〉を使われても作戦失敗だ。
 お嬢様が「付けなくていい」と言われて外したままだが、まさかそんな恐ろしい効果があるなんて思いもしなかった。
 だからアリオンにもしものための同じ希少級レア魔封じの輪マジック・ロック・リングを用意して、これを奥様に着けられている隷属首輪スレイブ・ネックレスに着けて、探知機能と絶命ダイを封じてこの塔から脱出して救出成功……と言いたいところだが。
 魔封じの輪マジック・ロック・リングの効果は一日で、そのままにしたら絶命が発動して奥様の命が潰えてしまう。そのためアリオンは逃走するための馬車の近くに待機させて、隷属首輪スレイブ・ネックレスを完全に解除させる。そうすれば救出成功だ。
 おっと、そろそろ塔に着きそうだし目の前に集中しないとな。
 俺とアリスが所持する弾倉マガジンは俺のだと内ポケットと腰の分を合わせて、アリスは腰につけているため六個だ。
 前世の知識だとどうやら軍隊兵士が突撃銃アサルトライフルの予備弾倉マガジンを持っていく数は「銃についている弾倉マガジン一つ」と「予備弾倉マガジン六つ」程度らしい。
 俺とアリスには銃についている弾倉一つ、予備六つで合計七つになる。
 単純計算でこの場いる連中皆殺しに出来る、だが奥様を救うためであってこの場にいる連中皆殺し何て毛頭無い。
 無駄な戦闘を避けるために準備をしてきた、最初に隠蔽ザ・ハイティングで塔に近づき、懐から鉤爪の縄フックロープを取り出して窓の方に向けて投げる。
 鉤爪の縄フックロープは魔力を込めて武器にもなる、だがそのようにすれば居場所がバレてしまうため、侵入用として使う。
 中に入ると一見ただのレンガで出来ているが、よく見ると無盾ザ・シールドをこれでもかと張り巡らしていた。外側にもあったためこれはかなり堅そうだな。
 そう思いながら慎重に進むと扉近くに兵士が二人いて、俺は後ろにいるアリスに手をかざし膝に床づけて、兵士二人の話を盗み聞く。

「ハァ、あの兄弟人使い荒すぎだろ」
「我慢しろよ、この扉の後ろにいる女を見張るだけでかなりもらえるぞ」
「確かにそうだけどよぉ、俺たちの事小間使いか何かと思って無いか? メイドさんに頼めばいいのにさぁ」
「それだけどよ、この屋敷にいるメイドたちはあの兄弟の性処理係として扱っているぞ」
「ウワァ、それだといつ反乱が起きるか分かったもんじゃないな」

 兵士二人は会話に夢中の中、俺とアリスは今の屋敷の状況を聞いてあきれる。
 まさかここにいるメイドさん達があの兄弟の性処理なんてな、もしヴィンセントがここにいたら怒髪天を貫いて突撃するだろう。
 本当にヴィンセントを陽動にさせて良かった。
 俺はそう思いながらアリスの方に向く、アリスは俺の意思を察してこくりと頷く。
 血は繋がっていないが一緒に育ち、様々な困難に会って切磋琢磨した事で、たとえ何も言わなくても阿吽の呼吸で合わせる事ができる。
 俺は扉の方に向いたと同時に突撃する! アリスも続けさまに走り出す。兵士二人は俺とアリスが来たことに驚きているが、俺は即座に〈M4カービン〉を構えて引き金トリガーを引く。
 弾丸を連発に撃つ衝撃に久しく感じつつも、足元にズレぬ様に方に抑えながら撃つ。

「ギャァァァ!」
「おい、大丈夫か?! クソッ!」

 片方の兵士が足を撃たれた兵士を抱えながら詠唱しようとする。

『火の根源よ。今一度――』
冷却波コールドウェーブ!」

 片方の兵士が何かを詠唱していたが、アリスが無詠唱で兵士二人を氷漬けた。
 これ本当に生きているのか? そう思いながらアリスに聞くと、どうやらこれは拘束系で見た目は氷漬けになっているが、数時間経てば元に戻ると聞いて胸を撫で下ろす。
 それだとまるで雪女みたいだから~なんて思っていると、下から叫び声を上げながら階段を上って来る。

『急げ、侵入者だー!』
『早く捕まえて賞金ゲットするぞ!』
『『オォー!』』

 アリスは素早く冷却波コールドウェーブで通路を塞ぐ、さすが王族級《キング》様仕事が早いな。そう思いながら俺はさっき兵士が居た扉の前に立つ。一見すれば鋼鉄の扉を開こうにも時間が掛かるだろう、それなら魔導手袋にある魔力の半分を剛力《ザ・パワー》で筋力を上げ、一気に蹴り飛ばす!
 鋼鉄の扉が容易く吹き飛ばされて轟音が響く中、椅子の上に立たず待っているのは奥様だった。
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