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2章 邪月の都ルナ
51.反撃の準備
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「セイ、ヤァ!」
俺はお嬢様に格闘術を伝授している。
アリオンを弟子にしてから一週間が経つ。
隙を突いて逃げ出せたフォルトさんとシャロンさんは、旦那様の仲間やお礼になった人と協力して反撃しようとしている。
しかしあいつ等も黙ってみる訳も行かず、大量の兵士や傭兵を集めている。
攻め込む日は一週間を含めて一ヶ月後の夜だ。俺やお嬢様とカイン様も参戦するため、それまで戦力を高めたりする必要がある。
だからお嬢様にも格闘術と体力を増強するため、俺の知識とウォーロックさんの教えで訓練をしている。
「お嬢様、そんなむやみに攻撃したら打ち負かされますよ! もっと相手の動きを読んで行動してください!」
「は、ハイ!」
お嬢様はそう言うと、フェイントを混ぜながら俺に近づいてくる。
確かにフェイントを混ぜながら、相手に接近すれば厄介だ。だけど――。
俺はお嬢様の足元を軽く蹴る、するとお嬢様が前のめりに倒れて叫ぶ。
「キャッ!」
お嬢様は前のめりに倒れて立ち上がろうとする。だがさっきのフェイントで疲れているのか、小柄な体を小鹿のように震えて息を荒くしている。
俺は心を鬼にしてお嬢様に向けて罵倒を放つ。
「お嬢様、そんなにあいつ等に負けて悔しくないのですか? この弱虫、愚図、意気地なし!」
「ウ、ウゥ……!」
お嬢様は俺の罵倒を聞いて、あまりにも悔しさに小鹿のように震えつつも、何とか立ち上がって見せる。
よし、アイツらに対する感情を膨らさせて、気持ちを増幅させる事ができたぞ。良心が痛いが、もう少し奮い立たせようと、俺はお嬢様に罵倒する。
「お嬢様、もしまたそのような事をするならば●●●に●●●して●●●に――」
「止めなさい!」
俺が罵倒している時に、後ろから遮るような叫び声と後頭部を殴られたような痛みがして、叫ばなかったが頭を押さえながら悶える。
「ッ~~!!?」
痛みにもだえている時に、お嬢様が心配して寄ってくるが、俺は「だ、大丈夫です」と言って彼女を落ち着かせる。
イッタぁ!? 誰だよ、いきなり後ろから何かを叩きつけるなんて危ないだろ!
そう思いつつ振り向くと、そこにはかなり呆れているカイン様と、青筋をかなり立てているシャロンさんがいた。しかも心なしか背後に鬼神が見える上に、カイン様が冥福を祈っているように見える。
俺はシャロンさんの視線をそらす、だがそらす前に即座にアイアンクローを放ってくる。
シャロンさんの鋭利な爪が頭蓋に刺さり込み、あまりの激痛に叫んでしまう。
「ギャァァァァァァァァ!? シャロンさんストップ、これ以上やったら危ないですからストップ!」
「……」
俺はこれ以上行ったらまずいと思い、シャロンさんにタップを掛ける。しかしシャロンさんは無言のままアイアンクローを行い続ける。
ヤバイ、この人きっとさっきの事を聞いて切れたんだ! このままガチで死んじまう!
後はお嬢様達が落ち着かせて事無き事を得た。アリオンは今起きた事に驚愕していたが、これ以上アイアンクローを食らったら、間違いなく死んでいただろう。
本当に助かった、お嬢様に感謝だな。そう思いつつシャロンさんの話を聞く。
ココにいないフォルトさんは、屋敷から少し離れた場所で戦争の準備をしている、だが本家の兵士に加えて傭兵の大群、そして旦那様と渡り合える緑髪の魔術師、その二つがあっていつ攻めるのかを考えていた。
兵士や傭兵は手榴弾とか突撃銃を使えば何とかなるけど、緑髪の魔術師が旦那様と渡り合うなんて大抵の兵士や騎士だと無理だろう。
俺はその話を聞いて作戦を考える。正面突破は無理だとして、少人数で侵入しても数で圧倒されるかもしれない、だったらフォルトさんとシャロンさん達が騒ぎを起こさせ、そのすきに俺とお嬢様が手薄になった塔に侵入する。
そのことを話すとシャロンさんが顎に手を当てて感心する。
「なるほど……単純そうですが、緑髪の魔術師がこちらに来るようにするのは良いですね」
シャロンさんは感心するが、カイン様が手を挙げて質問する。
「だけど二人で行くってことは、レノンは大丈夫なのか?」
「そちらの方は大丈夫です。お嬢様は特攻ではなくあくまでサポートに徹します」
「それだとあなた一人で行くのですか? いくら銃が強いとは雖も、相手には王族級の魔術師がいるかもしれませんよ?」
シャロンさんがそう言うと俺は思わず「ウッ!」と呟く。
マァ、確かに俺は魔力量が低い奴隷級だし、魔導手袋の魔力量が少なくなってきて、そろそろ補充しなくちゃいけない。
この魔法具は別の魔力を注ぐと暴発を起こしてしまうため、気軽に補充を求めたらいけないし、アリスみたいな王族級を呼んでも同じだ。
そう考えているとアリオンが懇願する。
「でしたらわたくしが相方を務めさせていただきますわ!」
「アリオンが?」
俺はアリオンが言う事に首を傾げる。
確かにアリオンは一応魔力量が王族級だし魔法具の扱いは知っていて、相方にするのは良いだろう。だが彼女には一つの弱点がある。
それは――。
「確かに相方として信頼できるけど……かなりの運動音痴だからダメだろ?」
「へブッ!?」
そう言うと彼女は呻き声と共に吹き出す。
――そう、それは某青ダヌキに出てくるメガネ少年並みの運動音痴だからだ。実際お嬢様の訓練についてこられなかったし。
その代りアリオンは、奥様についてある魔法具を解除させる係にして元気を取り戻す。
だけど俺が単独で行くのは無理に近い、カイン様も相手を陽動させるための武器をそろえているため無理だ。
相方にする条件は三つ。一つ目は銃の扱いを知っている、二つ目は俺と信頼関係を築いていて(できれば知り合いが良い)、三つめは魔力量が最低でも国民級以上が良い。
「「……」」
その条件を聞いたこの場の全員が黙り込む。
マァ、そんなのアリスやヴィンセントが来ない限り――。そう思っている懐かしい声が俺を呼び掛ける。
「アレス!」
「あ、アリスっ!?」
俺は懐かしい嫁がここにいる事に驚く、するとアリスは俺に抱き着く。
どうしてシンにいるどころか、アリオンの屋敷にいる事を知っているのかと聞く。しかしアリスが愛犬みたいにほおずりしている時に、一人の青年がひき剥がす。
青年は呆れながらも、久しぶりそうに話しかける。
「何やってんだよ……って、久しぶりだな、アレス!」
「ヴィンセント!?」
なぜかヴィンセントもいて、俺はもう何がなんやら訳が分からなくなってきた。
少しだけ落ち着くとヴィンセントから説明してくれた。
アリスはヴィンセントが嘘をついたと知って、孤児院に戻ってリーベット先生とヴィンセントに問い詰めたところ、邪月の都ルナにいると知ってヴィンセントを連れて向かっていた。その時に薄紫髪の魔術師っぽい青年が、ここにいると教えて今に至る。
にしてもその青年は一体何者だ? 商人会に属しているなら分ける、けど魔術師だったらどうして知っているんだ?
そう思っていると、アリオンはどこかに隠れようとその場から去ろうとする。しかしアリスは笑みを浮かべながら肩を掴む、なぜか顔は笑っていても目は笑っていなかった。
「ネェ、何で逃げようとするの?」
「ヒィ!」
アリスが質問するとアリオンは脅えた声で叫ぶ。
少しヴィンセントから聞くと、アリオンはアリスが持つ回転式拳銃を譲り受けようとした。しかし彼女は失言してしまい、その結果アリスを怒らせたというわけだ。
なんというか……自業自得だな。そう思うとアリオンはアリスに土下座して大声で謝罪する。
「申し訳ありませんでしたー! わたくしのような不束者があなた方の故事を侮辱するなんて、財やら何やら与えますのでお許しくださーい!」
アリオンは額を煙が出るくらいこすりつけて、見る限りこれはかなりガチだろう。アリスもハトに豆鉄砲を食らったような顔をしている。
アリスは失言の件を許してアリオンは涙を流してホッとする。
そしてアリスとヴィンセントにお嬢様の事や事情をすべて話す、すると二人はあいつ等にかなり切れて全快に協力する。
これで俺が一人で塔に侵入する事はなくなったし、ヴィンセントがきてあれの開発を早める事ができる。
そう思いつつ作戦を書いた紙をシャロンさんに渡し、アリスとヴィンセントを参加してから訓練を再開する。
俺はお嬢様に格闘術を伝授している。
アリオンを弟子にしてから一週間が経つ。
隙を突いて逃げ出せたフォルトさんとシャロンさんは、旦那様の仲間やお礼になった人と協力して反撃しようとしている。
しかしあいつ等も黙ってみる訳も行かず、大量の兵士や傭兵を集めている。
攻め込む日は一週間を含めて一ヶ月後の夜だ。俺やお嬢様とカイン様も参戦するため、それまで戦力を高めたりする必要がある。
だからお嬢様にも格闘術と体力を増強するため、俺の知識とウォーロックさんの教えで訓練をしている。
「お嬢様、そんなむやみに攻撃したら打ち負かされますよ! もっと相手の動きを読んで行動してください!」
「は、ハイ!」
お嬢様はそう言うと、フェイントを混ぜながら俺に近づいてくる。
確かにフェイントを混ぜながら、相手に接近すれば厄介だ。だけど――。
俺はお嬢様の足元を軽く蹴る、するとお嬢様が前のめりに倒れて叫ぶ。
「キャッ!」
お嬢様は前のめりに倒れて立ち上がろうとする。だがさっきのフェイントで疲れているのか、小柄な体を小鹿のように震えて息を荒くしている。
俺は心を鬼にしてお嬢様に向けて罵倒を放つ。
「お嬢様、そんなにあいつ等に負けて悔しくないのですか? この弱虫、愚図、意気地なし!」
「ウ、ウゥ……!」
お嬢様は俺の罵倒を聞いて、あまりにも悔しさに小鹿のように震えつつも、何とか立ち上がって見せる。
よし、アイツらに対する感情を膨らさせて、気持ちを増幅させる事ができたぞ。良心が痛いが、もう少し奮い立たせようと、俺はお嬢様に罵倒する。
「お嬢様、もしまたそのような事をするならば●●●に●●●して●●●に――」
「止めなさい!」
俺が罵倒している時に、後ろから遮るような叫び声と後頭部を殴られたような痛みがして、叫ばなかったが頭を押さえながら悶える。
「ッ~~!!?」
痛みにもだえている時に、お嬢様が心配して寄ってくるが、俺は「だ、大丈夫です」と言って彼女を落ち着かせる。
イッタぁ!? 誰だよ、いきなり後ろから何かを叩きつけるなんて危ないだろ!
そう思いつつ振り向くと、そこにはかなり呆れているカイン様と、青筋をかなり立てているシャロンさんがいた。しかも心なしか背後に鬼神が見える上に、カイン様が冥福を祈っているように見える。
俺はシャロンさんの視線をそらす、だがそらす前に即座にアイアンクローを放ってくる。
シャロンさんの鋭利な爪が頭蓋に刺さり込み、あまりの激痛に叫んでしまう。
「ギャァァァァァァァァ!? シャロンさんストップ、これ以上やったら危ないですからストップ!」
「……」
俺はこれ以上行ったらまずいと思い、シャロンさんにタップを掛ける。しかしシャロンさんは無言のままアイアンクローを行い続ける。
ヤバイ、この人きっとさっきの事を聞いて切れたんだ! このままガチで死んじまう!
後はお嬢様達が落ち着かせて事無き事を得た。アリオンは今起きた事に驚愕していたが、これ以上アイアンクローを食らったら、間違いなく死んでいただろう。
本当に助かった、お嬢様に感謝だな。そう思いつつシャロンさんの話を聞く。
ココにいないフォルトさんは、屋敷から少し離れた場所で戦争の準備をしている、だが本家の兵士に加えて傭兵の大群、そして旦那様と渡り合える緑髪の魔術師、その二つがあっていつ攻めるのかを考えていた。
兵士や傭兵は手榴弾とか突撃銃を使えば何とかなるけど、緑髪の魔術師が旦那様と渡り合うなんて大抵の兵士や騎士だと無理だろう。
俺はその話を聞いて作戦を考える。正面突破は無理だとして、少人数で侵入しても数で圧倒されるかもしれない、だったらフォルトさんとシャロンさん達が騒ぎを起こさせ、そのすきに俺とお嬢様が手薄になった塔に侵入する。
そのことを話すとシャロンさんが顎に手を当てて感心する。
「なるほど……単純そうですが、緑髪の魔術師がこちらに来るようにするのは良いですね」
シャロンさんは感心するが、カイン様が手を挙げて質問する。
「だけど二人で行くってことは、レノンは大丈夫なのか?」
「そちらの方は大丈夫です。お嬢様は特攻ではなくあくまでサポートに徹します」
「それだとあなた一人で行くのですか? いくら銃が強いとは雖も、相手には王族級の魔術師がいるかもしれませんよ?」
シャロンさんがそう言うと俺は思わず「ウッ!」と呟く。
マァ、確かに俺は魔力量が低い奴隷級だし、魔導手袋の魔力量が少なくなってきて、そろそろ補充しなくちゃいけない。
この魔法具は別の魔力を注ぐと暴発を起こしてしまうため、気軽に補充を求めたらいけないし、アリスみたいな王族級を呼んでも同じだ。
そう考えているとアリオンが懇願する。
「でしたらわたくしが相方を務めさせていただきますわ!」
「アリオンが?」
俺はアリオンが言う事に首を傾げる。
確かにアリオンは一応魔力量が王族級だし魔法具の扱いは知っていて、相方にするのは良いだろう。だが彼女には一つの弱点がある。
それは――。
「確かに相方として信頼できるけど……かなりの運動音痴だからダメだろ?」
「へブッ!?」
そう言うと彼女は呻き声と共に吹き出す。
――そう、それは某青ダヌキに出てくるメガネ少年並みの運動音痴だからだ。実際お嬢様の訓練についてこられなかったし。
その代りアリオンは、奥様についてある魔法具を解除させる係にして元気を取り戻す。
だけど俺が単独で行くのは無理に近い、カイン様も相手を陽動させるための武器をそろえているため無理だ。
相方にする条件は三つ。一つ目は銃の扱いを知っている、二つ目は俺と信頼関係を築いていて(できれば知り合いが良い)、三つめは魔力量が最低でも国民級以上が良い。
「「……」」
その条件を聞いたこの場の全員が黙り込む。
マァ、そんなのアリスやヴィンセントが来ない限り――。そう思っている懐かしい声が俺を呼び掛ける。
「アレス!」
「あ、アリスっ!?」
俺は懐かしい嫁がここにいる事に驚く、するとアリスは俺に抱き着く。
どうしてシンにいるどころか、アリオンの屋敷にいる事を知っているのかと聞く。しかしアリスが愛犬みたいにほおずりしている時に、一人の青年がひき剥がす。
青年は呆れながらも、久しぶりそうに話しかける。
「何やってんだよ……って、久しぶりだな、アレス!」
「ヴィンセント!?」
なぜかヴィンセントもいて、俺はもう何がなんやら訳が分からなくなってきた。
少しだけ落ち着くとヴィンセントから説明してくれた。
アリスはヴィンセントが嘘をついたと知って、孤児院に戻ってリーベット先生とヴィンセントに問い詰めたところ、邪月の都ルナにいると知ってヴィンセントを連れて向かっていた。その時に薄紫髪の魔術師っぽい青年が、ここにいると教えて今に至る。
にしてもその青年は一体何者だ? 商人会に属しているなら分ける、けど魔術師だったらどうして知っているんだ?
そう思っていると、アリオンはどこかに隠れようとその場から去ろうとする。しかしアリスは笑みを浮かべながら肩を掴む、なぜか顔は笑っていても目は笑っていなかった。
「ネェ、何で逃げようとするの?」
「ヒィ!」
アリスが質問するとアリオンは脅えた声で叫ぶ。
少しヴィンセントから聞くと、アリオンはアリスが持つ回転式拳銃を譲り受けようとした。しかし彼女は失言してしまい、その結果アリスを怒らせたというわけだ。
なんというか……自業自得だな。そう思うとアリオンはアリスに土下座して大声で謝罪する。
「申し訳ありませんでしたー! わたくしのような不束者があなた方の故事を侮辱するなんて、財やら何やら与えますのでお許しくださーい!」
アリオンは額を煙が出るくらいこすりつけて、見る限りこれはかなりガチだろう。アリスもハトに豆鉄砲を食らったような顔をしている。
アリスは失言の件を許してアリオンは涙を流してホッとする。
そしてアリスとヴィンセントにお嬢様の事や事情をすべて話す、すると二人はあいつ等にかなり切れて全快に協力する。
これで俺が一人で塔に侵入する事はなくなったし、ヴィンセントがきてあれの開発を早める事ができる。
そう思いつつ作戦を書いた紙をシャロンさんに渡し、アリスとヴィンセントを参加してから訓練を再開する。
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