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2章 邪月の都ルナ

39.リベンジ前編

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「ウ、ウゥゥゥン……ココは俺の部屋か?」

 少し目を覚ますとなぜか自室のベッドにいた。
 確か俺は実践訓練をしていて……って、思い出した!
 その後少しだけ冗談を言ったら旦那様と手合わせをして吹き飛ばされたんだった!
 にしてもマジですごいな……あんなのが居るなんて、サイヤ人や仮●ダーみたいな超人じゃないと対応しきれないぞ。
 確かにウォーロックさんが言う通り一筋縄じゃ行かないし、外を見る限り気絶してから一日が経ったんだな。
 そう思いながら頭を掻きながら周りを見る、すると俺の横にお嬢様がいるが少し寝ていた。
 もしかして心配してくれたのか? 何だか照れるな。
 そう思っているとお嬢様が目を少し擦りながら起きた。

「ウゥゥン……アレスさん起きたのですね」
「ハイ……心配かけてすみません」

 苦笑いで答えるとカイン様が、俺の後頭部を軽く小突く。

「だから言っただろ? 父さん(化け物)には手足も出ないと」

 ハイ、その通りです。俺がバカでした。
 旦那様のデタラメすぎる強さに身を染みていると、お嬢様が少し質問してくる。

「あの……どうしてアレスさんは強くなろうとしているのですか?」

 俺はお嬢様の質問に少し戸惑うが、自分の考えを言う。

「強くなりたいのはお嬢様を守るためです」

 この世界を破滅に追い込もうとする奴に対抗する、そのためにも銃の製作や鍛錬をしなくてはいけないんだ。
 そう言うとお嬢様は少し恥ずかしそうに言う。

「少し迷惑かもしれませんけど……部屋で見学させてもいいでしょうか?」
「ハイ?」

 なぜかわからないが外に興味を持つのは良い事だしもちろんいいと答えた。
 そしたらお嬢様はとても喜んでいた、カイン様は実の妹が外に興味を持っていて少し微笑んでいた。
 そのことをウォーロックさんに伝えるとかなり驚いていた。

「何? お嬢様が見学したいだと!?」

 俺はウォーロックさんの驚きように後ろに下がるが俺は素直に答える。

「ハ、ハイ……部屋の中ですが外に興味を持ってみたので――ってエエ!?」

 俺が説明している途中でいきなりウォーロックさんが涙を流してきた。
 一体どうしたんだ!? 少し驚いているとウォーロックさんが呟くように言う。

「まさか……お嬢様がついに外に興味を持つなんて」

 カイン様から少し聞いたけどお嬢様を実の娘のように溺愛しているからな、外を興味を持っていたから感動したんだな。
 そう思っているとウォーロックさんは涙を拭いて俺の肩を強くつかむ。

「良いかアレス、お嬢様が見学するならば世話係として恥じぬようにしろ」
「わ、分かりました……」

 ウォーロックさんにとってかなり大事な事だろう、俺は少し押されながらも答える。
 執事服から動きやすい服に着替えて外に出る、するとそこには空に拳を打ちこんでいる旦那様がいた。
 なんで旦那様と戦う事になっているんだよ! それに全員集合だしパーティーかよ! しかも呑気だな! 人が一人死ぬかもしれないのによ! ハァ……今すぐにでも逃げ出したい。
 少しこの状況に呆れつつもお嬢様の窓部屋の方に向く、お嬢様は大きな声で応援する。

「お父様~アレスさん、二人とも頑張ってくださ~い!」
「うむ! 分かったぞ!」

 お嬢様が健気に応援している姿を見て思わずうれし泣きをする。
 やっぱり可愛い! 幼い事もあるけど優しい性格が合わさって美少女だ。
 少しだけ頭を振って準備運動をする。少しぐらいお嬢様にかっこいい所を見せるか。
 そう思いながら旦那様の前に立つ、条件は旦那様から十秒逃げ切るだけだ。
 心の中で俊敏ザ・スピード堅牢ザ・ガード剛力ザ・パワーを気絶しない程度で、これでもかとかけて気を集中する、少しだけこの場がシンとして、その風が吹くと同時に旦那様から距離を取る。
 いくら接近しても即座に吹き飛ばされる、ならば距離を取って時間を稼ぐのみ。
 俺は俊敏ザ・スピードで速度を高め、剛力ザ・パワーで瞬発力を高め、堅牢ザ・ガードで予備の攻撃に備えている。
 いくら気休めでもこれ以外ない、旦那様を視界に外さないようにずっと見ていると、摩訶不思議氣な事が起きた。
 なんと旦那様が瞬時に消えたのだ。

「ハァ!?」

 あまりの訳分からなさについ叫んでしまう、その瞬間に俺は林に叩きつけられていた。
 堅牢ザ・ガードで守りを固めても、物凄い衝撃に叩きつけられてしまい、体内の酸素をすべて吐き出す。

「ガハッ!?」

 意識が途切れかけて最後に残ったのは、悠々と立っていた旦那様でそれと同時に意識が途切れた。

▲▽▲▽▲▽

 俺は意識を取り戻して、ウォーロックさんに治療している時に愚痴を呟く。

「かなり離れているのに瞬時に近づくって……どこの見えないヴィジョン使いかよ……」

 脳裏になぜかD●とか●郎とか五●とか十六●夜を思ったのは気のせいで願いたい。
 そう思っているとウォーロックさんに注意される。

「お嬢様に良い所を見せようとして失敗しただろうな」
「ブフゥ!」

 ウォーロックさんの言い分にガッツリとヒットして思わず吹き出してしまう。
 ハイ、ウォーロックさんの言う通りです、なんて思っているとお嬢様が会話に入る。

「あの? 思い違いかもしれないけど……でしたら接近戦に持ちこたえたらどうですか?」
「「……エエ?」」

 俺とウォーロックさんはお嬢様の言葉に少しだけ首を傾げてしまう。
 一体どう言う事だ? それに一度接近に持ち込んだけど、かなり強くて歯が立たなかったから今回は回避に専念した。
 お嬢様は旦那様の動きを説明する。

「お父様の動きは接近だと小ぶりの攻撃を主軸で、大振りは相手が止まった時に行います」

 確かに少し考えれば無剣ザ・ソードを弾き飛ばれた後に拳を鳩尾に撃ち込まれたな。

「それにお父様は大振りの攻撃を当てるために一度フェイントをかけています」
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