上 下
37 / 81
2章 邪月の都ルナ

35.奴隷

しおりを挟む
 荒々しい波が堅牢な船を強く揺らせ、バランスがいつ崩れてもおかしくない時に、一人の傭兵が牢屋に近づいて脅す。

「おい、クソガキども! お偉いさまが怒ったらどうなるか分かっているのよな?」

 傭兵はそう言って牢屋の鉄格子を強く蹴る、すると牢屋に入っている子供たちは脅えて叫ぶ。

「ヒィ……!」

 子ども達が怯えている時に、一人だけいびき声をあげている人物がいた。
 その人物の姿は黒曜石のように黒いウルフカットで、目つきはつり目で、身長は一六五センチぐらいの青年。
 青年は牢屋の壁に寄り添って寝ていた、傭兵は青年に大声で怒鳴り込む。

「おい、そこの新入り! お前何で呑気に眠れるんだよ!」

 傭兵が怒鳴り込んだと同時に、青年はハッと覚まして辺りを見て首を傾げる。

「ハッ? ココって船……?」

 青年はココがどこ分かっていなかった。



 少し大声が聞こえて目を開ける、するとそこには足枷をつけられた子ども達と刺々しい鎧を着た大男が槍を持って睨んでいる。
 俺は少しだけ首を傾げながら辺りを見渡す、子ども達がいるのは日本だと普通のホテル位の広い部屋で、目の前に映るのは鋼鉄で出来た鉄格子の近くに大男がいる。
 壁の方は木材で出来ていて、窓を覗けばそこには波が荒れ狂っていた、俺は首を傾げて呟く。

「ハッ? ココって船……?」

 俺はこの状況を飲み込めずに頭を掻いた。
 この状況を飲み込めずにいると、大男の後ろから小太りな男が出てくる。
 その男の姿は、シルクハットをかぶっているから髪型は分かりにくく、まるメガネを着けていて、鼻付近には左右に分かれる立派な髭を生やし、華麗な燕尾服を着ていた。
 なぜか知らないが、どこかで――ってアァァァァァ! こいつ確か俺を運んだ承認じゃねぇか!
 俺は怪しい商人の胸倉つかもうと近づく、しかし鉄格子の隙間から両手を出そうとすると、突如痺れるような痛みが走って来て後ろに倒れてしまう。
 俺がしりもちをついてさすっていると、大男が説明する。

「お前みたいな刃向かう奴がいても、結界を張れば何ともないんだよ」

 大男が詳しく説明し終えると、扉のとこから大量のパンが放り込まれる。
 なるほど、これはココの飯だな。そう思いながらパンを取ってかじる、するとかんだ瞬間にジャリっと音が鳴る。
 何か混ざっているのか? そう思うと次に来るのは眉を寄せるくらいの苦みが口の中に襲いこむ。

「ゲホッゴホ、オエッ!」

 俺はあまりの苦さにせき込んで吐き出す。
 息切れにしながら吐き出した物体を見ると、それはかなり焦げていたパンだった。
 俺は大男の方を睨みながら振り向くと、怪しい商人の前に立っていう。

「一応言っておくがお前は商品で、ここから逃げ出そうだって無駄だ。仮にここから逃げようとしたら分かっているな?」

 大男はドスが混じった声で俺を脅した後は商人と共にこの場から去る。
 俺はあの男が言っている事に驚くが、冷静になって辺りを見る。
 ココには窓があるが外が荒れ狂って、そこから出ると瞬時に海の藻屑になるだろう。鉄格子になる扉は外しか開けれるように南京錠を付けていた。
 これは大人しくするしかないな。そう思いながら壁に背を向けて目を閉じる。



 俺が謎の船に入れこまれてから一ヶ月くらい経つ。
 俺は奴隷として生活しているが、一定期間誰も帰れずになると処分されてしまう。
 処分される前にここから脱出しようと考えた、しかしココは商品(俺達)を良く見せようと行水させるようにしていて、その時に大量の傭兵達が逃げ場を無くすように囲んで進むため、逃げ出すどころか隙を見からずに苦労する。
 ココから逃げる理由は二つあってさっき言ったのが一つだ、二つ目はその用途だ。
 労働用と軍事用と性的用だ。
 最初の労働用は鉱山を採掘や畑を耕すための労力を補充するためのものだ、次に軍事用は戦争や不浄人形ドールズをせん滅するときに使うものだ、そして最後は問題の性的用だ。
 性的用は言葉の通り性的行為をするために使うもので、淫人リリンだと食用として買う事がある。
 エッ、とてもいいだって? どこがだよ!
 もしもあっち好きの方に買われたら、俺の貞操観念は砂城みたいに崩れ去ってしまうんだよ!
 せめて女性の方が買ってきて欲しいと何度も願った事か、とにかく買われてしまった軍事用のほうが良い。
 労働用はブラック企業を思い出すからできるだけ来ないで欲しい。そうしていると大男が鉄格子を叩いて呼ぶ。

「おい、お前にご氏名が入ったぞ」

 アア、ついに来たか。神よ、どうか俺に奇跡を起こしてください。
 そう思いながら牢屋から出る間際に大男が耳元に囁く。

「(買う相手が普通だといいな……)」

 その子場を聞いて不安になるが、頭を振って不安を押しつぶして傭兵について行く。
 しばらくするととある部屋に入らせてくる、中は様々な家具があってかなり凝っているんだなと感じながら、向かい合いのソファーの間に立つ。
 右の方は怪しい商人だけど、左の方を見て後悔した。
 左のソファーに座っていたのは筋骨隆々な貴族だった。
 その姿は金髪のオールバック、とても鋭い目つきに炎のように紅いルビーの瞳、見た目通り今でもチュニックとジャケットがはち切れそうなムキムキマッチョな体格の男だ。
 なぜだか知らないがとても嫌な予感が……。
 なんて感じていると、ムキムキ貴族が俺をじっくりと見た後は豪快に言う。

「よし、これにするぞ!」
「オオ、ありがとうございます」

 嘘だろー! でも落ち着くんだもしかしたら労働用かも知れない。
 よくよく考えれば性的用に買われるなら労働用のほうが良い方だ、俺はそう思っているとムキムキ貴族は一つの袋を俺に渡してくる。
 それを受け取って中身を取り出すと、それはセクシーな女性用下着だった。
 終わった、何もかも。
 俺は膝を床に付けて、脂汗をかいて絶望するしかなかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

スライムすら倒せない底辺冒険者の俺、レベルアップしてハーレムを築く(予定)〜ユニークスキル[レベルアップ]を手に入れた俺は最弱魔法で無双する

カツラノエース
ファンタジー
ろくでもない人生を送っていた俺、海乃 哲也は、 23歳にして交通事故で死に、異世界転生をする。 急に異世界に飛ばされた俺、もちろん金は無い。何とか超初級クエストで金を集め武器を買ったが、俺に戦いの才能は無かったらしく、スライムすら倒せずに返り討ちにあってしまう。 完全に戦うということを諦めた俺は危険の無い薬草集めで、何とか金を稼ぎ、ひもじい思いをしながらも生き繋いでいた。 そんな日々を過ごしていると、突然ユニークスキル[レベルアップ]とやらを獲得する。 最初はこの胡散臭過ぎるユニークスキルを疑ったが、薬草集めでレベルが2に上がった俺は、好奇心に負け、ダメ元で再びスライムと戦う。 すると、前までは歯が立たなかったスライムをすんなり倒せてしまう。 どうやら本当にレベルアップしている模様。 「ちょっと待てよ?これなら最強になれるんじゃね?」 最弱魔法しか使う事の出来ない底辺冒険者である俺が、レベルアップで高みを目指す物語。 他サイトにも掲載しています。

スキル喰らい(スキルイーター)がヤバすぎた 他人のスキルを食らって底辺から最強に駆け上がる

けんたん
ファンタジー
レイ・ユーグナイト 貴族の三男で産まれたおれは、12の成人の儀を受けたら家を出ないと行けなかった だが俺には誰にも言ってない秘密があった 前世の記憶があることだ  俺は10才になったら現代知識と貴族の子供が受ける継承の義で受け継ぐであろうスキルでスローライフの夢をみる  だが本来受け継ぐであろう親のスキルを何一つ受け継ぐことなく能無しとされひどい扱いを受けることになる だが実はスキルは受け継がなかったが俺にだけ見えるユニークスキル スキル喰らいで俺は密かに強くなり 俺に対してひどい扱いをしたやつを見返すことを心に誓った

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第三章フェレスト王国エルフ編

猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る

マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・ 何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。 異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。  ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。  断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。  勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。  ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。  勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。  プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。  しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。  それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。  そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。  これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

処理中です...