上 下
27 / 81
1章 魔荒国家シルバーホース

27.告白

しおりを挟む
 俺は驚きながらも、一つの答えを知った。
 アリスって詰め込まれると馬鹿になるんだな。ってそんな事より!
 俺はどうしてこうなったかアリスに問い詰める。

「ちょっと待て! なんで俺がアリスを性奴隷にしなくちゃいけないんだ!? それ以前に性奴隷の意味知ってる?」
「性奴隷の意味は少しくらい知ってるよ、それに……」

 アリスは恥ずかしそうに、ぽつりぽつりと訳を話してくれた。
 どうやら、アリスは魅惑の吸血薔薇を討伐してから、俺と別の道を進むのを感じて一緒に行きたいと思った、しかし魔術師になりたい気持ちがあってどうすれば良い分からずにいると、ルイさんが教えてくれた。
 それは「性奴隷になればいい」と言うものだった、もちろん反対はしたが言いくるめてしまい今に至るというわけだ。
 どうしてそうなった! 普通そうはならんやろ!? いや、なっているか。
 実際目の前で考えすぎてぶっ飛んだことを言った人がいるし。
 それにしてもルイさん、あんた何考えてんだ! あんたの所為で初告白が台無しだ。
 しかしこれは俺の所為だと取れる。俺が先に告白をすればこんな惨状にならずに済んだろう。
 転生した時に見て見ぬ振りは止めようと誓ったのに、目の前にある失敗におびえていたんだ。
 もし俺の思い違いだったら、もし告白が失敗したらと言う、恐怖や困難などだ。
 俺はどうすれば良いか迷っている時に、後頭部に何かを叩かれた。

「痛っ!?」

 少し驚いてしまうが、後ろに振り向くと誰もいない。
 しかし足元には一つの袋があって、その中身を見ると少しため息を吐く。
 ったく、余計なお世話だっての……。
 なんて思いつつ袋の中を取り出す。入っていたのは上塗りされた正方形の箱だ。
 俺は膝を地面に付いて箱をアリスに向けて開ける、中身は二つの指輪だ。
 そして俺はアリスに自分の思いを伝える。

「アリス、俺はお前を守る。だから結婚を前提に付き合って欲しい」

 俺が告白すると、アリスは口を手で押さえているが、体が震えているほど喜びを噛み締めて、そして満面の笑みを浮かべて答える。

「……うん、分かりました」

 アリスはそう言うと、俺に飛びついてきてつい倒れてしまう。
 だけど気分は悪くない、俺はアリスの頭をなでたら、口づけをする。
 そよ風が肌を優しく感じさせ、口の中が甘味に似た味わいを感じる。
 チュッパっと音がした後は、アリスが笑みを浮かべながら言う。

「私を選んでくれてありがとう……」
「選んでくれて嬉しいのは俺の方だ……」

 俺はそう答えると、なじみのある声が俺とアリスを茶化してくる。

「ヒューヒュー、熱いですね~」
「「ヴィンセント!?」」

 声の主はまさかのヴィンセントだった。
 俺とアリスは頬が赤くなり、急いで離れる。しかしヴィンセントはまだニヤニヤしていた。
 俺は是が非でもどこまで聞いたか問い詰めたいが、告白の所まで聞いていたとしたら、恥ずかしくて聞く事ができない。
 しかしいくら恥ずかしがってもキリがないため、勇気を振り絞って聞く。

「ヴィンセント……どこから聞いたんだ?」

 俺が恐る恐る聞いてみると、当の本人は呑気に答えた。

「アリスが『性奴隷にして!』って所から」

 ヴィンセントが呑気にそう言うと、アリスは暗く赤くて黄色い瞳の色が消え失せて、詠唱する。

『氷の根源よ。今一度、敵対者を突き刺す槍を生み出せ! 氷結アイス――』

 アリスが氷結槍アイスランスを放とうと察したヴィンセントが両手を挙げて、アリスを落ち着かせようとする。

「アリス、落ち着け! 俺が悪かったから取り敢えず魔法を放つのを止めてくれ!」

 ヴィンセントが必死に落ち着かせようとするが、アリスはそんなのお構いなしに放とうとしてくる。
 これはさすがに止めないとまずいな。
 俺はアリスを羽交い絞めにして落ち着かせる。

「アリス、さすがにやり過ぎだろ? それにこの指輪をくれたのはヴィンセントだぞ」
「へ? そうなの!?」

 アリスは驚きながらそう言いながら、ヴィンセントの方を向くと、当の本人は両手を下ろして答える。

「アア、そうだよ。俺が渡したんだ」

 ヴィンセントが認めると、アリスは驚きながら問い詰める。

「エエ!? でも何でそこまでするの?」
「それについてはあの人から聞いてくれよ」

 ヴィンセントが後ろの大木に指すと、大木の後ろからリーベット先生とルイさんが現れてきた。
 リーベット先生はため息をつき、ルイさんは呑気に笑っていた。

「リーベット先生!?」
「それにルイさんも!?」
「まさか気付かれるなんて……」
「まぁ、でも結果オーライだから良しとしようよ」

 まさかのリーベット先生も手を組んでいた事に、俺とアリスは理解できなかった。
 しかし、どうしてこんなことをしたのか、気になった俺は苦笑いで質問する。

「えっと、リーベット先生にルイさん。何でこんなことをしたのですか?」

 俺の疑問にリーベット先生が答えてくれた。

「それは君たちが明後日で卒業するからですよ」
「私達が?」

 アリスが首を傾げながらそう言うと、リーベット先生が語る。

「貴方達が別々の道に行くのは知っています、しかし本当の気持ちを押し殺して同じ道を行くのは嫌なのです」
「リーベット先生……」
「だから僕達がこれを考えたって訳さ」

 ルイさんがそう言うと俺は頭を下げて感謝をしたかったが、本人たちは止めて欲しいと言ってくるだろう。
 そう思っているとリーベット先生が質問してくる。

「それで、アレス君は卒業したら何をするのですか?」
「俺がすること……」

 俺は一瞬迷うがしかし頭を振って言う。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

劣等生のハイランカー

双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
ダンジョンが当たり前に存在する世界で、貧乏学生である【海斗】は一攫千金を夢見て探索者の仮免許がもらえる周王学園への入学を目指す! 無事内定をもらえたのも束の間。案内されたクラスはどいつもこいつも金欲しさで集まった探索者不適合者たち。通称【Fクラス】。 カーストの最下位を指し示すと同時、そこは生徒からサンドバッグ扱いをされる掃き溜めのようなクラスだった。 唯一生き残れる道は【才能】の覚醒のみ。 学園側に【将来性】を示せねば、一方的に搾取される未来が待ち受けていた。 クラスメイトは全員ライバル! 卒業するまで、一瞬たりとも油断できない生活の幕開けである! そんな中【海斗】の覚醒した【才能】はダンジョンの中でしか発現せず、ダンジョンの外に出れば一般人になり変わる超絶ピーキーな代物だった。 それでも【海斗】は大金を得るためダンジョンに潜り続ける。 難病で眠り続ける、余命いくばくかの妹の命を救うために。 かくして、人知れず大量のTP(トレジャーポイント)を荒稼ぎする【海斗】の前に不審に思った人物が現れる。 「おかしいですね、一学期でこの成績。学年主席の私よりも高ポイント。この人は一体誰でしょうか?」 学年主席であり【氷姫】の二つ名を冠する御堂凛華から注目を浴びる。 「おいおいおい、このポイントを叩き出した【MNO】って一体誰だ? プロでもここまで出せるやつはいねーぞ?」 時を同じくゲームセンターでハイスコアを叩き出した生徒が現れた。 制服から察するに、近隣の周王学園生であることは割ている。 そんな噂は瞬く間に【学園にヤバい奴がいる】と掲示板に載せられ存在しない生徒【ゴースト】の噂が囁かれた。 (各20話編成) 1章:ダンジョン学園【完結】 2章:ダンジョンチルドレン【完結】 3章:大罪の権能【完結】 4章:暴食の力【完結】 5章:暗躍する嫉妬【完結】 6章:奇妙な共闘【完結】 7章:最弱種族の下剋上【完結】

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

現代ダンジョンで成り上がり!

カメ
ファンタジー
現代ダンジョンで成り上がる! 現代の世界に大きな地震が全世界同時に起こると共に、全世界にダンジョンが現れた。 舞台はその後の世界。ダンジョンの出現とともに、ステータスが見れる様になり、多くの能力、スキルを持つ人たちが現れる。その人達は冒険者と呼ばれる様になり、ダンジョンから得られる貴重な資源のおかげで稼ぎが多い冒険者は、多くの人から憧れる職業となった。 四ノ宮翔には、いいスキルもステータスもない。ましてや呪いをその身に受ける、呪われた子の称号を持つ存在だ。そんな彼がこの世界でどう生き、成り上がるのか、その冒険が今始まる。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

悪役貴族の四男に転生した俺は、怠惰で自由な生活がしたいので、自由気ままな冒険者生活(スローライフ)を始めたかった。

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
俺は何もしてないのに兄達のせいで悪役貴族扱いされているんだが…… アーノルドは名門貴族クローリー家の四男に転生した。家の掲げる独立独行の家訓のため、剣技に魔術果ては鍛冶師の技術を身に着けた。 そして15歳となった現在。アーノルドは、魔剣士を育成する教育機関に入学するのだが、親戚や上の兄達のせいで悪役扱いをされ、付いた渾名は【悪役公子】。  実家ではやりたくもない【付与魔術】をやらされ、学園に通っていても心の無い言葉を投げかけられる日々に嫌気がさした俺は、自由を求めて冒険者になる事にした。  剣術ではなく刀を打ち刀を使う彼は、憧れの自由と、美味いメシとスローライフを求めて、時に戦い。時にメシを食らい、時に剣を打つ。  アーノルドの第二の人生が幕を開ける。しかし、同級生で仲の悪いメイザース家の娘ミナに学園での態度が演技だと知られてしまい。アーノルドの理想の生活は、ハチャメチャなものになって行く。

処理中です...