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1章 魔荒国家シルバーホース

12.迷走

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 それから一週間が経つ。
 俺は魔鉄鉛メティスで弾丸を作っていて、メモしていた火薬の量を間違えずに作りながら早く装填できるようにスピードローダーに一個ずつ装填している。
 粉や消費品だけ複製は発動せず、木の実で試しても増えなかった。

「火薬を作るにしても、木炭が一番、時間が掛かるから、どうすれば時短できないかな?」

 火薬に必要な木炭を集めるなど時間が掛かってしまい考えている時に、昨日の事を思い出して眉を寄せる。
 もしここで諦めたら昔の自分になるだろ俺! 心の自分に喝を入れる、だがそれでも迷いが見えてどうすればいいのか分からなくなると、後ろから声が聞こえる。

「おーい、アレス」
「その声ってヴィンセント?」

 声の主はヴィンセントであることに驚きつつ質問する。

「どうしてここに来たんだ?」
「ちょっと着いてきたんだよ」
「俺の世界だとストーカーだぞ」
「ワリィワリィ」

 なぜかヴィンセントといるだけで、安心してくる。相棒としていい奴だな。

「突然だけどアレス」
「ン? なんだ、ヴィンセント?」
「自分に銃の使い方を教えてくれないか?」
「ハイ?」

 ヴィンセントはいきなりすごい事を言ってきた。だけど俺は一応確認する。

「良いのか? それに何で教えて欲しいんだ?」
「実は戦争孤児なんだよ」
「そうなのか? でも何でそれと銃に関係があるんだ?」

 単純な疑問をすると、ヴィンセントは孤児院に入る前を言う。

「リーベット先生から聞いた話だけど、自分は普通の農民の夫婦と姉に育てられたんだよ、けど……」
「もしかして、不浄人形ドールズに殺されたのか?」
「確かにそうだけど、遠い昔に六式魔術師が封印されたと言われる形状タイプロードに故郷の村が滅んだ」
形状タイプロードって、確か人間でたとえば皇帝級エンペラーじゃないか!?」

 俺はヴィンセントが言った事に驚く。
 不浄人形ドールズはG~SSSまで振り分けている、G~Eは奴隷級スレイブ、-D~-Bは国民級ピープル、+B~+Aは王族級キング、S~SSSは皇帝級エンペラーだ。
 そんな化け物がどうやって封印を解除したか気になるが、取り敢えず銃についてまとめたノートを渡す。

「これは……?」
「銃の撃つ構えとか再装填リロードについて詳しく書いたからちゃんと目を通しておけよ」
「わ、分かった」

 ヴィンセントはぎこちなく答えながらノートを開いてみる。
 ヴィンセントがノートを見ている間に魔鉄鉛メティスに突っ込んで詠唱する。

天授ギブデッド起動、複製物体名回転弾倉シリンダー照星フロントサイト撃鉄ハンマー引き金トリガー銃口マズル銃把グリップ用心金トリガーガード!』

 詠唱し終えると回転式拳銃リボルバーのパーツが出来て、ノートを見終えたヴィンセントに渡す。

「何だ、コレ?」
「それはヴィンセント用のパーツだから、ノートを見ながらでもいいから、とにかく組み立ててみなよ」
「出来る限りやってみる」

 ヴィンセントはそう言いながらさっそく組み立て始める。
 俺はその間に、弾丸を組み立ている。
 少し時間が経って、弾丸が百発分作るとヴィンセントが回転式拳銃リボルバー〈ナガンM1895〉を見せる。

「ノートを見ながらやってみたが、これで良いか?」
「見た所、変なところは無いけど少し試し撃ちするよ」
「アア」

 俺はそう言うと大木に的を書き、バツ印の方に指を指す。

「バツ印に目掛けて撃ってみなよ」
「分かった」

 安全のために俺は大木から少し離れる。
 ヴィンセントはそう言うと、目を閉じ深く深呼吸をする。
 すると目を開いた瞬間に親指で撃鉄ハンマーを下ろして、引き金トリガーを引くと回転式拳銃リボルバーが火を噴く。
 撃った弾がバツ印に当たって貫く。
 ヴィンセントは息を荒くしながら俺の方に向く。もちろん親指を突き立てる。

「俺は一時間ぐらい練習してようやく当たったのに、一発で当てるなんて凄いよ!」
「そうだったのか?」

 ヴィンセントは下手くそと思っているけど、平和主義の日本は本物の銃を所持しただけで、アウトになるくらいだ。
 エアガンしか持ってない俺には一発で当てるのは難しい事だ。
 その後はスピードローダーを使った再装填リロードを教えている時に、絹を裂くような声がして振り向く。

「何だ!?」
「急いで下山しよう!」

 嫌な予感がしつつ下山すると大量の大人達が慌てていた。
 一体何が起きているか分からずにいるとリーベット先生がやって来る。

「アレス君とヴィンセント君大変よ!」
「リーベット先生、どうしたのですか? こんな大量の大人が集まって……」

 リーベット先生は物凄く息を荒くしていて慌てている。
 もしかしたらと思いつつリーベット先生に聞く。
 すると最悪の答えが返ってきた。

「アリスちゃんが小鬼ゴブリンにさらわれてしまったわ!」
「「何!?」」

 最悪の事態に俺とヴィンセントは声がハモる。
 他の大人たち焦りながらも武器を用意しているが、このままだと間に合わない。

「ヴィンセント、アリスを助けに行くぞ!」
「アア!」

 俺とヴィンセントはリーベット先生と大人たちが話し合っているうちにアリスを救出するために向かう。
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