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1章 魔荒国家シルバーホース

5.転生

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「ウゥ……」

 俺は視界がぼやけて、どこにいるか分からなかったが少し経てば正常に周りを見る。
 俺がいる場所って外!? 何で外にいるんだよ、って確か座標は設定したって聞いたけど、まさかここか? 

『聞こえますか? 三堂みどう様』

 その声って、フィムさん!? どうして頭の中に声が聞こえるんだ? 

『落ち着いてください。これはあなたの心に伝えています』

 これってテレパシー? 初めてだけど取り敢えず会話をして見る。

『フィムさん、俺は何で外にいるんですか!? それに隣には女の子の赤ちゃんがいるし』
『それは後で教えますので、とにかく泣いてください』
『泣くだけ?』
『ハイ、なるべく大声で泣いてください』

 なんで泣かなきゃいけないか分からないけど、とにかくできる限り大声で泣き叫ぶ。

「おぎゃあ、おぎゃあ!」

 何度も泣き叫んだ事で、金髪の女の子も目を覚まして泣き叫ぶ、俺も隣の奴に合わせて泣き叫ぶ。

「「おぎゃあ、おぎゃあ!」」
「おい、なんか赤ん坊の泣き声聞こえて無いか?」
「確かに何か聞こえるな」

 二人で合わさったことで人に聞こえて、このまま畳みかける! 

「「おぎゃあ、おぎゃあ!」」
「やっぱりだ。誰でもいいから人を呼んで来い! もしかしたら捨て子かも知れないぞ!」
「わ、分かった!」

 すると二人組の男が俺達に気付いて、俺達を保護してくれた。
 助かったー! このまま叫び続けなかったら死んでたな。
 その後は酒場に連れて行かれて、一人の女性に渡された。
 姿はピンクのロングで、桃色の瞳で、端正な顔の作りで、包容力があって優しそうなお母さんみたいな人物だ。
 だけど、耳がウサギでこの世界にも獣人は存在するんだな。

「リーベットさん、この子ら捨て子だけど、一応確認をしたほうが良いじゃないか?」
「そうですね、どれくらいか知らないと」

 リーベットと呼ばれた女性は女の子の額に手を当てる、するとリーベットさんは微笑みを浮かぶ。
 俺の額に手を当てる、すると悲しそうに首を横に振る、他の人も暗い雰囲気になる。
 一体どうしたんだ? 女の子の方は喜んで、俺は悲しむなんて何か違いがあったのか? 

『どうやら無事に保護されたようですね』
『アッ、フィムさん』
三堂みどう様、孤児院で五歳ほどになるまで過ごしてください』
『五歳になるまでか?』
『ハイ、そうすれば情報収集が出来るので』

 フィムさんはそう言うとテレパシーを解除した。
 最初は捨てられてどうなるか心配したけど、何とか助かったしこのまま寝るか。
 そう思いながら、俺はまぶたを閉じる。




▲▽▲▽▲▽




 それから五年が経ち、今は住んでいる街を探索していた。
 俺を拾ってくれた村はレレイア村と呼ばれて、商業の中間地でよく商人がこの村に休んだり、商売をしたりしている。
 今はこの世界について聞こうとする、だが大人は忙しくて聞かれずに苦戦していると。

「おーい、アレス!」

 俺は呼ばれた方に振り向くと、少年が俺に近づいてくる。
 近づいてくる少年はトルマリンのように蒼白いショートで、目つきは優しく瞳は薄茶のシナモンで、身長は一三〇センチだ。
 確か名前は……。

「ヴィンセントさん、俺に何かあるの?」
「アレス、確か今から授業あるだろ? 急がないと叱られるぞ」
「アッ、忘れてた!」

 そのことを思い出して、急いで孤児院に戻る。
 少し走って教室に入ると、リーベット先生はまだ居なかった。

「セ、セーフ」

 安心して胸をなでおろす。

「アウトですよ、アレス君」

 後ろから声が聞こえて、振り向くとそこには、リーベット先生が仁王立ちで待っていた。
 リーベット先生は青筋を立てながら聞いてくる。

「今回の遅刻も村に出歩いたのですか?」
「すいませんでした!」

 俺は頭を下げて謝罪する、その後は皆の前で説教されてしまった。
 恥ずかしくて、時間が長く感じてようやく説教が終わった。

「さて、今から授業を始めましょう」

 リーベット先生は手を叩いて、授業を始める。
 さっきの説教が効いて、穴があったら入りたい気持ちだ。

「(災難だな)」
「(ヴィンセントさん、慰めないで物凄く心に来るから)」
「(すまん。あと、俺の事を呼び捨てで良いぞ)」
「(分かったよ、ヴィンセント)」
「(それでいいぜ)」

 ヴィンセントと話して少し軽くなった、授業に集中する。
 どうやらこの世界は不浄人形ドールズと呼ばれる怪物が出没して銃でも簡単に倒せたが、人間の生活区域を徐々に蝕み続け、今の銃器だと歯が立たず魔法で追い払うしかなかった。
 この話を聞いて俺は確信する。黒幕は不浄人形ドールズを創って世界を破壊する気だ、なんとして阻止しないと。
 リーベット先生は俺達を外に連れて出て、黒板に文字を書く。

「私達は平穏に暮らせるのは六式魔術師様が作り出して魔法で暮らしています。ただいつ襲われるか分かりませんので魔法の勉強をしましょう」

 リーベット先生はそう言うと箱から水入り瓶を取り出して、蓋を外す。
 一体何をするんだ? そう思っているとリーベット先生は水入り瓶に両手を向けて詠唱する。

『水の根源よ。今一度、水を浮かばせよ! 水浮遊アクアフロート!』

 詠唱し終えると、水入り瓶の口元から水が出てきて、空中に水の球体が出来た。
 オオ! 魔法って漫画やアニメでしか見て無いから、実際にはかなり凄いな。

「皆さんもやってみてください」
「「はーい」」

 俺達は返事をして魔法の操作を勉強する。
 少し経つと他の皆やヴィンセントは軽々とできた、俺もできると思い詠唱する。

『水の根源よ。今一度、水を浮かばせよ! 水浮遊アクアフロート!』

 詠唱し終えると、空中で水球を浮かばせる事ができた。
 よしっ! これで何とか……ってあれ? 何でか目の前がぼやけてしまう、するとヴィンセントが呼び掛ける。

「どうしたんだ、まさか一人だけサボろうと──」

 肩を叩かれて前に倒れだす。

「アレス。おい、大丈夫か!?」

 ヴィンセントがかけより、俺を仰向けにしたら、白目になって泡を吹き出していた。

「ウブブブウブブブ!?」
「ウワァァ!? 白目を剥きながら泡を吹いてる!」
「「エエ!?」」

 この場にいた皆は驚きつつ急いでリーベット先生を呼んでいた。
 あ、ヤバい。もうそろそろ意識が──。
 俺は意識が途切れて、深淵の底に落ちた。
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