ソウルサクリファイス・業魔の書物

はじまり～魔法使い編

１３．試練前編

　寝ているときに誰かの声が聞こえて目を開けると周りが見た事が無い世界になっていた。
　それは地面が花畑になって周りを見ても建物が見当たらず焦っていると聞いた事がある声が聞こえる。

「成る程、次の所持者は貴様か」

　その姿は生贄で死んだはずのニミュエそっくりな人だった。

「そっくりじゃない本物だ、バカ者」
「じゃあ何で生きてそれ以前にココは何所だ！？」
「この世界は死者が行く場所、理想之花園アルカディアガーデンだ」

　理想之花園アルカディアガーデンは神話の時代で英雄が死ぬとこの世界に招かれると聞いた事はあるけど本当に存在しているとは思わなかった。

「だったらなんで俺がこの世界にいて何になるのか？」
「お前は将来迫害されるような事が起きるが諦めずお前を貫いてくれ」

　ニミュエはそう言うと周りが黒くなり気付くと自分は落ちていた。

「ニミュエ！？」
「いずれその時が来るまで●●が書いた本を手放すな」

　ニミュエはそう言うと光の粒となって視界が輝き出して気付くと宿泊所にいた。

「今の夢か？」

　夢にしても落ちるのが現実味あって汗がかいていた。

「響ヒビキ大丈夫？　なんかものすごく汗かいているけど」
「大丈夫だ、月を起こしたら今すぐ拭いてくる」

　俺は月を起こして洗面所のタオルで汗を拭いて朝ごはんを食べて広場に向かう。
　広場に着くと他の子供たちやアーサーが待っていた。

「おはよう、昨日はよく眠れた？」
「寝られたけどちょっと高い所から落ちる夢を見たから少し疲れているぜ」
「大丈夫なの、それ？」

　アーサーと話していると兵長が噴水の前に立つ。

「これから八星エイトスター魔術師マジシャン豪錬ゴウレンアグニス様に住む魔獣山ボルグゲイルに向かうため全員大型馬車に乗りなさい」

　馬車に乗れるのは十人で十台並んでおり俺たちは三番目の馬車に乗り全員が乗ると兵長が馬車の操縦背に座り手綱を掴む。

「これから魔獣山ボルグゲイルに向かい酔ったら荷物置きの所で休むように」

　そう言うと馬車が動き出して魔獣山ボルグゲイルに向かって行く。

「魔獣山ボルグゲイルって何だ？」

　着くまで三十分かかるらしくアーサーに魔獣山について聞く。

「魔獣山ボルグゲイルは魔物の親近種魔獣が大量に住み着いて頂上は豪錬ゴウレンアグニス様が支配して人を襲うために下山してこないけど魔物と同じ危険だから禁止区になっているくらい危険だからね」

　だから魔獣山だと知ると少し視線を感じるが国が決めたルートだからいないと思い気にしないことにする。
　馬車が動く音を聞きつつ景色を見ていると林から人影が見えアーサーに人影がいた場所に指を指す。

「アーサー今人がいたよな？」
「いなかったけど？」
「いないならいいや」

　きっと気のせいだと思い少し仮眠を取る。
　少しして馬車が揺れ出して起きると魔獣山ボルグゲイルに着いた。
　俺たちは馬車を降りると参道門の近くに人が立っていた。
　体格は中肉中背な男で右腕は岩くらい大きく髪はミディアムで髪色が少し赤く顔は少し目つきが鋭く目に少しだけクマがあった。
　兵長は門に立っている人に話す。

「こいつらが魔法使いになる連中らか？」
「はいそうです」
「最近の貴族はクソだな」
「それさすがにまずいですよ！」
「分かっているから落ち着け」

　話が終えると俺たちに近づいて少し離れた場所に止まる。

「お前らよく魔法使いに志願してくれた、俺の名はアグニス・フレイスだ、訓練期間までの仲だがお前らが立派な魔法使いなっていると願っている」

　門に立っていた人がアグニスさんだと知ると少し驚いているが兵士が何かを配らせるように命令している。

「早速悪いがお前らはこの山の頂上を目指す試練を受けてもらうが詳しい事は兵士に配られる物に説明書があるから見ていろよ」

　そう言うと兵士は大きなカバンと短剣を差し出す。
　渡されてもらいカバンの中を探ると一枚の紙が入って見て観ると知れんが詳しく書かれていた。

［試練の内容をココに記す　試練出題者アグニス・フレイス
　試練達成方法…今日中に頂上に着く事だが指定時間を過ぎれば試練失敗となす］

　渡されたカバンに入っている紙を読み終えるとアグニスさんが試練を説明する。

「お前らに渡された荷物に入っている紙に書いてある通り今日中に付かないと魔法使いの試練失敗だ」
『「ハァ―！？」』
『「エェ―！？」』

　とんでもない事を言って俺達を含む百人の子供たちが一斉に叫び一人の少年が叫ぶ。

「そんなの横暴だ！」
「だけどこれは貴族や王族たちの命令だから許せ」
「嘘だろ！？」

　最近の王族や貴族が横行しているのを聞いているけどこれまでの我儘に頭を抱える事しか出来ない。
　このまま文句を言っても埒が明かないと思い全員門の前に進むとアグニスさんが呼び出す。

「待て、その前に一人水霊魂ウィスプを持てないと迷って捜索する羽目になるから絶対に貰いそびれるなよ」

　そう言うと水が大量に入った大樽を兵士に運ばせて俺たち近くに置いて蓋を開けると蒼い炎の人魂が俺達に向かってきて一人ずつ近づいたら俺たちの周りに浮かぶ。

「これは水霊魂ウィプスと呼ばれる魔力制御生命体で古代から連携魔法を一人で行う際に作られた代物で制作方法八らないがこの山にある洞窟の溜め池に漬け込むと数日掛けて増える事が出来る上に何処までも離れていてもこいつらが放つ光が達に届いて位置を示せるから絶対に見失うなよ」

　アグニスさんの説明を聞きつつウィプスは俺の周りに漂って少し可愛いと思った。

「試練を行う時間は五時で始まるからそれまで準備運動などをしておけ」

　俺達は荷物を門の近くに置いているとカバンからリブロムが顔を見せる。

「お前の隣にいるのは何だ？」
「これは水霊魂ウィプスで、試練でいなくなった人達を探すために使うがリブロムを書いた人の時代はなかったよな？」
「そうだが少し便利そうだな」

　確かにそうだけど他の人がリブロムを見させないためにカバンの中に押し込み五時になるまで準備運動をする。
　聖火時計がちょうど五時になるとアグニスさんが俺達を呼び寄せる。

「只今午後〇五〇〇に持って試練を開始するが油断するな！」
『「了解！」』

　俺達が点呼すると大きな音がして門が開き出す。
　門の扉が開き終わる瞬間に俺達を含む百人の希望者が一斉に門の奥側に入り込む。
　森の中に入ると大量の木があり時々猛獣の鳴き声が聞こえてくる。

「それじゃあ、これから別々で行こう」
「そうだな」
「うん」

　俺達は別々で登る事になるけど月は他の人と一緒に上る事になる。
「それじゃあ、山頂で会おうぜ」
「うん」
「またね」

　月と翔と別れたけど俺は右斜め上に走って人がいないと知ると声を掛ける。

「そこにいるのは分かっているからさっさと出て来いよ」

　そう言うと後ろの木から人が出てくる。
　体格は普通の男と同じだが恰好は全身フード付きローブを羽織っており顔は見えないが手には手袋を付けて右胸は少し膨らんでいるけど内ポケットで何かを隠していると思い即座に近くにあった小石とカバンの中にあった短剣を投げるが左ポケットからサバイバルナイフを取り出して小石と短剣を打ち返す。

「クソ！」

　急いでフード男から逃げるが相手は俺より早く肩を掴まれて地面に叩き込まれる。

「グフゥ！」

　逃げようとしてもフード男の力は強く困っているとフード男は懐を探って取り出したのは注射器と薬瓶を取り出して薬瓶の中にある薬を吸引し始める。
　物凄く嫌な予感がして逃げたくても逃げられずにいるとついに注射器の吸引を終えると俺の首の後ろに刺し込む。

「カッ！？」

　注射針が首の骨の関節を突き通り神経に届くと液体を注入されると胸がきつく縛られるほどの痛みが来て息が苦しくなり視界が赤く染まって意識が消えそうになるとフード男が何かを言うが聞いた事がある声が聞こえる。

「すまない、許してくれ許してくれ」

　フード男が何度も同じことを言うが俺はそこで意識が途切れていく。