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1章 The hierarchy of lust

Digital17.孤独な問題児の感謝

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「ば、馬鹿な……! 兵士長を倒すなんて!」

 アスモデウスはティラニカル・ブラック・フォックスが倒された事に驚いているようだ。
 ティラニカル・ブラック・フォックスはあんなに強かったのに、さらにいるのか?
 俺とイザナは少し警戒するが、白夜は笑みを浮かべながらアスモデウスの方に歩き出す。

「ま、待ってろ……今すぐぶっ飛ばしてやるぜ!」

 白夜はそう言って近づく、しかし白夜は初めて召喚した事で息を荒くして、足が少しもつれている。
 俺は白夜の肩を掴んで止めさせる。白夜は息を荒くしながら叫ぶ。

「な、何するんだよ! 今すぐあいつをぶちのめさなきゃ――ウゥ……」

 白夜は言い終える前に膝を崩してしまう。やっぱりアルターエゴを初めて召喚した事で倒れかけているな。
 俺は白夜を抱えながら片手剣を心の影シャドウを向ける。
 心の影シャドウ達は兵士長が倒された事で、俺たちの事を警戒する。こちらとしては白夜をイザナ達に任せられるからうれしい事だ。
 心の影シャドウ達は隙を狙って襲ってくる。キーカンを取り出そうとしたら一気に襲い掛かるだろう。
 しかし白夜はアルターエゴを召喚した事で意識が途切れ、俺達もティラニカル・ブラック・フォックスと戦った事でSPが少なく、HPも半分以下だ。
 HPやSPを回復したら襲われる、このまま長くいても集中が切れた瞬間に襲われる。
 これぞまさに絶体絶命だ。どうやってこの状況を逃げるか考えていると、後ろから薬きょうが落ちてくる音と乾いた空気の音が響く。
 心の影シャドウ達とアスモデウスは一体何が起きている分からず、俺は今の内に振り向く。するとそこにいたのは切嗣先生がサブマシンガンを構え撃っていた。
 心の影シャドウ達はこれ以上好きにはさせまいと、さび鉄のブレードになって襲い掛かる。
 大量のさび鉄のブレードが切嗣先生に襲い掛かる。だが切嗣先生は冷静に対処しながら呟く。

「一応援軍で来たけど……こんなふうになっているなんてな」

 切嗣先生はそう呟きながらさび鉄のブレードを倒しまくる。
 アスモデウスはしびれを切らして叫ぶ。

「俺の城に好き勝手しやがって……! おい、別の心の影シャドウを呼べ!」
『は、ハッ!』

 兵士心の影シャドウは慌てながら答え、別の心の影シャドウを呼ぶ。
 読んできた心の影シャドウは一見すれば緑の鱗を持つ蛇だ。しかしその蛇は首に雄のシンボル型の鈍器を通しており、赤い瞳を鈍く光っている。
 視界に映る名前は性欲の蛇で、レベルは6と中々高い。
 俺は懐からハンドガン〈コルトM1900〉を取り出してトリガーを引く。
 弾丸を発射したが、性欲の蛇はダンカンを容易く避けて接近してくる。
 俺は即座に片手剣を守りに構え、性欲の蛇は噛みつく。だけど何とか片手剣で防ぐ事ができた。
 俺は片手剣に噛みついてくる性欲の蛇を振り払おうと、力強く振り払って性欲の蛇を払いのける。
 性欲の蛇は振り払われて地面にのた打ち回るが、とぐろを巻いて起き上がる。
 軟体な体で避けて、吹き飛ばされたとしてもとぐろで起き上がるから少し厄介だな。
 そう思いながら襲ってくるさび鉄のブレードを払いのけていると、切嗣先生はマシンガンを下ろして叫ぶ。

「数が多い、だったら……召喚、ハサン!」

 切嗣先生はアルターエゴの名前を叫ぶ。すると背後に人影を現れてくる。
 その姿は白骨の仮面をかぶり、黒い肌をして右手にはナイフ、左手は黒い包帯を巻きつけて、体格はやせ細っている。
 やせ細っている白骨仮面男は自身の名前を叫ぶ。

『私の名は骸骨の暗殺者ハサン、私達を襲うものを消しましょう』
「よし、性欲の蛇に向けてアークを放て!」

 切嗣先生はそう命令すると、ハサンは無言でうなずいて包帯を巻き着いている左手をかざす。
 そしてその左手は闇を黒い球にして、それを性欲の蛇に向けて放つ。
 性欲の蛇は闇の球を避けるが、その球は軌道を曲がって性欲の蛇の背中に当たる。すると闇の球が爆発して性欲の蛇と共に消滅する。
 俺は性欲の蛇が消滅した事に驚くが、切嗣先生は俺達を呼ぶ。

「今すぐこっちに来るんだ! ここから脱出する!」
「何!?」

 切嗣先生はそう叫ぶと懐からキーカンを取り出す。アスモデウスはキーカンを見て、青ざめながら慌てて兵士心の影シャドウに命令する。

「お前ら、なにがなんでもここからの脱出を阻止しろ! 何が何でもだ!」
『『わ、分かりました!』』

 兵士心の影シャドウは慌てながらも、さび鉄のブレードや性欲の蛇に変形して脱出を阻止しようとしてくる。
 俺は白夜を背負い、イザナやアルフォンスと共に切嗣先生の近くに集まる。
 切嗣先生は全員いるか確認し終え、キーカンを地面に投げ捨てる。
 キーカンは地面に強く投げ捨てられた衝撃で砕け散り、そしてその中身が光り出して俺達を包み込んで消滅する。




▲▽▲▽▲▽



 
 心理之迷宮アルファポリスの第二層「不純の層」には心の影シャドウと、人類の管理者アダムス第七罪セブンスのアスモデウスしかいない。
 クロード達は切嗣の援軍によって一時撤退した。そのことにアスモデウスは歯を強く食いしばっている。
 その理由は自分の城を守る中型心の影シャドウティラニカル・ブラック・フォックスを倒されてしまった上に、その侵入者を逃がしてしまったからだ。

「クソ! あのクソガキ碌な事しかしないな! それにクロードとかいう奴がいなければ……!」

 白夜の事を嫌っている。今まで特殊野外活動部と戦ってきたが、新たにやって来たクロードとかいう奴にティラニカル・ブラック・フォックスを倒され、あまつさえ白夜をアルターエゴ使いにさせた。
 その事に苛立ちを覚えながら地面に踏み付ける。

「クソクソクソ! あのガキが邪魔ならさらに強い奴を――」
「アスモデウスさん、どうかされたのですか?」

 アスモデウスがイラつている時に少女の声がした。彼は声がした方に振り向くと、先ほどは赤く染まっていた。
 だが少女を見た瞬間に蒼く染まる。アスモデウスは唇を振るえながら言う。

「あ、アイギス様……!?」

 アスモデウスが恐怖に震えながら立ち止まる。アイギスと呼ばれた少女はアスモデウスの様子を気にせずに言う。

「博士が『それぞれの人類の管理者アダムスが油断して無いか確認して欲しい』と言われましたが、先ほど何かが起きた説明してください。もしも計画に支障が来たなら――」
「い、イエ!? 先ほど侵入者がやってきました。ですが必ずあいつ等を殺して、その生首をあのお方を差し出します」

 アスモデウスはさっきを感じて、アイギスを遮って約束を誓う。
 アイギスはその言葉を聞いて「分かりました。それでは下層にも他の方に伝えておきます」と言ってどこかに向かう。
 アスモデウスは緊張が切れて腰下ろす。
 彼は腰を抜かしたまま呟く。

「な、なにがなんでもあのお方に認めてもらえなければ……!」

 アスモデウスはそう言って自分の城に戻り、「不純の層」の扉が重く閉じる。




▲▽▲▽▲▽




 俺達は何とか心理之迷宮アルファポリスから脱出した後は、保健室に運んで白夜の様子を見ている。
 切嗣先生は心理之迷宮アルファポリスに入った生徒を確認した。しかし茶髪先輩以外いて、三人の内二人が心の影シャドウに殺された事で元に戻ったのだろう。
 今後の方針を保健室で放しあっていると、白夜はまぶたを擦りながら起き上がる。

「ココって……保健室か?」

 白夜は首を傾げながら周りを見て、少ししたら白夜は俺に「俺が気絶した後はどうなったんだ!?」と質問攻めしてきた。
 俺はありのままにこの後の事を言った。
 白夜は少し悔しそうにつぶやく。

「クソッ……あと少しだったのに!」

 白夜が悔しがっている時に誰かが入って来る。それは白夜がいた元総合格闘部の人達であった。
 白夜はそれを見て気まずそう目を逸らしながらが聞く。

「な、何しに来たんだよ? 俺みたいなやつに合うなんて……」

 白夜が気まずそうに言う。部長の男が前に出て言う。

「なぁ、白夜……俺達と一緒に総合格闘部を作り直さないか?」
「……は?」

 白夜は部長の言っている事を理解できずに言うが、部長が言うには自分たちはずっと暴力に怯え続けても部活を続けたかったが、白夜が自分たちの代わりに怒ってくれたことを悪く思っている。
 白夜はそのことを信じられずに驚くが、部長は頭を下げて言う。

「白夜、俺達の事を赦さなくてもいい。だけど皆と総合格闘部をしたいんだ!」

 白夜はそのことを聞いて涙を流し、嗚咽を漏らしながら言う。

「ウッ、くぅ……ワリィな、本当に信頼せずに……!」

 部長や部員たちも白夜につられて泣き出す。俺達は事情を説明するのは明日に決め、この場から去ろうとする。
 その時に白夜から感謝の言葉を貰う。

「ありがとう……俺を助けてくれてありがとう……!」

 俺はその言葉を聞いて喜びつつ、この場から去る。
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