電界異聞禄アルターエゴ

佐々牙嵯峨兎

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1章 The hierarchy of lust

Digital8.ワンダールーム

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 ベッドの上にスヤスヤと寝ていると、なんかバイオリンの音色が聞こえて起きる。
 するとそこにいたのは寮の自室ではなく、広めのバーだった。

「ココ、何処なんだ!?」

 俺は今、知らない場所にいる事に大声で叫んでしまう。
 少し周りを見る。内観は洋風のナイトクラブで、棚にはバーボンやウイスキーの酒瓶が置かれており、少し開けた場所に一人の女が歌っていた。
 しかしその女の顔は無く、あったのは鼻と口のみであった。女の近くにいる男も同じ姿だ。
 にしても本当にここは何だ? 心理之迷宮アルファポリスにしては少しおしゃれだし、それに心の影が出て来ない。一体全体どうなっているんだ?
 そう思っているとイザナが俺に向かって走って呼び掛ける。

「おーい、クロード!」
「あ、イザナ! というかここ何処だよ! 俺達ヘンな所に転移されたのか!?」

 俺はこのナイトクラブ擬きの空間について聞く。だって俺は歯磨きと宿題を終えて寝たら、いきなりココにいているんだぞ? 
 この状況に驚いていると、どこからかダンディーな声が落ち着かせる。

「この状況で狼狽えても仕方ない。近くにある席に座りたまえ」

 なぜかその声はどこかで聞いたことあるような感覚がして、声の言う通り俺とイザナは近くのカウンターチェアに座る。
 するとライトが点き、そこには謎の初老の男とゴスロリメイド服を着た女がソファーに座っていた。
 初老の男は恰幅が良く、白い髪の白ひげで、古い日本軍服を着ており。メイドの女は中肉中背で、雪のように白い髪のショートだ。
 俺は男の声を聞いて思い出す!
 アァァ! その声って確か俺が死にかけてた時に問いただしてきた奴だ!
 俺は初老の男に指しながら驚いていると、イザナが首を傾げて聞く。

「えっと、もしかして聞こえていたの?」
「聞こえていたのってまさか、そっちもか!?」

 俺はイザナに聞くと首を縦に頷く。
 マジかよ……。声が聞こえた時は俺と同じ状況になっていたのと「俺がもう一人のアルターエゴ使いだ」の二つだ。
 俺は初老の男がいったいなにもだろうか考えていると、初老の男が自己紹介を始める。

「まずは自己紹介からしよう。私の名前はダグザ、このワンダールームの支配人だ。そして隣にいるのが――」
「ダグザ様のメイドをしている、マリアと申します。以後ダグザ様とよろしくお願いします。」

 マリアと名乗った女はソファーに座りながらお辞儀をする。それにしてもワンダールームって、確か●モンに出てくる技じゃないか?
 そう思っているとマリアさんが丁寧に説明する。

「この世界は肉体と精神、物体と霊体の狭間に存在し、世界の基準は本人が抱えた悩みで変わる事があります」

 俺はマリアさんの説明を聞きながら考える。
 仮に本人が抱え悩みなら、何でこんなダンディーなバーになっているんだろうか?
 そう考えているとダグザさんは懐から一枚の白紙カードを取り出して言う。

「私の力はこのカードに力を与える事……分かりやすく言えば符器タロット霊気アルカナを宿し、アルターエゴを複数召喚する事だ」
「「何ィ!?」」

 俺とイザナはそのことを聞いて、前のめりに叫んでしまう。
 アルターエゴを複数所持……それってかなり戦力アップするんじゃないか!?
 しかしそれなりに必要な事がある。ダグザさんは少し俺達を落ち着かせながら説明する。

「その興奮は分かるが一度は落ち着け、この力は当然代償がある。最初に符器タロット霊気アルカナを宿すには『コンパク』と呼ばれる物体を注入すること。そしてこの力は〈愚者フール〉と〈審判ジャッジメント〉しか扱えぬことだ」
「ちなみに『コンパク』とは心の影シャドウを倒して得られるエネルギー状の物体でございます」

 マリアさんが説明を補足し、絵にして分かりやすくした。
 分かりやすく言えば、符器タロット霊気アルカナを宿すには大量の心の影シャドウを倒してコンパクを手に入れる。そのコンパクを使ってアルターエゴを手に入れて再び心の影シャドウを倒すという無限ループに近い物だろう。
 そう思いながら視界に映るバーを見る。今持っているコンパクは150コンパク、イザナも俺と同じ量だ。

「なるほど、でしたらこれらはよろしいでしょうか?」

 マリアさんはそれを聞くと分厚い辞書を開いて見せる。

 ●魔術師マジシャンシャナ……【レベル】2、【攻撃力】19【防御力】15【魔力】20【素早さ】18【運】12、【スキル】アクリル〈消費SP3〉、ヒール〈消費SP5〉。「レベル4で開放」マハアクリル〈消費Sp6〉、「レベル5で開放」妖精の癒し〈消費Sp7〉
 ●魔術師マジシャンピクシー……【レベル】2、【攻撃力】15【防御力】15【魔力】22【素早さ】18【運】15、【スキル】ボルト〈消費SP3〉、ヒール〈消費SP5〉。「レベル4で開放」マハボルト〈消費Sp6〉、「レベル5で開放」妖精のいたずら〈消費Sp7〉
 ●女教皇プリーステスラハム……【レベル】2、【攻撃力】21【防御力】17【魔力】19【素早さ】19【運】16、【スキル】アクリル〈消費SP3〉、カオス〈消費SP5〉。「レベル4で開放」マハアクリル〈消費Sp6〉、「レベル5で開放」乱れ殴り〈消費HP7〉
 ●魔術師マジシャンサラマンダー……【レベル】2、【攻撃力】19【防御力】17【魔力】21【素早さ】18【運】12、【スキル】ヒート〈消費SP3〉、ウィング〈消費SP5〉。「レベル4で開放」マハヒート〈消費Sp6〉、「レベル5で開放」乱れ殴り〈消費HP7〉
 この四体だけど俺とイザナが持っているハクは150ずつ、一体で150だから合わせて二人合わせて二体手に入れるな。
 ちなみに魔法は四属性で、俺のはボルト=電撃、イザナのはウィング=疾風。だから俺はサラマンダー、イザナはラハムを選んだ。
 さっそくマリアさんは符器タロットとコンパクを机の上に置く、するとどこからか分からないハンマーを取り出し、一気に勢い良く振り下ろす!

「ふん!」
「「エェェェェェ!?」」

 俺とイザナはそれを見て大声で叫んでしまう。いや、普通こんなミステリアスな所だと、魔法的な力で生み出すのに、この人はハンマーを使って生み出した。
 普通魔術的な奴使うのに、何でハンマーなわけ!?
 俺とイザナは目の前で起きている事に理解できずにいると、マリアさんは二枚のカードを俺とイザナに見せ言う。

「お望み通り、サラマンダーとラハムを生み出しました。どうぞこれを」
「は、ハイ……?」
「わ、分かりました……」

 俺とイザナはそれを受け取ると、マリアさんがいきなり手刀を食らわせる。
 それを食らった俺達は「「ガビーン!?」」と叫んで気絶した。
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