上 下
3 / 4
プロローグ

第3話 プロローグ その3 これって運命なの?

しおりを挟む
「ねぇ、さっきから食べてばっかりだけど、話とかしないの?」

 黙々と一人で料理を食べていた冬馬に、突然、美人の女性が話しかけてきた。
 冬馬はちょっと驚いた。まさか声をかけてくれるような女性がいるとは思わなかったから。しかも結構美人だし。

「自分は人数足りないからって、無理やり駆り出されたからなぁ。正直、こういう合コンって慣れていないし、どう接したらいいかわからないんだ。だから会費分だけ食べて帰るつもりだ」

 冬馬はさも面倒くさそうに、下を向きながら返事をした。まぁどうせもう帰るつもりだし。こんな自分なんて相手にはしないだろう、そう思っていた。

「折角の機会なんだからさぁ、ちょっと話してみない?私も無理やり連れてこられたけど、誘ってくれた人は今日来ていないし、知り合いもいないから、退屈していたんだぁ」

 驚いた。こんなしみったれたような自分を相手にするような人がいるとは。
 冬馬はちょっと話をしてみてもいいかなと思えてきた。流石に何かのセールスとか宗教の勧誘とかではないと思うけれど。

「それなら自分じゃなくても他の人に話しかけたら?自分は話下手だし、貴方は美人だから、もっとイケメンを誘ってもいいんじゃない?」
 冬馬はちょっと牽制してみた。時々、言わなくてもいい事を言ってしまうのは悪い癖だと思いつつ、この癖は治らないものだ。

「さっきも結構カッコいい人に声かけられたけど、如何にも下心丸出しで気分悪くしちゃった。それも連続で声かけられて。でもあなたなら下心もなさそうな感じだし、悪い人には見えないようだから。ねぇ、いいでしょ?」
「でも自分と話してもつまらないと思うけど、それでいいなら……」
「やった♡色々お話しましょ♡そうと決まったらまず飲みましょうよ。ねぇ、乾杯しよ♡」

 やたらと馴れ馴れしい感じの女性は、近くのテーブルからピッチャーを持ってきて、並々と生ビールをグラスに注いだ。おいおい、これ全部飲むんじゃないよな?女性は冬馬にもグラスを用意してビールを注ぐ。

「では私たちの出会いに乾杯♡」

 これが、冬馬と夏子のファーストコンタクトだった。
 二人の歩みは、ここから始まったのだ。


「まずは自己紹介ね。名前教えて」
「自分は北野冬馬。会社で総務の仕事をしている。見ての通り、イケメンでも何でもない地味な人間だ」
「自己紹介でそんな否定的な事言わないの。私は南田夏子。今のところ、無職のすねかじりね」
「自分だって否定的な事言ってるでしょ。お互い様だね」
「むぅ、あなたに合わせたの。ニートしているけど、これでも家事全般は得意なの」

 そう言いながら、夏子はグラス満杯のビールを一気に流し込んだ。おいおい、やっぱりそのピッチャーのビールを飲み干すつもりなのか。大丈夫なのかと、冬馬でなくても心配になる。

「おいおい、一気に飲み過ぎだよ。ペース考えた方がいいぞ」
「大丈夫、大丈夫、夏子さんはちょっとやそっとじゃ酔いつぶれません♡」
「そういう事言っている人が一番危ないんだよ。それで倒れている人を何人も見ている。ペース配分考えようよ」

 冬馬は、今まで飲み会の席で酔い潰れた人の補助を何度となくやってきたので、夏子を本気で心配していた。冗談でなく、大丈夫を連呼している人は危ないのだ。

「ありがと。普通は酔い潰してお持ち帰りするものなのに、誠実なのね」
「貴方はろくでなしとばっかり付き合ってきたのか?普通はそんな事考えないぞ」
「夏子でいいわよ。その代わりあなたの事は冬馬くんって呼ぶから」
「どう見ても自分の方が年上だろ?慣れ慣れしくないか?」
「だって、冬馬くんって堅物の弟みたいなイメージだもん。ダメ?」
「ダメって言われてもなぁ……」
「じゃあ決まりね♡もっと飲もうよ、冬馬くん♡」

 そう言いながら夏子は冬馬のグラスにビールを注いだ。どう考えても自分よりも夏子の方が年下だ。年下に舐められているはずなのに、冬馬には嫌な気分は感じられなかった。何でだろう?これが夏子の人柄なのかな?
 そういえば、自分は会話するのが億劫で嫌なはずなのに、何故か夏子との会話は楽しく感じられた。元々、冬馬は女性との会話には慣れていないし、いざ会話となったらしどろもどろになってしまう事も多々ある。でも夏子との会話は普通に出来ている。何でだろう?酒の力もあるからなのか。いや、そんな事はどうでもいい。
 夏子とはもっと話をしてみたい。こんな気分になったのはいつ以来だろうか?
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

女子高生は卒業間近の先輩に告白する。全裸で。

矢木羽研
恋愛
図書委員の女子高生(小柄ちっぱい眼鏡)が、卒業間近の先輩男子に告白します。全裸で。 女の子が裸になるだけの話。それ以上の行為はありません。 取って付けたようなバレンタインネタあり。 カクヨムでも同内容で公開しています。

幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。

スタジオ.T
青春
 幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。  そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。    ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。

男女比の狂った世界で愛を振りまく

キョウキョウ
恋愛
男女比が1:10という、男性の数が少ない世界に転生した主人公の七沢直人(ななさわなおと)。 その世界の男性は無気力な人が多くて、異性その恋愛にも消極的。逆に、女性たちは恋愛に飢え続けていた。どうにかして男性と仲良くなりたい。イチャイチャしたい。 直人は他の男性たちと違って、欲求を強く感じていた。女性とイチャイチャしたいし、楽しく過ごしたい。 生まれた瞬間から愛され続けてきた七沢直人は、その愛を周りの女性に返そうと思った。 デートしたり、手料理を振る舞ったり、一緒に趣味を楽しんだりする。その他にも、色々と。 本作品は、男女比の異なる世界の女性たちと積極的に触れ合っていく様子を描く物語です。 ※カクヨムにも掲載中の作品です。

恋人の水着は想像以上に刺激的だった

ヘロディア
恋愛
プールにデートに行くことになった主人公と恋人。 恋人の水着が刺激的すぎた主人公は…

壁の薄いアパートで、隣の部屋から喘ぎ声がする

サドラ
恋愛
最近付き合い始めた彼女とアパートにいる主人公。しかし、隣の部屋からの喘ぎ声が壁が薄いせいで聞こえてくる。そのせいで欲情が刺激された両者はー

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

車の中で会社の後輩を喘がせている

ヘロディア
恋愛
会社の後輩と”そういう”関係にある主人公。 彼らはどこでも交わっていく…

先生!放課後の隣の教室から女子の喘ぎ声が聴こえました…

ヘロディア
恋愛
居残りを余儀なくされた高校生の主人公。 しかし、隣の部屋からかすかに女子の喘ぎ声が聴こえてくるのであった。 気になって覗いてみた主人公は、衝撃的な光景を目の当たりにする…

処理中です...