vamps

まめ太郎

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 ふいに手術中のランプが消え、扉が開くと、移動式のベッドの上に載せられたシュリが目の前を通り過ぎた。
「シュリ」
 ヒューイと俺がベッドに駆け寄る。

 声をかけてもシュリは目を閉じたままだった。
「まだ麻酔から目覚めていないので」
 看護師にやんわりと遠ざけられ、立ちすくむ俺達の横をベットが通り過ぎてゆく。
 続いて手術室から出てきた医者に声をかけられた。

「百瀬シュリさんのご家族ですか? 」
「いえ、友人です。シュリの父親は今、ちょっと来られなくて」
「私はシュリ様と長年家族のように付き合ってきた者です。シュリ様の父親からもシュリ様のことを頼むと言われ、ここに参りました。シュリ様は大丈夫なんでしょうか? 」
 顔面蒼白な秘書に、医者は穏やかな笑みを浮かべて頷いた。

「落ち着いてください。手術は成功しました。太い血管を傷つけていたので、出血が酷く手術が長引いてしまいましたが、もう心配はありませんよ」
 秘書はそこでがくりと膝をついた。
「ああ、良かった。先生、ありがとうございます」
「そんな、医者として当然のことをしたまでです」
 医者は秘書に手を貸して、彼を立たせた。

「ただ少し傷跡が残ってしまいましてね。そこまで目立つものではありませんが、女性ですし、気にされるかもしれません」
「傷跡を消すことは不可能なんですか? 」
「あとは、美容外科の分野になるので、私からは何とも」
「分かりました。ありがとうございます」
 医者は一礼して立ち去り、秘書の男はどこからかかかってきた電話をうけ、廊下の奥へと歩きだした。

「とりあえずはマックもシュリも生きていて良かった」
「うん」
 俺は隣に立つ、ヒューイの手を握りしめた。
 ヒューイの視線がこちらを向く。

「さっき、助けてくれただろ? ありがとう」
「ああ」
 ルディとキースが屋敷から逃げた時の混乱を思い出したのか、ヒューイが小さく頷く。
「これからもお前を守り続けるよ。あの時の償いなんかじゃなく、俺がそうしたいから」
 ヒューイが俺の指に、指を絡める。

「そのことで他の誰かを守れなくなるかもしれない。それでも俺はアレンを守るよ。初めてできたんだ。自分の命よりも大切にしたい誰かっていう存在が」
 ヒューイと俺は見つめ合った。
「大切にしてくれてありがとう」
 そう言うと、笑顔の俺の頬をすぅっと涙が滑り落ちた。
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