vamps

まめ太郎

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「あそこにいたヴァンプの子供たちはみんな、人間から差別や暴力を受けていた」
 2人でシャワーを浴びて、それでもまだ離れがたくて。
 そんな俺の気持ちが伝わったのか、ヒューイは帰らずにいてくれた。
 天井を見つめ、ベッドに横たわる俺の横にヒューイも寝転んだ。
 俺があの場所で感じたことを話しても黙って聞いてくれている。

「俺はたまたま良い環境で良い両親のもと育ったから、そう嫌な思いもしないでここまで来れた。人間を本気で嫌ったことなんて一度もない」
「うん」
 アレンは相槌を打つと、俺が腹の上で組んでいた両手の上にそっと掌を重ねた。

「偶然そういう環境で産まれたってだけで、俺だってあの子たちと同じ様な目にあったら、やっぱり辛くて人間を憎んだり、ルディを神様みたいに思っちゃったりするんだろうなって」
「うん」
「どうしても他人事とは思えなくて」
 ヒューイは俺の目尻に浮かぶ涙を拭うと、抱きよせた。
「ああ、アレン」
 俺もヒューイにしがみつくように抱き返す。

「お前が誰より優しい奴だって分かっていたのに、すまない。お前の気持ちを無視するような真似をして」
「俺はっ、優しくなんて」 
 反論しようとする俺の瞼と額にヒューイが唇を落とす。
「しーっ。アレン、お前は優しいよ。そんなお前がテロリストの仲間だなんて、もちろん思ってやしなかった。それでもお前が警察やシュリに疑われているのが悔しくて、我慢がならなかった。早く何とかしたくて、お前の気持ちを無視してしまったな。本当にすまない。ごめんな、アレン」
 ヒューイに真摯に謝られ、喉奥に熱いものがこみあげる。

「ああ、ヒューイ。俺は、俺はっ」
「アレン。泣いていいんだ。お前は俺のせいで攫われ、心に傷を負った。こんなことしかできないがせめて、泣いているお前を俺に抱きしめさせてくれ」
 ヒューイの胸に額を押しつけ、俺は泣きじゃくった。
 あそこでは自分の価値観が揺らぐようなことが何度も起こった。
 善悪について何度も考えさせられた。
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