vamps

まめ太郎

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 キースの手配した車に乗りこもうとすると、子供たちにぐるりと周りを囲まれた。
「帰っちゃうの? 」
「今度いつ来る? 」
「次はもっとたくさん遊ぼう」

 一緒に過ごした時間は短かったにも関わらず、子供たちが本気で俺との別れを惜しんでいるのが伝わってきて、思わず笑みがこぼれる。
 1人1人の頭を撫で、「元気で」とだけ告げ、車に乗りこむ。

「やっぱりここに残りたくなった? 」
 助手席からルディが問う。
 俺は黙って首を振った。
 
「出発してくれ」
 車のエンジンがかかり、手を振る子供たちの姿が小さくなる。
 ふと見上げると、建物の窓辺に立っているモルガンと目が合った。
 一瞬の事だったが、モルガンが泣き笑いのような表情を浮かべる。

 俺がここを出て行くと決めたことはモルガンにもそのタイであるゾーイにも伝えていた。
 それを聞いたゾーイは低く罵りの言葉を呟いて部屋から出て行ってしまい、俺とモルガンは2人きりで部屋に残された。

「ごめんなさい。本当は私、分かっていたの。こんなことをしたってあなたがヒューイから離れられるわけないって。私だって同じだから」
 モルガンは自分の頬を滑る涙をそっと拭った。
「アレン、信頼を裏切る様な真似をして本当にごめんなさい。もう二度と会えないだろうけど、遠くからアレンの幸せを願ってるわ」
 俺はモルガンをハグした。
 モルガンのしたことを許せるかと言われたら、許せはしない。
 ただもしタイの相手に命令されたのなら、断ることができないのは理解できるから。

「ありがとう。俺のヴァンプの初めての友達になってくれて」
 モルガンの嗚咽が耳元で聞こえた。

「薬、飲んで」
 回想に耽っていた俺をルディの声が呼び戻す。
 行きに貰った錠剤と水のペットボトルを放られ、慌ててキャッチする。
 飲みたくはないが、飲まずには帰してもらえないだろう。
 飲みこむとまたすぐに抗いがたい眠気が襲ってきた。

「いいのか? 本当に」
「何が? 」
 キースとルディの声を潜めた会話が聞こえる。
「このままアレンを帰しちまって。色々警察に話されたら面倒だぞ」
「うーん」
「お前がやりにくいって言うなら、俺がこいつを」
 キースの言葉に恐怖を感じたが、眠気がそれに勝った。
 殺されるかもしれない状況で、俺はあっけなく眠りに落ちた。
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