169 / 233
153
しおりを挟む
「そうか。残念だなあ」
笑顔のルディは残念そうには全く見えず、長い足を投げ出した。
俺はごくりと唾を飲んだ。
「俺をどうするつもりだ? 」
「君を帰りたい場所に送り届けるよ」
ルディの言葉に、緊張に強ばっていた体から力が抜けた。
「本当に帰れるんだな? 」
ルディが頷く。
極度の緊張のせいで、目の前が薄暗く感じる。
大きなため息をついて頭を振った。
「君に仲間になって欲しかった。ただそれだけなんだけどねえ」
顔を上げた俺は綺麗な顔で微笑むルディと目を合わせた。
「君、意外としぶといね。君の目の前で別の女性を選んで、代わりに君をいけにえみたいに差し出したタイにまだ忠誠を誓えるだなんて。俺なら無理だなあ」
「ヒューイがそういう選択をせざるを得なかったのは、あんたたちのせいだろ」
睨みつけても、ルディは笑みを崩さなかった。
「まあ、きみは家族も向こうにいるしね。なかなかすぐにこっちを選んだりもできないか」
キースが近づいて来て、ルディの傍に立った。
「結局のところ悔しいだけじゃないのか。初めてお前の予想が外れたから」
「別にそんなんじゃないよ」
ルディは唇を尖らせると、ぷいと横を向いた。
キースと話している時のルディはいつもより幼く見えた。
「とにかく気は済んだだろ。早く俺を解放しろよ」
ふいにルディが目を細め俺を見る。
「アレンがヒューイと共にあることが本当に幸せなら、俺だってこんな風に君を無理やり攫ったりはしなかった」
俺は言葉に詰まってルディを見つめた。
「断言するよ。ヒューイはこれからだって常に人間のシュリを選び続ける。君の隣でね」
「そんなのは当たり前だろ。ヒューイはシュリのことがずっと好きだったんだから」
「本当に君はそれでいいの? 」
頷こうとしたのに、鼻の奥がツンと痛んで、ただ俯くことしかできなかった。
「やっぱりここに残ればいいのに」
ルディの呟きに一瞬同意しそうになった自分が怖かった。
でもここにいたって幸せになれるわけじゃない。
モルガンのどこか寂し気な笑顔を思い出し、唇を噛んだ。
「送ってくれないか。早く家に帰りたいんだ」
きっぱり言うとルディはふっと息を吐き、手を上げた。
「キース、車の用意を」
窓の外からはまだ甲高い子供の笑い声が響いていた。
笑顔のルディは残念そうには全く見えず、長い足を投げ出した。
俺はごくりと唾を飲んだ。
「俺をどうするつもりだ? 」
「君を帰りたい場所に送り届けるよ」
ルディの言葉に、緊張に強ばっていた体から力が抜けた。
「本当に帰れるんだな? 」
ルディが頷く。
極度の緊張のせいで、目の前が薄暗く感じる。
大きなため息をついて頭を振った。
「君に仲間になって欲しかった。ただそれだけなんだけどねえ」
顔を上げた俺は綺麗な顔で微笑むルディと目を合わせた。
「君、意外としぶといね。君の目の前で別の女性を選んで、代わりに君をいけにえみたいに差し出したタイにまだ忠誠を誓えるだなんて。俺なら無理だなあ」
「ヒューイがそういう選択をせざるを得なかったのは、あんたたちのせいだろ」
睨みつけても、ルディは笑みを崩さなかった。
「まあ、きみは家族も向こうにいるしね。なかなかすぐにこっちを選んだりもできないか」
キースが近づいて来て、ルディの傍に立った。
「結局のところ悔しいだけじゃないのか。初めてお前の予想が外れたから」
「別にそんなんじゃないよ」
ルディは唇を尖らせると、ぷいと横を向いた。
キースと話している時のルディはいつもより幼く見えた。
「とにかく気は済んだだろ。早く俺を解放しろよ」
ふいにルディが目を細め俺を見る。
「アレンがヒューイと共にあることが本当に幸せなら、俺だってこんな風に君を無理やり攫ったりはしなかった」
俺は言葉に詰まってルディを見つめた。
「断言するよ。ヒューイはこれからだって常に人間のシュリを選び続ける。君の隣でね」
「そんなのは当たり前だろ。ヒューイはシュリのことがずっと好きだったんだから」
「本当に君はそれでいいの? 」
頷こうとしたのに、鼻の奥がツンと痛んで、ただ俯くことしかできなかった。
「やっぱりここに残ればいいのに」
ルディの呟きに一瞬同意しそうになった自分が怖かった。
でもここにいたって幸せになれるわけじゃない。
モルガンのどこか寂し気な笑顔を思い出し、唇を噛んだ。
「送ってくれないか。早く家に帰りたいんだ」
きっぱり言うとルディはふっと息を吐き、手を上げた。
「キース、車の用意を」
窓の外からはまだ甲高い子供の笑い声が響いていた。
0
お気に入りに追加
328
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜
きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員
Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。
そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。
初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。
甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。
第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。
※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり)
※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り
初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。
実力を隠し「例え長男でも無能に家は継がせん。他家に養子に出す」と親父殿に言われたところまでは計算通りだったが、まさかハーレム生活になるとは
竹井ゴールド
ライト文芸
日本国内トップ5に入る異能力者の名家、東条院。
その宗家本流の嫡子に生まれた東条院青夜は子供の頃に実母に「16歳までに東条院の家を出ないと命を落とす事になる」と予言され、無能を演じ続け、父親や後妻、異母弟や異母妹、親族や許嫁に馬鹿にされながらも、念願適って中学卒業の春休みに東条院家から田中家に養子に出された。
青夜は4月が誕生日なのでギリギリ16歳までに家を出た訳だが。
その後がよろしくない。
青夜を引き取った田中家の義父、一狼は53歳ながら若い妻を持ち、4人の娘の父親でもあったからだ。
妻、21歳、一狼の8人目の妻、愛。
長女、25歳、皇宮警察の異能力部隊所属、弥生。
次女、22歳、田中流空手道場の師範代、葉月。
三女、19歳、離婚したフランス系アメリカ人の3人目の妻が産んだハーフ、アンジェリカ。
四女、17歳、死別した4人目の妻が産んだ中国系ハーフ、シャンリー。
この5人とも青夜は家族となり、
・・・何これ? 少し想定外なんだけど。
【2023/3/23、24hポイント26万4600pt突破】
【2023/7/11、累計ポイント550万pt突破】
【2023/6/5、お気に入り数2130突破】
【アルファポリスのみの投稿です】
【第6回ライト文芸大賞、22万7046pt、2位】
【2023/6/30、メールが来て出版申請、8/1、慰めメール】
【未完】
実はスライムって最強なんだよ?初期ステータスが低すぎてレベルアップが出来ないだけ…
小桃
ファンタジー
商業高校へ通う女子高校生一条 遥は通学時に仔犬が車に轢かれそうになった所を助けようとして車に轢かれ死亡する。この行動に獣の神は心を打たれ、彼女を転生させようとする。遥は獣の神より転生を打診され5つの希望を叶えると言われたので、希望を伝える。
1.最強になれる種族
2.無限収納
3.変幻自在
4.並列思考
5.スキルコピー
5つの希望を叶えられ遥は新たな世界へ転生する、その姿はスライムだった…最強になる種族で転生したはずなのにスライムに…遥はスライムとしてどう生きていくのか?スライムに転生した少女の物語が始まるのであった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる