vamps

まめ太郎

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「そうか。残念だなあ」
 笑顔のルディは残念そうには全く見えず、長い足を投げ出した。
 俺はごくりと唾を飲んだ。
「俺をどうするつもりだ? 」
「君を帰りたい場所に送り届けるよ」
 ルディの言葉に、緊張に強ばっていた体から力が抜けた。

「本当に帰れるんだな? 」
 ルディが頷く。
 極度の緊張のせいで、目の前が薄暗く感じる。
 大きなため息をついて頭を振った。

「君に仲間になって欲しかった。ただそれだけなんだけどねえ」
 顔を上げた俺は綺麗な顔で微笑むルディと目を合わせた。
「君、意外としぶといね。君の目の前で別の女性を選んで、代わりに君をいけにえみたいに差し出したタイにまだ忠誠を誓えるだなんて。俺なら無理だなあ」
「ヒューイがそういう選択をせざるを得なかったのは、あんたたちのせいだろ」
 睨みつけても、ルディは笑みを崩さなかった。
「まあ、きみは家族も向こうにいるしね。なかなかすぐにこっちを選んだりもできないか」
 キースが近づいて来て、ルディの傍に立った。

「結局のところ悔しいだけじゃないのか。初めてお前の予想が外れたから」
「別にそんなんじゃないよ」
 ルディは唇を尖らせると、ぷいと横を向いた。
 キースと話している時のルディはいつもより幼く見えた。

「とにかく気は済んだだろ。早く俺を解放しろよ」
 ふいにルディが目を細め俺を見る。
「アレンがヒューイと共にあることが本当に幸せなら、俺だってこんな風に君を無理やり攫ったりはしなかった」
 俺は言葉に詰まってルディを見つめた。
「断言するよ。ヒューイはこれからだって常に人間のシュリを選び続ける。君の隣でね」
「そんなのは当たり前だろ。ヒューイはシュリのことがずっと好きだったんだから」
「本当に君はそれでいいの? 」
 頷こうとしたのに、鼻の奥がツンと痛んで、ただ俯くことしかできなかった。

「やっぱりここに残ればいいのに」
 ルディの呟きに一瞬同意しそうになった自分が怖かった。
 でもここにいたって幸せになれるわけじゃない。
 モルガンのどこか寂し気な笑顔を思い出し、唇を噛んだ。

「送ってくれないか。早く家に帰りたいんだ」
 きっぱり言うとルディはふっと息を吐き、手を上げた。
「キース、車の用意を」
 窓の外からはまだ甲高い子供の笑い声が響いていた。
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