147 / 233
喪失と無力【ヒューイ視点】
しおりを挟む
まるで見計らっていたかのように救急車とパトカーのサイレンが近づいてくる。
ヒューイはシュリを抱きしめたまま点滅する光にむかって大きく手を振った。
警察官に事情を聴かれながら、毛布に包まれたシュリと一緒に救急車に乗りこむ。
シュリの怪我は見た目ほど酷くない。
その事実を聞かされてヒューイはようやく肩の力を抜いた。
アレンを犠牲にしてまで助けたシュリだ。
大したことがないことに越したことはない。
アレンのことを考えるといてもたっても居られず、ヒューイは叫びだしそうになった。
パトカーがタイミングよくあの場に現れたのは、匿名で自由解放軍のボスと怪我人がいる場所を教えるから直ぐにむかえと通報があったおかげらしい。
ヒューイから事情を聴いていた刑事の顔が曇る。
「すみません。もう一度最初から話してもらえますか? 」
もう聞き飽きた台詞にヒューイは刑事を怒鳴りつけたい気持ちを抑え、頷いた。病院の廊下での聴取はもう2時間を超していた。
ヒューイはこんなところで話を聞くよりも刑事にはさっさとアレンを探しに行って欲しかった。
ため息をついて、もう一度どうしてあそこに自分とシュリがいたかを説明する。
「俺はシュリから大事な話があるって、カレッジの裏手に呼び出されたんです。シュリを待っていたら一台の車がやって来て、中にはシュリとルディとキースが乗っていました。シュリは拘束されていて、俺にも車に乗るようルディが言いました。シュリにナイフが突きつけられていたから、俺は逆らうことができませんでした。
そのまま山奥のあの場所まで連れていかれて、降りる様に言われました。
少ししたら、アレンとモルガンが車でやって来て、モルガンもあいつらの仲間だと分かりました」
刑事は何度か頷く。
「つまりモルガンは自由解放軍の仲間で、アレンもそうだったと」
ヒューイは刑事を睨みつけた。
「違うっ。何でそうなるんだ。アレンはモルガンに騙されてむりやりあそこに連れて来られただけだ」
「しかしシュリさんはそのように証言していますが」
怒り心頭のヒューイを刑事は困惑した表情で見つめた。
ヒューイはシュリを抱きしめたまま点滅する光にむかって大きく手を振った。
警察官に事情を聴かれながら、毛布に包まれたシュリと一緒に救急車に乗りこむ。
シュリの怪我は見た目ほど酷くない。
その事実を聞かされてヒューイはようやく肩の力を抜いた。
アレンを犠牲にしてまで助けたシュリだ。
大したことがないことに越したことはない。
アレンのことを考えるといてもたっても居られず、ヒューイは叫びだしそうになった。
パトカーがタイミングよくあの場に現れたのは、匿名で自由解放軍のボスと怪我人がいる場所を教えるから直ぐにむかえと通報があったおかげらしい。
ヒューイから事情を聴いていた刑事の顔が曇る。
「すみません。もう一度最初から話してもらえますか? 」
もう聞き飽きた台詞にヒューイは刑事を怒鳴りつけたい気持ちを抑え、頷いた。病院の廊下での聴取はもう2時間を超していた。
ヒューイはこんなところで話を聞くよりも刑事にはさっさとアレンを探しに行って欲しかった。
ため息をついて、もう一度どうしてあそこに自分とシュリがいたかを説明する。
「俺はシュリから大事な話があるって、カレッジの裏手に呼び出されたんです。シュリを待っていたら一台の車がやって来て、中にはシュリとルディとキースが乗っていました。シュリは拘束されていて、俺にも車に乗るようルディが言いました。シュリにナイフが突きつけられていたから、俺は逆らうことができませんでした。
そのまま山奥のあの場所まで連れていかれて、降りる様に言われました。
少ししたら、アレンとモルガンが車でやって来て、モルガンもあいつらの仲間だと分かりました」
刑事は何度か頷く。
「つまりモルガンは自由解放軍の仲間で、アレンもそうだったと」
ヒューイは刑事を睨みつけた。
「違うっ。何でそうなるんだ。アレンはモルガンに騙されてむりやりあそこに連れて来られただけだ」
「しかしシュリさんはそのように証言していますが」
怒り心頭のヒューイを刑事は困惑した表情で見つめた。
0
お気に入りに追加
328
あなたにおすすめの小説
総受けルート確定のBLゲーの主人公に転生してしまったんだけど、ここからソロエンドを迎えるにはどうすればいい?
寺一(テライチ)
BL
──妹よ。にいちゃんは、これから五人の男に抱かれるかもしれません。
ユズイはシスコン気味なことを除けばごくふつうの男子高校生。
ある日、熱をだした妹にかわって彼女が予約したゲームを店まで取りにいくことに。
その帰り道、ユズイは階段から足を踏みはずして命を落としてしまう。
そこに現れた女神さまは「あなたはこんなにはやく死ぬはずではなかった、お詫びに好きな条件で転生させてあげます」と言う。
それに「チート転生がしてみたい」と答えるユズイ。
女神さまは喜んで願いを叶えてくれた……ただしBLゲーの世界で。
BLゲーでのチート。それはとにかく攻略対象の好感度がバグレベルで上がっていくということ。
このままではなにもしなくても総受けルートが確定してしまう!
男にモテても仕方ないとユズイはソロエンドを目指すが、チートを望んだ代償は大きくて……!?
溺愛&執着されまくりの学園ラブコメです。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
転生悪役令息、雌落ち回避で溺愛地獄!?義兄がラスボスです!
めがねあざらし
BL
人気BLゲーム『ノエル』の悪役令息リアムに転生した俺。
ゲームの中では「雌落ちエンド」しか用意されていない絶望的な未来が待っている。
兄の過剰な溺愛をかわしながらフラグを回避しようと奮闘する俺だが、いつしか兄の目に奇妙な影が──。
義兄の溺愛が執着へと変わり、ついには「ラスボス化」!?
このままじゃゲームオーバー確定!?俺は義兄を救い、ハッピーエンドを迎えられるのか……。
※タイトル変更(2024/11/27)
腐男子(攻め)主人公の息子に転生した様なので夢の推しカプをサポートしたいと思います
たむたむみったむ
BL
前世腐男子だった記憶を持つライル(5歳)前世でハマっていた漫画の(攻め)主人公の息子に転生したのをいい事に、自分の推しカプ (攻め)主人公レイナード×悪役令息リュシアンを実現させるべく奔走する毎日。リュシアンの美しさに自分を見失ない(受け)主人公リヒトの優しさに胸を痛めながらもポンコツライルの脳筋レイナード誘導作戦は成功するのだろうか?
そしてライルの知らないところでばかり起こる熱い展開を、いつか目にする事が……できればいいな。
ほのぼのまったり進行です。
他サイトにも投稿しておりますが、こちら改めて書き直した物になります。
異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします
み馬
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。
わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!?
これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。
おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。
※ 独自設定、造語、出産描写あり。幕開け(前置き)長め。第21話に登場人物紹介を載せましたので、ご参考ください。
★お試し読みは、第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★
★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★
社畜だけど異世界では推し騎士の伴侶になってます⁈
めがねあざらし
BL
気がつくと、そこはゲーム『クレセント・ナイツ』の世界だった。
しかも俺は、推しキャラ・レイ=エヴァンスの“伴侶”になっていて……⁈
記憶喪失の俺に課されたのは、彼と共に“世界を救う鍵”として戦う使命。
しかし、レイとの誓いに隠された真実や、迫りくる敵の陰謀が俺たちを追い詰める――。
異世界で見つけた愛〜推し騎士との奇跡の絆!
推しとの距離が近すぎる、命懸けの異世界ラブファンタジー、ここに開幕!
いっぱい命じて〜無自覚SubはヤンキーDomに甘えたい〜
きよひ
BL
無愛想な高一Domヤンキー×Subの自覚がない高三サッカー部員
Normalの諏訪大輝は近頃、謎の体調不良に悩まされていた。
そんな折に出会った金髪の一年生、甘井呂翔。
初めて会った瞬間から甘井呂に惹かれるものがあった諏訪は、Domである彼がPlayする様子を覗き見てしまう。
甘井呂に優しく支配されるSubに自分を重ねて胸を熱くしたことに戸惑う諏訪だが……。
第二性に振り回されながらも、互いだけを求め合うようになる青春の物語。
※現代ベースのDom/Subユニバースの世界観(独自解釈・オリジナル要素あり)
※不良の喧嘩描写、イジメ描写有り
初日は5話更新、翌日からは2話ずつ更新の予定です。
転生したけど赤ちゃんの頃から運命に囲われてて鬱陶しい
翡翠飾
BL
普通に高校生として学校に通っていたはずだが、気が付いたら雨の中道端で動けなくなっていた。寒くて死にかけていたら、通りかかった馬車から降りてきた12歳くらいの美少年に拾われ、何やら大きい屋敷に連れていかれる。
それから温かいご飯食べさせてもらったり、お風呂に入れてもらったり、柔らかいベッドで寝かせてもらったり、撫でてもらったり、ボールとかもらったり、それを投げてもらったり───ん?
「え、俺何か、犬になってない?」
豹獣人の番大好き大公子(12)×ポメラニアン獣人転生者(1)の話。
※どんどん年齢は上がっていきます。
※設定が多く感じたのでオメガバースを無くしました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる