vamps

パーティーの終わり9

　あいつ俺のジャケットを相手にダンスをしているのか。

　1人でステップを踏むアレンを見ているうちにヒューイの胸に温かいものが満ちていく。

　ヒューイはそっと扉を開けると、アレンに近づいた。
　声をかけ、驚いている顔のアレンと目が合うとヒューイはふっと微笑んだ。
　ホールにいた時より、このうすら寒くて朽ち果てた教室にいる方がずっとリラックスできて、居心地がいいとヒューイは感じた。

　踊ろうと誘うと足を踏むかもしれないと躊躇するアレンにヒューイは愛しさが増した。

　本当に可愛い奴だ。

　自然とそんな感想が浮かぶ。
　シュリと踊り足を踏んだという嘘のエピソードまででっち上げて、ヒューイはアレンと躍った。

　今時小学生だってもっとまともに踊れるだろうと思うほど、アレンのダンスは酷かった。
　緊張してしまって体をがちがちにするアレンが可愛くてヒューイは声をだして笑いそうになった。

　アレンとタイになったばかりの頃、ヒューイはアレンが気に入らなかった。
　年下のくせに反抗的なところが嫌だったし、シュリがアレンを嫌がっていたせいもあった。
　そのせいでヒューイはアレンから距離をとろうとした。

　『近づくな』なんて俺は何様だ。

　その時アレンに対してとった己の軽率な行動を思い出し、ヒューイは自分の唇を噛んだ。
　アレンの友達からヴァンプの特性を聞かなければ、ヒューイはアレンにずっと冷たいままだったろう。
　アレンはそれでも文句ひとつ言わなかったに違いない。
　そんなところをいじらしいとヒューイは思いながら、アレンのつむじを見つめた。

　ヒューイの視線に気付いたのか。
　アレンが上をむき、微笑む。

　綺麗だ。
　
　月明かりに照らされ、瞳を輝かせるアレンを見て、ヒューイは素直にそう思った。
　その瞬間、アレンがヒューイの足を踏んだ。
　おろおろするアレンが可愛くて、ヒューイはそんなアレンを抱き寄せ、口づけた。

　弟がいたら、こんな感じなのだろうか。
　大切にしてやらないと。

　そんな風に思いながら、ヒューイはもう一度、そっとアレンに口づけた。