vamps

まめ太郎

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 カレッジに着くと、いつもと雰囲気が全く違った。
 行き交う学生は皆着飾り、正門から続く並木道の木々にはクリスマスみたいにデコレーションが施されている。
 室内に入ると廊下の電気は消され、代わりにランタンが吊るされていた。

「なんか、すごいね」
 俺はきょろきょろと辺りを見回しながら呟いた。
「確かに。こんな感じなんだな」
 その感想にヒューイも本当にパーティーが初めてなのだと分かり嬉しくなる。

 駆け足の音が聞こえ、正面をむくとドレス姿のシュリがこちらにむかって走って来るのが見えた。
 シュリはその勢いのまま、ヒューイの胸に飛び込んだ。
 ヒューイは咄嗟に俺とつないでいた手を解くと、シュリの体を受け止める。

「一体どうしたんだ? 」
 ヒューイの問いかけに、シュリが顔を上げた。
 その頬や目元は涙に濡れている。

「ケイが飛行機が雪で飛ばないから、今夜は来れないって」
 シュリがぐすっと鼻をすする。

「私、初めて出席したパーティーから一度だってエスコートしてくれる相手がいなかったことなんてないわ。ねえ、ヒューイお願いよ。今夜は私と一緒にいてちょうだい」
 シュリが瞬きをすると宝石のように煌めく涙が一粒、新雪のような肌を滑り落ちた。
 シュリは緑のドレスからむき出しの華奢な肩を震わせている。
 その姿は思わず抱きしめたくなるような、庇護欲をそそるものだった。

「そんなこと言われたって」
 ヒューイが困惑した表情で、俺と目を合わせた。
 俺は無理やり口角を上げると、ヒューイにむかって頷いた。
 ヒューイが顔をくしゃりと歪める。

「悪いな」
 ヒューイの謝罪になんと返したらいいか分からなくて、俺は黙っていた。
 ヒューイがシュリにむかって腕を差し出す。
 シュリは笑顔になると当たり前のようにその腕に自分の腕を絡めた。
 シュリとヒューイが並んで立っていると、一枚の絵のようにしっくりときた。
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